第十七話:決意の能力解除! ブラジャーの「絶対領域」が沈黙する日
第一節 二人の騎士の助言
シルヴァニア特使ルナ・エリュシオンとの合同訓練後、アイリス・ライトは自身の成長について深く悩んでいた。模擬戦でアメリアに指摘された「装備への依存」という言葉が、ずっと頭から離れない。
ある日の夕方、アメリアがアイリスに助言を与えた。
「アイリス嬢。貴女の魔力は類を見ないが、その『絶対領域』の過剰な自動防御と増幅機能が、貴女自身の身体能力の成長を阻害している。真の騎士になるには、まず、裸一貫で剣を振るう基礎を徹底すべきだ」
そこに、ルナ特使が通りかかった。ルナはタナカの秘密を知っているため、彼を守るための策を講じる。
「アメリア様の言う通りです、アイリス嬢。優秀な魔導装備は、定期的にユニーク能力の『休息』を与え、基本性能のみで運用する期間が必要です。それは、調整役の魔導具師の負担軽減にも繋がります」
(ルナ様…!俺の秘密と負荷を知った上での、絶妙なカンパだ!)タナカは感激した。ルナの提案は、表向きは装備のためだが、実際はアイリスの鍛錬を促し、タナカの正体を騎士団に深く詮索させないための、二重の意味での支援だった。
アイリスは決意を固めた。「わかりました!私は、絶対領域のユニーク能力を一時的に解除し、自分の力だけで戦う期間を設けます!」
第二節 タナカの悲壮な決断と兄の動揺
アイリスは、すぐに雑用係のタナカを呼び出した。
「タナカ。私の命令よ。今日から一週間、私の装備『絶対領域』のユニーク機能(全自動防御と魔力増幅)を、完全に解除しなさい。あなたは、私の基本性能のみを維持する『調整者』としての役割に徹して」
(な…なんということだ!絶対領域のユニーク機能こそが、俺がアイリス様を一瞬で危機から救うための、命綱だというのに…!)
タナカは心の中で絶叫した。ユニーク機能を解除するということは、彼自身がアイリスを守る力を自ら封じること、そして、彼の人化体の魔力供給も不安定になることを意味する。しかし、主の命令は絶対だ。
「…御意に。アイリス様。承知いたしました」タナカは震える手で、自身の核と人化体の魔力を微細に操作し、ユニーク機能を抑制した。
その瞬間、騎士団の備品倉庫で見ていたレオンハルトは、タナカの魔力変化を察知し、顔色を変えた。
(タナカの魔力特性が…急激に弱くなった!人化体が持つ古い魔力核の特性も、か細くなっている。装備の能力解除…奴は、アイリスの命令に従い、自分の存在意義そのものを一時的に封じたのか!)
レオンハルトは、タナカの純粋すぎる忠誠心と、アイリスが自分から危険に飛び込んでいる状況に、激しい葛藤と怒りを覚えた。
第三節 機能解除後の訓練とアイリスの挫折
翌日からのアイリスの訓練は、一変した。絶対領域によるオートバリアも魔力増幅もない。いつもの「最強装備」が、ただの「高性能な下着」に戻ったのだ。
アイリスは基本的な剣術訓練で、今まで経験したことのない重さに戸惑い、体幹のブレを修正できず、何度も転倒した。
「くっ…こんなに、私って弱かったの…?」
タナカは、人化体として傍で訓練を見守りながら、胸が張り裂けそうだった。
(アイリス様…!大丈夫です!あなたの才能は本物だ!魔力に頼らず、その身体で剣を振るう基礎を身につければ、俺の機能が戻った時、あなたは誰も到達できない領域に到達できます!)
レオンハルトは、アイリスの訓練の様子を遠くから見守っていた。妹の必死な姿に心を痛めながらも、彼はタナカの正体を秘密にしたまま、陰から彼女の成長をサポートするしかなかった。
第四節 兄の秘密の協力
その日の夜、レオンハルトは人目を忍んでタナカに近づいた。
「タナカ。お前の能力解除は、アイリスにとって必要な試練だ。だが、この状態でアイリスに何かあったら、取り返しがつかない。…聞け。私が、一週間、騎士団の巡回ルートを調整する。アイリスが一人になる時間と場所を極力なくし、私が陰の絶対領域となる」
タナカは、レオンハルトの兄としての愛情と決意に打たれた。
「レオンハルト様…!感謝いたします!」
「礼は要らん。リナから頼まれている。それと、アイリスが訓練で転んだ時、お前の顔が涙腺崩壊寸前のブラジャーみたいになっていたぞ。感情を出すな」
「申し訳ございません…!」
こうして、アイリスが己の真の強さを探る一週間が始まった。彼女の知らないところで、ブラジャーの意識と過保護な兄、そして外国の魔導騎士という三者による、厳戒態勢の秘密の協力が敷かれるのだった。
読者の皆様、タナカです。…生きた心地がしません。
アイリス様の「能力解除」命令により、私の存在意義である絶対領域が、一週間、強制的に沈黙させられました。
今はただの「高性能な下着」です。アイリス様を危機から守るための、一瞬の魔力増幅や全自動防御が使えない。もし、この一週間にアイリス様に何かあったら、人化体である私には、ただ見守ることしかできません。胸元の本体も、いつもよりひんやりと冷たい気がします。
アイリス様が訓練で転倒するたびに、私は胸が張り裂けそうになります。あの時のレオンハルト様の「涙腺崩壊寸前のブラジャー」という指摘は、まさにその通りでした。
しかし、これはアイリス様が真の騎士になるために必要な試練です。アメリア様とルナ様の助言は、彼女の成長を促す天啓でした。
そして、レオンハルト様…。彼は私の正体を知りながら、アイリス様への愛情から、私の秘密を守り、私の代わりに警護を引き受けてくれました。リナ様からの協力要請もあったようですが、兄としての愛情に、私も感銘を受けています。
この一週間、アイリス様が無事に乗り切り、真の力を手に入れられるよう、私はブラジャーの魂として、最大限の「基本調整」に尽くします。
次なる物語、ユニーク能力が沈黙した一週間で、アイリス様に何が起こるのか…どうか、ご期待ください。私も、心臓(核)を強く持って見守ります。




