第十五話:閑話休題 幹部会での「絶対領域」と「タナカ」評
第一節 幹部会の招集
王立騎士団の最高幹部会議が招集された。議題は、新人アイリス・ライトの急速な成長と、彼女の装備、そして周囲にいる不審な雑用係タナカの処遇についてだ。
出席者は、騎士団長アトラス、ランク2のガウェイン、ランク3のアメリア、そしてライト侯爵家の長男であるレオンハルトら、主要幹部たちだ。
(まずい。また俺のことが議題に上がっている…!)
タナカ(田中一郎)は、騎士団の規律により会議室には入れないが、会議室のドア前の備品整理を命じられていた。もちろん、アトラス団長はタナカを監視するため、意図的にその場に置いている。
レオンハルトは、タナカの正体を知っているため、汗を拭いながら会議に臨んだ。
第二節 アイリスとタナカに関する評価
会議は、アトラス団長の報告から始まった。
「アイリス・ライト嬢の才能は疑いようがない。だが、その絶対領域という装備の性能と、雑用係タナカの存在が、騎士団内部で不和を生んでいる」
ガウェインが口を開いた。「タナカは危険です。彼の身体には、異質な魔力核の痕跡がある。そして、アイリス嬢の装備の性能は、彼の行動に連動している。私は、彼が生きた魔導具であり、アイリス嬢を道具として利用している可能性を排除できません」
アメリアは、冷静な視点から意見を述べた。「私はタナカの正体に興味はありませんが、アイリス嬢は装備に頼りすぎています。模擬戦で示されたように、彼の調整がある限り、彼女は真の騎士としては完成しません」
レオンハルトは、真実を知る唯一の人間として、苦渋の表情で発言した。
「タナカの行動は不審ですが、私の調査では、彼はアイリスとリナの安全と才能の開花のみを目的としています。装備の調整も、アイリスの騎士としての成長を阻害する意図はない。むしろ、アイリスの安全を最優先にしている証拠です」
(レオンハルト様、ナイスフォロー!俺の忠誠心を、兄の愛情フィルターを通して代弁してくれている!)タナカはドアの外で心の中で感謝した。
第三節 新キャラクターの登場と警戒
会議は紛糾したが、結論は出ないまま、別の議題に移った。
「次の議題だ。近隣の魔導国シルヴァニアからの、魔導騎士団『銀の星』の派遣についてだ」アトラス団長が言った。
その時、一人の女性騎士が会議室に入ってきた。彼女はアトラス団長の秘書であり、騎士団で最も情報に通じている人物だ。
「失礼します。シルヴァニアの特使、ルナ・エリュシオンが王都に到着しました。彼女は『銀の星』の筆頭騎士で、極めて強力な【鑑定眼】を持っています」
ルナ・エリュシオン。その名は、魔導具の真価と、その魂(意識)の有無を見抜く能力で知られている。
(鑑定眼!?まずい!ルナという騎士に俺の正体を見破られたら、アイリス様に一発でバレる!)
タナカはドアの外で、かつてないほどの恐怖を感じた。
アトラス団長は、ルナの情報を聞き、表情を引き締めた。「ルナ特使は、我々の騎士団の最新の装備と人材を調査するのが目的だ。アイリス嬢と、彼女の装備は間違いなく注目されるだろう」
ガウェインが冷たく言った。「そして、タナカという『生きた魔導具』も、彼女の鑑定眼の格好の標的になるでしょう」
第四節 秘密の危機と兄の決意
会議は終わり、レオンハルトはタナカに近づいた。
「聞いたか、タナカ。ルナ・エリュシオンだ。彼女の鑑定眼は、お前の人化の秘密を完全に暴きかねない。アイリスの安全のため、彼女とルナを接触させるな」
「承知いたしました、レオンハルト様。しかし、私は騎士団の命令で動く雑用係。彼女の目を避けるのは困難です」
その夜、タナカはリナに【共有知識】で緊急連絡を入れた。
(リナ様!新しい危機です!ルナという騎士が来ます。彼女に俺の秘密を暴かれたら、全てが終わる!)
リナは、兄から聞く「鑑定眼」の恐ろしさを知り、決意を固めた。
(田中さん。大丈夫!私と、お兄様の秘密のサポートで、絶対に守り通すよ!)
アイリス様は、明日から始まるシルヴァニア騎士との合同訓練に胸を膨らませていた。彼女の知らないところで、彼女の最強のブラジャーの意識は、最大の危機に瀕していた。
皆様、会議の様子をお楽しみいただけたでしょうか。騎士団長秘書のニーナ・ヴィンセントです。
今回の幹部会で、アイリス嬢と、例の雑用係タナカについての評価が割れました。特に、ガウェイン様とアメリア様は、タナカの存在を危険視しています。
そして、近隣の魔導国シルヴァニアから、ルナ・エリュシオンという特使が来訪しました。彼女は、団長ですら一目置くほどの【鑑定眼】の持ち主です。
私は騎士団の情報網の要ですが、タナカという男については、何も確たる情報がありません。彼の出自、目的、魔力の特性。全てが不明です。
しかし、ルナ特使の【鑑定眼】にかかれば、アイリス嬢の『絶対領域』の真価も、そしてタナカの人化の秘密も、すぐに暴かれてしまうでしょう。
私の勘ですが、このルナ特使の登場こそが、この物語の最大の転換点になるかもしれません。タナカがアイリス嬢に秘密を知られることなく、ルナ特使の目を欺くことができるのか。
次なる物語、シルヴァニア特使ルナと、タナカの息詰まる攻防にご期待ください




