第五十二話:神の引導! レベル9999が「普通」の修羅界へ
アイリス様とリナ様の圧倒的な魔力によって、聖王国の空間がパズルのように崩れ始めていた、その時。
空の亀裂から、姉妹の魔力を完全に無効化するほどの、「本物の神気」が降り注ぎました。
「……やかましいですね、あなたたちは」
現れたのは、光の羽を纏った本物の女神。 彼女は溜息をつきながら、暴走する姉妹を冷ややかな瞳で見下ろしました。
「アイリス、リナ。そしてブラジャー……いえ、タナカ。 あなたたちの力はこの世界には過ぎたもの。 これ以上ここで暴れるなら、世界そのものがゴミのように消えてしまいます」
アイリス様が剣を向けます。「そんなの知ったことじゃないわ! 私はタナカを……」
「そんなに強い力が好きなら、ふさわしい場所へ送ってあげましょう」
女神がパチン、と指を鳴らしました。
「そこは『修羅の異世界』。 レベル9999がようやく一人前。 死ぬたびに転生し、強さを無限に積み上げなければ生き残れない狂った世界。 そこなら、あなたたちも存分に『最強』を目指せるはずですよ」
「ちょっ、待ちなさ……!」
リナ様の制止も間に合わず、私と姉妹は眩い光に呑み込まれました。
……。 ……。
次に意識が覚醒した時。 私の解析能力は、かつてない異常値を叩き出しました。
目の前を横切ったただの野ウサギ。 そのステータスが、信じられない数値を表示しています。
【種族:ホーンラビット(修羅個体)】 【レベル:9999】 【戦闘力:アイリス様(前世)の約10倍】
(……正気ですか? 雑魚モンスターが、前世のアイリス様より強いなんて!)
さらに、地面に転がっているアイリス様とリナ様を見ると、 彼女たちの頭上には驚愕の数字が浮かんでいました。
【アイリス:レベル1】
【リナ:レベル1】
女神の転生魔法によって、彼女たちの力は一度リセットされ、 この世界の「底辺」からスタートさせられたようです。
「……お姉様、起きて。 ここ、空気が重すぎて……呼吸するだけで筋肉が破壊されて、再生していくわ」
リナ様が顔をしかめます。 どうやらこの世界は、「死と再生」を繰り返すことで、 細胞レベルから無限に強くなるシステムのようです。
アイリス様がむくりと起き上がり、野ウサギを睨みつけました。
「ふん、面白いじゃない。 レベル9999が普通? なら、私はレベル100万になって、ここでもタナカを一番に着用してみせるわ!」
(アイリス様、まずはそのウサギから逃げないと、一瞬で肉体が消し飛びますよ!)
最強姉妹と、再び「最弱(?)の装備」に逆戻りしたタナカ。 レベル9999が最低ラインという、狂気の世界でのサバイバルが始まりました。
あとがき
世界の管理者 女神ルミナ
はぁ……ようやく片付きました。管理者のルミナです。
あの姉妹、放置しておくと私の管理している低レベルサーバー(聖王国)を物理的に破壊しそうだったものですから、強制的にハイエンド向けの「修羅サーバー」へ移籍していただきました。
あそこなら、どれだけ暴れても大丈夫です。 モンスター一匹一匹が、前の世界の魔王より強いですからね。
え? タナカさんはどうなったのかって?
安心してください。 彼は私の特別なお気に入りですから、「レベル1の状態でも、レベル9999の衝撃を100%吸収する」という、とんでもないデバッグ機能を付与しておきました。
さあ、アイリス、リナ。 死ぬ気で(というか何度も死ぬでしょうけど)レベルを上げて、 そのブラジャー……タナカさんにふさわしい「神」にでもなってみなさい。
あ、ちなみにそのウサギ、足蹴り一発で大陸が割れるので気をつけてくださいね?




