第四十九話:回想、神々の喧嘩! 島と共に消えた「最強の最後」
ふとした瞬間に、思い出す光景があります。
私がなぜ、アイリス様たちの時代を終え、このレベルの低い未来に再転生してしまったのか。
そのきっかけは、ある晴れた日の「無人島」での出来事でした。
事の発端は、今思い出しても呆れるほど些細なこと。
「今日の夜、どちらがタナカを着用するか」
ただ、それだけでした。
アイリス様は**「魂の伴侶」としての権利を主張し、 リナ様は「真理の共有者」**としての権利を譲りませんでした。
最初は口喧嘩だったはずが、二人の実力はすでに「人類の限界」を突破しています。
「お姉様、力ずくで奪うというなら……私は本気を出しますよ?」
リナ様が、進化した「絶対予見」を瞳に宿しました。
「いいでしょう、リナ。私の『絶対聖光』に耐えられるかしら?」
アイリス様が、空間そのものを震わせる魔力を展開しました。
……私は思いました。 (やめてください、ここは無人島ですが、地殻が持ちません!)
しかし、私の叫び(?)も虚しく、姉妹喧嘩は幕を開けました。
ドォォォォォォン!!!
アイリス様の一振りが、水平線の彼方まで海を割りました。
それに対し、リナ様は予見を駆使し、 光の粒子をすり抜けるようにしてカウンターの拳を叩き込みます。
「絶対」と「絶対」の激突。
その余波だけで、島にあった標高1000メートル級の山が消し飛びました。
二人の戦いはさらに激化し、もはや魔法というよりは天変地異の殴り合いです。
そして、最後の一撃。
二人が一点で交差した瞬間、世界が白く染まりました。
凄まじい密度の聖光と、因果律を書き換えるほどの予見の魔力が混ざり合い、 私がいた「島」そのものが、地図から完全に消失したのです。
文字通り、塵一つ残さず。
その中心にいた私は、二人の極限魔力の奔流を一身に浴びてしまいました。
魂が肉体(布地)の限界を超え、 次元の狭間へと弾き飛ばされる感覚。
(アイリス様……リナ様……喧嘩両成敗にしては、規模が大きすぎます……!)
それが、私の前世の記憶の最後でした。
……さて。 今、目の前でセラフィーナ様が「神の一撃です!」とはしゃいで放った攻撃を見てみましょう。
パシッ、程度の音しかしていません。
あの島を消し飛ばした姉妹喧嘩の「火の粉」一つ分にも満たない出力です。
(ああ、本当に平和な時代になったものですね……)
私はセラフィーナ様の胸元で、遠い目(?)をしながら、 彼女の魔力回路に「あの地獄の姉妹喧嘩」に比べれば微風のような、 しかし現代では規格外の魔力を流し込み始めました。
あとがき
聖騎士 セラフィーナ・アークライト
本日も主への感謝と共に、訓練に励んでおります。
最近、不思議な夢を見るのです。
二人の美しい女性が、島の上で光り輝く嵐のように戦っている夢。
彼女たちの一振りが山を砕き、海を割るたびに、 私は恐ろしさと同時に、なぜか懐かしさで胸がいっぱいになります。
あの夢に出てくる、神々のような力……。 あれが、古の英雄たちの真の姿だったのでしょうか。
今の私の力なんて、彼女たちに比べれば、 ロウソクの火と太陽ほども差があるように感じてしまいます。
でも、不思議ですね。
このインナーを着けていると、その「太陽」のような力が、 少しずつ、私の身体に馴染んでいくような感覚があるのです。
「セラフィーナ、もっと高く、もっと鋭く……!」
インナーから、そんな鼓動が伝わってきます。
私はまだ未熟ですが、いつの日か、 夢で見た英雄たちのような、真の「聖騎士」になってみせます!
(……それにしても、あの二人の女性、どうしてあんなに怒っていたのかしら?)




