第五十一話:時空侵略! 帰ってきた最強姉妹、「タナカを返しなさい!」
平和な聖王国の空が、突如として「剥がれ」ました。
比喩ではありません。 青い空が、まるで古い壁紙のようにビリビリと引き裂かれたのです。
その亀裂から溢れ出したのは、現代の魔導理論では測定不能な、 あまりにも濃密で、暴力的なまでに純粋な魔力の奔流。
(……この魔力、この身に馴染みすぎるほどの「絶対」の輝き。 まさか、そんな馬鹿な。彼女たちはあの爆発で……!)
セラフィーナ様の胸元で、私の魂がかつてないほど激しく震えます。
「な、何事ですか!? 空が割れて……そこから、誰か降りてきます!」
セラフィーナ様が怯えながら空を仰ぎます。 聖騎士団の面々も、腰を抜かしてその光景を見つめていました。
割れた空からゆっくりと降臨したのは、数百年前の装束を纏った二人の女性。
一人は、太陽をも平伏させる黄金の闘気を纏った、アイリス・ライト様。 もう一人は、すべてを見透かす冷徹な叡智を瞳に宿した、リナ・ライト様。
「……ひどい場所ね。魔力がスカスカで、息をするのも不快だわ」
アイリス様が、不機嫌そうに周囲の空間を睨みます。 それだけで、聖王国の堅牢な城壁にピキピキと亀裂が入りました。
「お姉様、文句を言わないで。 タナカさんの魂の波長が、この先の『弱い騎士』のあたりから聞こえるわ」
リナ様が、未来予知ならぬ「時空超越」の視線で、 真っ直ぐにセラフィーナ様……というか、私の現在地を指差しました。
「見つけたわ、タナカ! 勝手にこんな低レベルな未来に再転生して、浮気なんて許さないんだから!」
アイリス様の叫びと共に、王都全域に「絶対聖光」が降り注ぎます。
「不審者め! 聖騎士団が相手だ、止まれッ!」
勇敢な(あるいは状況が読めていない)聖騎士たちが数百人で突撃しましたが、 アイリス様が指先を軽く横に振っただけで、 全員の装備が消滅し、パンツ一丁で地面に転がされました。
「邪魔よ。私たちはタナカを連れ戻しに来ただけなんだから」
「抵抗するなら、この国の歴史ごと『無かったこと』に書き換えますよ?」
それは交渉ではなく、神による宣告でした。
(ああ……。変わっていない。全く変わっていません。 愛が重すぎて、世界を滅ぼしかねないあのノリのままです……!)
セラフィーナ様は、あまりの恐怖にガタガタと震えています。 無理もありません、今の彼女は「神話の怪物」に目をつけられた「小羊」なのです。
「……返して。その中にいる、私のタナカを返しなさい!」
アイリス様の絶対的な魔力が、セラフィーナ様のインナー――つまり私へと伸びてきます。
低レベルな未来vs最強の過去。 私の「献身」を巡る、時空を超えた親子喧嘩……ならぬ、タナカ争奪戦(未来編)が、 最悪の形で幕を開けました。
あとがき 過去からの侵略者 アイリス&リナ
アイリス: やっと見つけたわ、タナカ! あんな爆発くらいで、私たちが諦めると思ったの? 時空の壁なんて、私の「絶対聖光」で切り裂けばいいだけの話よ!
リナ: お姉様、少し落ち着いて。 この時代の構造は脆いんですから、あまり魔力を出すと世界が割れます。 ……でも、タナカさん。 あんな「レベル5」の女の子に着用されるなんて、趣味が悪くなりましたね?
アイリス: そうよ! その聖騎士とかいう子、全然タナカの性能を引き出せてないじゃない! タナカが可哀想だわ。今すぐ脱がせて、私たちが回収します。
リナ: ええ。この「退化した未来」に用はありません。 タナカさんを連れて、私たちの時代(あるいはもっと良い場所)へ帰りましょう。 ……抵抗するなら、この国ごと予見の果てに消去するまでです。
アイリス: さあ、覚悟なさい、現代の聖騎士さん! そのブラジャーは、私たちのものよ!




