第五十話:最強すぎた代償! 封印された「神話」の真実
目の前で、セラフィーナ様が必死に「聖光」を練り上げています。
ですが、やはり出力が足りない。
なぜ、この数百年で人類はここまで弱体化してしまったのか。
端的に言いましょう。
アイリス様たちが、強すぎたのです。
回想すれば、あの時代の末期は常軌を逸していました。
私の献身によって、彼女たちの能力は指数関数的に跳ね上がりました。
一振りの剣が大陸の形状を変え、一言の呪文が天候を永続的に支配する。
それはもはや「騎士の技」ではなく、「神の権能」でした。
あの「無人島消失事件」が、決定打となったのです。
世界中の指導者たちは、姉妹の喧嘩を目の当たりにして、恐怖に震え上がりました。
「このままでは、彼女たちがクシャミをしただけで国が滅ぶ」
「人間がこれほどの力を持ち続けるのは、世界の論理に反している」
そう判断した当時の賢者や王族たちは、驚くべき挙動に出ました。
彼らは、アイリス様たちが残した高次元の術式や、私の調整理論を、 「禁忌」として歴史から抹消し始めたのです。
あまりに強すぎる力は、それを扱える天才がいなくなった後、 残された凡人たちにとっては、ただの「制御不能な爆弾」でしかありませんでした。
結果として、世界は「安全で、誰もが扱える、ほどほどに弱い力」を選びました。
教育は簡略化され、 魔力回路の限界突破は「自殺行為」と教えられるようになり、 高出力の術式は「御伽話」へと格下げされました。
こうして、わずか数百年の間に、 人類は「全力の出し方」そのものを忘れてしまったのです。
今の聖騎士たちが使っているのは、 前世で言えば、「子供用の教育玩具」のような術式です。
「見てください、タナカ……じゃなくてインナーさん! 今日は聖光の出力が、教科書の基準より10%も高いわ!」
セラフィーナ様が、小さな火花のような聖光を見て喜んでいます。
(……悲しくなってきますね。アイリス様なら、溜息をついただけで今の100倍は光りますよ)
人々は、自分たちが「力を持ちすぎたがゆえに、自ら弱くなる道を選んだ」ことさえ、 もう記憶の彼方に追いやっています。
ですが、私はここにいます。
「ほどほどに弱い平和」なんて、私の献身の辞書にはありません。
セラフィーナ様。 貴女には、人類が自分から捨て去った「最強という名の絶景」を、 もう一度見せて差し上げましょう。
私が少し、貴女の魔力リミッターを外すだけで、 この「平和ボケした世界」は、再び神話の輝きを取り戻すことになるのですから。
あとがき
聖騎士 セラフィーナ・アークライト
今日は教会の図書館で、古の歴史書をめくっておりました。
数百年ほど前には、今の私たちには想像もできないほど、 強大な力を持った「英雄」たちが実在したという記述があったのです。
でも、司祭様は笑っておっしゃいました。 「それは、平和を願う人々が作り上げた誇張された物語だよ」と。
今の魔導理論では、一人が国を滅ぼすほどの魔力を持つなんて、 論理的にあり得ないことなのだそうです。
……でも、不思議ですね。
司祭様の言葉を聞きながら、私の胸元にあるインナーが、 まるで**「そんなことはない。お前たちの無知が滑稽なだけだ」**と、 鼻で笑っているような……いえ、不敵に鼓動したような気がしました。
もし、あの英雄たちが本当にいたとしたら。 そして、その力が今の私の中に眠っているとしたら。
私は、その真実を確かめてみたい。
この不思議なインナーと共に歩む日々が、 私を歴史の裏側に隠された「真の力」へと導いてくれる……。
そんな予感がして、胸の高鳴りが止まりません!
(……あ、また少しインナーが温かくなった。まるで、応援してくれているみたい!)




