第六十二話:陥落!? イケメン最強魔王の超絶技巧(アプローチ)
ナルミ様のナビゲートで辿り着いた、修羅の世界の最深部。 そこにいたのは、これまでのゴツい魔王たちとは一線を画す男でした。
【絶美魔王・ルシフェル】
内部数値は驚異の「9000万」。 しかも、その容姿は神々さえも見惚れるほどの超絶イケメン。 彼がふわりと微笑むだけで、周囲の空間に薔薇の花びら(魔力)が舞い散ります。
「……ようこそ、愛しきレディたち。 そんなに殺気立って、美しい顔が台無しですよ?」
その声は、耳に触れるだけで魂がとろけそうなほど甘美な低音。 アイリス様とリナ様が、目に見えて動揺し始めました。
「な、なによ……。私たちはあなたを倒して経験値にするために……」
アイリス様の剣先が、わずかに震えています。 ルシフェルは音もなく近づくと、アイリス様の剣を指先で優しく下げ、 彼女の顎をクイッと持ち上げました。
「経験値? そんな野蛮なものは、私には似合わない。 それよりも……私の城で、永遠の安らぎを分かち合いませんか?」
「え……あ、あの……」
アイリス様の顔が、かつてないほど真っ赤に染まります。 タナカ(私)以外に向けたことのない、完全に「乙女」の顔です。
さらにルシフェルは、冷静なはずのリナ様の元へ。 彼女の耳元で、甘く囁きました。
「知性の結晶である貴女。 予見の先に、私との『甘い未来』を描いてみたくはありませんか?」
「あ、う……あ、あり得ませんわ。私の計算では……そんな……っ」
リナ様の眼鏡が曇り、膝がガクガクと震えています。 ……ダメです。二人とも、完膚なきまでに「陥落」しています。
(……ちょっと! お二人とも! 目を覚ましてください! 相手は魔王ですよ! 私という『魂の伴侶』がいるじゃないですか!)
私の叫びも、今の二人には届きません。 ルシフェルは二人の腰にそっと手を回し、優雅にエスコートし始めました。
「さあ、行きましょう。 今日から貴女たちは、私の最愛の王妃だ」
「「はい……ルシフェル様……」」
アイリス様とリナ様が、幸せそうな顔をして魔王の城へと消えていきました。 残されたのは、彼女たちの胸元で絶望に打ち震える、一着のブラジャー(私)。
「あはは! タナカ君、これマジ!? あの重すぎる愛を誇ってた姉妹が、一瞬で寝返っちゃったよ!」
観測者ナルミ様が、モニターの向こうで腹を抱えて爆笑しています。
(……笑い事じゃありません! 私の数年にわたる『献身』が、顔面の良さだけで上書きされたというのですか!?)
最強姉妹、まさかの「イケメン魔王にナンパされて終了」。 タナカ史上最大の、そして最も情けない危機が訪れました。
あとがき 絶美魔王・ルシフェル
ふふ……愛に数値は関係ありません。 必要なのは、ほんの少しの雰囲気と、誰もが跪くこの美貌。
彼女たちは今、私の城の特等席で、極上のワインを楽しんでいますよ。 「タナカ」? ああ、あの古臭いインナーのことですか。
あんな布切れ、もう必要ないでしょう。 彼女たちには、私が選んだもっと……透き通るような、 美しいシルクのランジェリーを贈るつもりですから。
さあ、ブラジャー君。 君の役目は終わりました。 明日には、古着屋にでも払い下げてあげましょうか?
(タナカ:……絶対に、絶対に許しませんよ、この顔面詐欺師!!)




