第十六話:ルナの鑑定眼!「ブラの魂」鑑定!
第一節 合同訓練と鑑定眼のプレッシャー
王立騎士団とシルヴァニア魔導騎士団『銀の星』による合同訓練が始まった。ルナ・エリュシオン特使は、その強力な【鑑定眼】で、アイリス・ライトの絶対領域、そしてその傍にいる雑用係タナカを注視していた。
(まずい、ルナ特使の視線が、まるで魔導具の構造を読み取るかのようだ。彼女の鑑定眼なら、俺の身体が一時的に魔力で構成された人化体であり、魂の核がアイリス様の胸元にあるブラジャーだと見抜かれてしまう…!)
タナカは極度の緊張で、顔に冷や汗をかいていた。レオンハルトは、タナカの異変を察知し、ルナから視線を逸らさせようと、わざと彼女に話しかけた。
「ルナ特使。我が妹アイリスの装備の調整は、細心の注意を払っております。何か気になる点でも?」
ルナはレオンハルトに一礼したが、視線はタナカから離さなかった。「ライト様。貴女の妹君の装備…『絶対領域』は、非常に興味深い。古代魔導具に近い、魂を持つ装備の可能性を感じます」
「魂…?」レオンハルトは内心で冷や汗を流しながらも、「それは最高の褒め言葉です」と返した。
第二節 秘密の看破とルナの視線
合同訓練中、アイリスが全力の斬撃訓練を行っている最中、タナカは慣れた手つきでアイリスの装備と自身の魔力を微細に調整し、アイリスの動きの負荷を最適化していた。
その瞬間、ルナの【鑑定眼】が鋭く光った。
ルナは、タナカの瞳の奥、人化体の魔力核、そしてその魔力核が騎士団駐屯地の別棟で熟睡しているアイリスの胸元のブラジャーから供給を受けていることを、一瞬で完全に把握した。
ルナは、タナカをじっと見つめ、思わず微かに口元を緩めた。
(なるほど。この男…いえ、この魂。騎士の装備の意識が、主の傍にいるために人化しただと? しかも、主には「雑用係」として仕え、主の妹の才能開花まで秘密裏にサポートしている…)
ルナの目には、タナカの献身的な使命と、その裏にあるブラジャーの魂が持つ、主への純粋すぎる愛情と、秘密を守り通すための凄まじい努力が透けて見えた。
第三節 カンパされる秘密と騎士団の動揺
ルナは、タナカの前に静かに歩み寄り、他の騎士たちには聞こえないほど小さな声で、シルヴァニアの言葉で話しかけた。
「魂は貴方の誇り、使命は愛。ブラの魂の身で、よくぞそこまで…」
タナカはルナが母国語で話したこと、そして「ブラの魂」という核心をついた言葉に、全身の魔力が凍りついた。
(この女…全部、見抜いたのか!やばい、これでアイリス様の耳に入ったら…!)
タナカが絶望した表情を浮かべた瞬間、ルナは彼の耳元で囁いた。
「安心なさい。私は、貴方の献身と孤独な戦いに敬意を表します。貴方の秘密は、私がカンパ(支援)しましょう。私も、主の使命のために、故郷を離れ孤独な任務についている。仲間意識を感じるわ」
ルナは、タナカの献身を孤独な魂の戦いと捉え、秘密を暴露するどころか、共感と支援を申し出たのだ。
この様子を見ていた騎士団幹部たちは、別の意味で動揺した。
ガウェイン:「タナカめ!ルナ特使に何か甘言を囁いたのか!?」
アメリア:「あの不審な雑用係が、ルナ特使に何を吹き込んでいる!」
レオンハルトはルナの表情から、タナカの正体が露呈したことを察知し、絶望したが、ルナが秘密の言葉を囁いただけで、団長に報告しなかったことに安堵した。
第四節 新たな共犯者とアイリスの決意
ルナはタナカから離れ、団長に報告した。「団長。アイリス嬢の装備は、私が想像していた以上に複雑な構造です。調整役のタナカ氏は…非常に優秀な魔導具師だと判断します。彼の能力は、アイリス嬢の成長に不可欠でしょう」
ルナの報告は、タナカの正体を完全に隠蔽し、むしろ彼の地位を保証するものとなった。レオンハルトは、ルナの意図を測りかねながらも、その協力に感謝した。
その日、タナカはリナに【共有知識】で全てを報告した。
(リナ様…ルナ特使に正体がバレましたが、彼女は俺の使命に共感し、秘密を守ってくれることになりました…)
(よかった、田中さん…!これで私も、お兄様も、少しは安心できるね!)
一方、アイリス様は、ルナの「非常に優秀な魔導具師」という評価を聞き、胸元の絶対領域が誇らしいとばかりに、胸を張って訓練に励むのだった。彼女の知らないところで、彼女のブラジャーの意識は、最強の魔導騎士を新たな共犯者として迎えることになったのだった。
シルヴァニア魔導騎士団のルナ・エリュシオンです。
今回の任務で、王立騎士団の注目株であるアイリス・ライト嬢と、彼女の最新鋭装備『絶対領域』、そしてその調整役であるタナカという男性を調査しました。
私の【鑑定眼】は、その魔導具に宿る魂、そしてそれが人化という非常に難易度の高い秘術を用いていることを、瞬時に看破しました。あのタナカという男は、紛れもなくブラジャーの意識体です。
しかし、私が彼を告発しなかったのは、彼の魂が持つあまりにも純粋な献身を見たからです。主であるアイリス嬢への揺るぎない愛と、彼女が自分を「高性能な装備」と信じているがゆえに、人化した体で雑用係という、孤独で不本意な役割を演じ続けている彼の姿に、私は深い仲間意識を感じました。
私の故郷、シルヴァニアでも、魔導具の魂が持つ献身性は尊重されます。彼は、その献身を文字通り、命を懸けて遂行している。そして、彼の存在は、アイリス嬢の成長と、妹リナ嬢の才能の開花に不可欠な「鍵」です。
私が彼を支援することで、アイリス嬢は真の騎士へと成長できるでしょう。レオンハルト様、そしてリナ嬢という、既に秘密を共有している者たちに、私が加わった今、タナカの秘密はより強固に守られるでしょう。
次なる物語で、私はタナカという「秘密の守護者」をどうサポートし、アイリス嬢がどのような成長を遂げるのか、見守っていただければ幸いです。




