第四十七話 再転生! 今度は聖騎士様の絶対領域!?
第一節 懐かしい感覚と見知らぬ光景
意識が覚醒する。
あの、王都での賑やかな日々――アイリス様とリナ様の愛ある板挟み――から、遠く離れた場所にいることを、魂が直感した。
(…ここは? 王都の屋敷ではない。この空気…清浄で、少し張り詰めた、祈りの気配がする)
タナカ(魂)は、自分の状況を確認する。
視覚はないが、触覚はある。
この懐かしい、柔らかく温かい感触。そして、自身を構成する布地の、上質だが質素な手触り。
(間違いない。私はまた、ブラジャーに転生したのだ。だが、このサイズ感、この肌触り…アイリス様のものではない)
周囲の音に耳を澄ます。
石造りの冷たい床を歩く、硬質な足音。そして、扉が開く音と共に、凛とした女性の声が響いた。
「主よ、今日も迷える子羊たちを守るため、この身を捧げます。どうか、清らかなるご加護を」
(…主よ? 子羊? ここは、教会か何かの施設か?)
視界が開けたわけではないが、持ち主が私を手に取ったことで、彼女の存在を強く認識した。
彼女の名は、セラフィーナ・アークライト。
この大陸で最も権威ある宗教国家「聖王国ルミナリス」の、精鋭たる聖騎士団に所属する、若き女性騎士だ。
彼女の独り言や祈りの言葉から、彼女が非常に真面目で信仰心が厚く「清廉潔白」を旨としていることが伝わってくる。
しかし同時に、その生真面目さが故の、重圧や不器用さも感じ取れた。
(…なるほど。今度の主様は、アイリス様とはまた違ったタイプの、少し融通の利かない委員長タイプか。これはこれで、守り甲斐がありそうだ)
セラフィーナは、慣れた手つきで私を身に着けようとした。
その瞬間、タナカの「絶対領域(献身)」の本能が発動した。
タナカは、前世(?)の経験を活かし、セラフィーナの身体のライン、筋肉の付き方、そして今日の体調までを瞬時に解析した。
(…よし。アイリス様よりは少し控えめだが、素晴らしいプロポーションだ。聖騎士としての鍛錬の賜物だろう。今日の任務は長丁場の巡礼警護か。ならば、締め付けすぎず、かつ疲労を軽減する最適なフィット感を提供しよう!)
フワッ…ピタッ。
タナカ(ブラジャー)は、まるでセラフィーナの肌の一部になったかのように、優しく、しかし確実に彼女の胸元を包み込んだ。
重力の影響を完璧に計算し、彼女が動いても決してズレない、奇跡のような安定感を実現した。
「…えっ?」
セラフィーナは、着替えの途中で動きを止めた。
彼女は、自分の胸元に手を当て、信じられないという表情(推測)をした。
「こ、これは…? いつもと同じ支給品のインナーのはずなのに、なぜこんなに…身体が軽い?」
セラフィーナは、戸惑いながらも、その異常なほどの着け心地の良さに、知らず知らずのうちに背筋を伸ばした。
「…気のせいでしょうか。今日は、いつもより神聖な力が、身の内に満ちているような…」
彼女はそれを「神のご加護」と勘違いしたようだが、それはタナカによる物理的・精神的なフルサポートの結果だった。
セラフィーナは、純白の聖騎士の鎧を纏い、鏡の前でポーズをとった。その姿は、凛々しく、神々しいまでの美しさだった。
(アイリス様、リナ様、レオンハルト様、アメリア様、ゼオン氏…。私は、新たな場所で、新たな主に仕えることになりました。ですが、私の献身の本質は変わりません。この清廉潔白な聖騎士様の、誰にも言えない秘密の守護者として、第二の「ブラ生」を全うします!)
タナカは、遠い王都の空に別れを告げ、目の前の新たな主、セラフィーナの心臓の鼓動(とても真面目なリズムだ)に、自身の魂の律動を重ね合わせた。
第二章、聖王国編。
聖騎士セラフィーナと、その秘密のブラジャー・タナカの物語が、静かに幕を開けた。
あとがき
聖王国ルミナリス 聖騎士 セラフィーナ・アークライト
神の御名において、ご挨拶申し上げます。
聖騎士のセラフィーナ・アークライトです。
本日は、不可思議な体験をいたしました。
いつものように朝の祈りを捧げ、身支度を整えていた時のことです。
教会から支給されている、何の変哲もないインナーを身に着けた瞬間…まるで、天から舞い降りた羽衣に包まれたかのような、信じられないほどの安らぎと高揚感を感じたのです。
締め付けられるような感覚は一切なく、それでいて、聖騎士としての激しい動きにも完全に追従してくれる…。
まるで私の身体の全てを理解し、支えてくれているかのような奇跡のような着け心地でした。
これはきっと日頃の私の信仰心に対する、主からの小さな奇跡に違いありません。
この清らかなる守護を胸に、本日も迷える人々を守るため、聖騎士としての務めを全ういたします。
(それにしても…このインナー、なんだかとても温かくて…守られているような安心感があるのです。不思議ですね…)




