第六十三話:修羅場! 魔王の嫁降臨と、姉妹の「スンッ」とした再教育
ルシフェル様の城で、うっとりとワインを傾けていたアイリス様とリナ様。 その甘いムードを、城門を物理的に消し飛ばす衝撃音が切り裂きました。
「……ちょっと、ルッちゃん? また勝手に『お妃様ごっこ』して遊んでるわけ?」
現れたのは、ルシフェル様以上の威圧感を放つ、超ド級の迫力を持った女性。 【魔王妃・ベラドンナ】。 数値は測定不能ですが、間違いなくルシフェル様を尻に敷いています。
「ひぇっ!? よ、嫁……!? い、いや、これはその……親睦を深めていたというか……」
「黙りなさい。夕飯の買い出しに行けって言ったでしょ!!」
ドゴォォォォォン!!!
ベラドンナ様の強烈な一撃がルシフェル様の顔面に直撃。 「絶美魔王」の鼻柱がグシャリと折れ、彼は城の壁を突き抜けて荒野まで吹っ飛んでいきました。
(……おぉ、なんと凄まじい『家庭内暴力(物理)』……!)
そのあまりにも無惨な光景を目にした瞬間。 姉妹を包んでいた薔薇色のフィルターが、パリンと音を立てて割れました。
「「…………。」」
「……リナ。私、今、何をしていたのかしら」
「……お姉様。私も分かりませんわ。 どうやら、一時的な精神汚染に遭っていたようですわね」
二人は一瞬で、いつもの冷徹な「スンッ」とした表情に戻りました。 ……いえ、元に戻っただけではありません。 「浮気(?)をしてしまった自分への嫌悪感」が、凄まじい怒りとなって溢れ出しています。
「……ねえ、リナ。あのアゴが外れた自称イケメン、まだ生きてるわよね?」
「ええ、お姉様。数値9000万の魔王ですから、死んではいないはずですわ。 ……徹底的に、再教育(分からせ)が必要だと思いませんか?」
二人は無言で立ち上がると、クレーターの中で伸びているルシフェル様の元へ。
「待ちなさい、ルシフェル様(笑)。 私の純情を弄んだ罪……レベル1億相当の痛みで償ってもらうわ!!」
「タナカさんという至高の伴侶を差し置いて、あんな軟派な男に靡いた自分の汚点を…… 貴方の存在ごと、歴史から抹消して差し上げますわ!!」
ボカッ! ドカッ! ゴキッ! バキィッ!
ベラドンナ様にボコボコにされた後、 正気に戻ってキレ散らかした姉妹によって、ルシフェル様はさらにボコボコにされました。 魔王の泣き叫ぶ声が、修羅の空に虚しく響き渡ります。
(……お、お二人とも、もうその辺で……。 見てください、ルシフェル様の顔、もう原型を留めていませんよ!)
ルシフェル様は「もうイケメンには戻れない顔」になり、 ベラドンナ様に引きずられて、強制的に買い出しに連行されていきました。
「ふぅ……。タナカ、ごめんなさい。 私、やっぱりあなただけよ。あの布地の温もりが、私の本当の居場所だったわ」
アイリス様が、懺悔するように私をぎゅっと抱きしめました。
(分かればいいんです。……でも、次にあんなイケメンが現れたら、 私の『物理的締め付け(警告)』を最大出力にしますからね!)
姉妹は「男の顔面には裏がある」という、 この世界で最も重要な教訓を、拳と共に学んだのでした。
あとがき 観測者 ナルミ
あーっはっはっは!! いやー、マジで最高の中だるみ……じゃなくて、エンターテインメントだったね!
ルシフェルの奥さん、実は私と飲み仲間なんだよね。 「旦那がまた浮気してるっぽいよ」ってリークしたら、秒速で飛んできたわ。
タナカ君、見た? アイリスさんたちのあの怒り。 ルシフェルを殴る時の数値、一時的に「1億2000万」まで届いてたよ。 嫉妬と羞恥心のパワーって、神の権限すら超えちゃうんだねー。
ま、これでしばらくはイケメンに騙されることもないでしょ! さあ、気を取り直して、次の「数値上げ」に行こっか! 次は……そうだね、「愛の重さを物理的に計測する試練の塔」なんてどう?




