第六話:絶対領域、人となる! 姉妹と秘密の転生体
第一節 存在の変容と新たな形
アイリス・ライト様が騎士団入隊の準備と、リナの魔力覚醒の件で忙しくしていたある夜。俺、田中一郎(絶対領域)のコアに、アイリス様とリナ様の魔力、そして両者の信頼が臨界点を超えて流れ込んできた。
《警告:転生体コアの安定性が限界値に到達。人化プロセスを開始します。》
俺の意識は強烈な光に包まれた。
次に意識が戻った時、俺は柔らかな布地の中ではなく、冷たい石床の上に立っていた。自分の手を見る。それは、紛れもない人間の手だった。
(嘘だろ…人化したのか!?)
俺は、白いローブのような簡素な服を身につけた、年若い青年の姿になっていた。見た目年齢は20代半ばといったところだろうか。しかし、アイリス様の胸元には、俺の本体である絶対領域が、性能を少し落としつつも、しっかりと装着されたままだ。
(本体は残ったまま人化できたのか!これで、リナ様と直接話せる!)
俺は、アイリス様の自室の片隅、魔法陣の光が消えた場所で呆然としていた。
第二節 アイリスの警戒と田中の焦り
翌朝、アイリス様が目覚めてすぐに、自室に侵入者がいることに気づいた。
「誰!?あなた、一体どこから入ったの!」
アイリス様は即座に剣を構え、警戒心MAXの表情で俺を睨みつけた。彼女の瞳には、「怪しい侵入者」への明確な敵意が宿っている。
(やばい!アイリス様に嫌われたくない!ブラジャーの意識が人化なんて、絶対にバレてはいけない!)
俺は慌てて口を開いた。
「わ、私は旅の者です!昨夜、突然この部屋の隅の魔法陣に吸い込まれ…その、記憶が曖昧で…」
アイリス様は俺の言葉を信用していない。「旅の者?騎士侯爵家の結界を破って侵入しただと?怪しすぎるわ!」
アイリス様が俺に近づき、剣先を突きつける。俺は恐怖を感じた。俺の本体は彼女の胸元にあるのに、アイリス様に警戒され、嫌悪されている。
(アイリス様がブラジャーの意識が人化したと知ったら、どれほど気持ち悪がられるか…!絶対にバレてはいけない!)
俺はなんとかその場をやり過ごし、一刻も早くリナに会う必要があった。
第三節 リナの確信と秘密の再確認
その時、妹のリナが朝の挨拶のため、アイリス様の部屋に入ってきた。
「お姉様、どうしたの?って、誰!?」
リナは驚きつつも、俺をじっと見た。そして、アイリス様が剣を下ろさないまま警戒しているのを見て、事態を把握しようとした。
アイリス様は警戒を解かない。「リナ、離れていなさい。不審者よ!」
その言葉に、俺は意を決してリナに語りかけた。
「リナ様、私です!井戸の時、あなたを助けた田中一郎ですよ!」
俺の声は、以前リナに聞こえた、あの「男の声」と全く同じだった。
リナの顔が一瞬で驚愕から確信へと変わった。彼女はアイリス様には聞こえないほどの小さな声で呟いた。
「え、た、田中さん…!やっぱり…絶対領域が人になったんだ!」
リナはすぐに状況を理解し、アイリス様と俺の間に入り込んだ。
「お姉様!ちょっと待って!この人、なんだか変な人だけど、もしかしたらお姉様の魔導装備に関係している、魔導師さんかもしれないよ!だって、この人、変な服を着ているけど、すごく優しそうな目をしているもの!」
リナは、アイリス様への溺愛と、秘密の守護者を守りたい一心で、必死にアイリス様を説得した。
第四節 秘密の同居とブラジャーの行方
リナの必死の擁護と、「魔導装備に関係する」という言葉に、アイリス様は少しだけ警戒を緩めた。
「魔導師…?私の絶対領域に関係が?…でも、こんな怪しい侵入者は許せないわ」
俺は、リナの言葉に乗じた。「私は、あなたの魔導装備の調整のために、この魔法陣を通じて派遣された者かもしれません…その、名前はタナカと申します」
アイリス様は依然として疑いの目を向けていたが、妹の懇願と、自分自身の超高性能装備に関わる話であることから、とりあえず俺を軟禁という形で侯爵家で受け入れることにした。
「分かったわ、タナカ。私が納得できる説明をするまで、監視下で侯爵家に滞在しなさい。もし一歩でも怪しい行動をとったら、騎士団に突き出すわ!」
アイリス様が部屋を出た後、リナはそっと俺に近づき、満面の笑みで言った。
「田中さん、人化おめでとう!今日から一緒に特訓できるね!」
俺は安堵した。(これで、ご主人様にバレずに、リナ様をサポートできる!)
そして、アイリス様の胸元の絶対領域の本体は、人化によって魔力増幅機能が僅かに低下したものの、相変わらずアイリス様の最強の防御装備として、その役目を担い続けるのだった。
皆様、物語をお読みいただきありがとうございます。騎士団に入隊したばかりのアイリス・ライトです。
前回の任務で、私の潜在能力が解放され、最強の魔導装備である絶対領域の凄さを改めて実感しました。私自身、これから騎士として本格的に活動していくことに、胸が高鳴っています。
ですが、今回、私の部屋に突然、タナカと名乗る非常に怪しい男が現れました。彼は自分のことを「魔導装備の調整者かもしれない」などと言っていますが、信用できません。侯爵家の結界を破って侵入するなど、不審すぎます。
妹のリナが、なぜか彼を擁護し、「お姉様の装備に関係している」と強く主張するので、仕方なく監視下に置くことにしましたが、正直言って油断できません。私の大切な絶対領域、そしてリナに何かあったら、絶対に許しません。
それに、彼の出現と同時に、絶対領域の防御力がほんのわずかですが落ちたような気がするんです。気のせいかもしれませんが、とにかくこのタナカという男、私の騎士としての人生をかき乱す、厄介な存在になりそうです。
皆様、私の活躍と、この怪しいタナカ、そして秘密の才能を開花させた妹リナのことも、どうか見守っていてください。特にタナカには警戒が必要です!




