第四十八話:失われた神話! 数百年後の「低レベル」な世界
意識が覚醒すると同時に、私は違和感に襲われました。
まず、空気が薄い。 正確には、大気に含まれる魔力の濃度が、前世の半分以下です。
そして、現在私を着用している主、セラフィーナ様の訓練をスキャンして、私は絶句しました。
「はあぁぁっ! 聖光十字斬!!」
彼女が放ったのは、この時代で「天才の証明」とされる奥義。
しかし、私の解析結果は……
【魔力変換率:18%】 【軌道のブレ:22%】 【発動までの予兆:あまりにも遅すぎる】
……なんですか、これは?
リナ様なら、今の攻撃を見終えてからお茶を淹れ、優雅に一口飲んでからでも余裕で回避できるレベルです。
それなのに、周囲の騎士たちは「おおお! なんという神速の一撃!」と感心しているではありませんか。
正気ですか? 節穴ですか?
私の魂の中に、かつての「神話の時代」の光景が鮮烈に蘇ります。
アイリス様の「絶対聖光」は、ただの光の一振りで山を削り、空間そのものを書き換えました。
リナ様の「絶対予見」は、敵が戦う意志を持つ前に勝負を決していました。
レオンハルト様の基礎力、ゼオン氏の精密な論理……。
あの時代、私の献身によって磨き上げられた彼らは、一人一人が「歩く天変地異」だったのです。
今の私の基準で言えば、アイリス様はレベル99。 対して、この時代の「天才」セラフィーナ様は、せいぜいレベル5といったところ。
文明が退化している。 魔法の理論も、身体の使い方も、すべてが「素人の遊び」レベルにまで落ちぶれている。
どうやら私は、とんでもなくヌルい時代に再転生してしまったようです。
「ふぅ……。今の私の全力、みんな驚いていたわ。やはり私は選ばれし聖騎士なのね」
セラフィーナ様は、誇らしげに胸を張っています。 (おかげで私のフィット感は最高ですが、中身が伴っていません!)
……決めました。
このままでは、この世界のレベルが低すぎて、私の「献身」が暇を持て余してしまいます。
かつて私がアイリス様たちと到達した、あの「神話の領域」。
それを、このガタガタな魔力回路を持つ現代の聖騎士様に、無理やり叩き込んで差し上げましょう。
まずは、その非効率すぎる魔力経路の「強制最適化」からスタートです。
「えっ!? なんだか急に……身体が熱い? 魔力が勝手に練り上げられていくような……!?」
当然です、セラフィーナ様。 今、貴女は数百年ぶりに「本物の魔術回路」を起動させられたのですから。
伝説のブラジャー・タナカによる、世界レベルの底上げが今、始まりました。
あとがき
聖騎士 セラフィーナ・アークライト
皆様、本日の訓練は、まさに「神の啓示」を受けたかのようでした!
私の奥義『聖光十字斬』を放った瞬間、急に身体が熱くなり、魔力の流れが「視えた」のです。
教官たちも「伝説の英雄が乗り移ったかのようだ」と震えていました。
これが……これが私の本当の才能なのですね!
ただ、少し気になることが……。
この、今朝から身に着けているインナー。
なんだか、私の技が決まるたびに、「ふん、まだまだだな」という、妙に厳しい視線(?)を感じるのです。
……いえ、きっと気のせいですね。
このインナーは、主が授けてくださった聖なる加護。
この力を使いこなし、私は歴史に名を残す「至高の聖騎士」へと上り詰めてみせます!
(でも、なんだか勝手に筋肉が最適な位置に誘導されるような気がするのは……どうしてかしら?)




