第十三話:兄の潜入! 秘密の守護者の正体
第一節 兄の決意と秘密の場所
リナの単独での盗賊団殲滅後、兄レオンハルトのタナカへの疑念は確信に変わっていた。
(あの短期間で、リナが単独で武力行使できるはずがない。タナカという男が、何らかの秘術でリナの才能を強制的に引き出しているに違いない。リナを守るため、奴の秘密を暴く!)
レオンハルトは騎士団でのタナカの行動を徹底的に監視し、リナの動きも追った。そして、リナが夜な夜な侯爵家の裏庭の、普段使われない魔力訓練場に向かっていることを突き止めた。
その夜、レオンハルトはアイリスにもリナにも気づかれないよう、魔力探知を最小限に抑えながら訓練場へ潜入した。
訓練場には、リナとタナカの姿があった。
第二節 秘密の特訓現場
リナは木剣を構え、タナカの指導を受けていた。アイリスは騎士団の駐屯地で熟睡しており、彼女の胸元の絶対領域の本体は、今、微弱ながらも特訓のサポートを始めている。
「リナ様、重心がブレています。左足の踏み込み、五ミリ奥へ!」タナカが指示を出す。
「うん!」リナは即座に修正し、体から光の魔力が溢れ出す。
タナカは、人型の体から魔力波を放ち、リナの魔力回路を安定させている。それは、まさにアイリスの装備を調整する際に、リナが遠隔で偽装した魔力波と同じ周波数だった。
(やはり、タナカがリナに何かしている!)レオンハルトは物陰から、その異様な光景に怒りを覚えた。
レオンハルトは、タナカとリナの動きを詳細に分析するため、自身のユニークスキル『真理の探知』を発動させた。これは、対象の魔力源と、その魔力の流れ、そして関連する魔導具の情報を読み取る、レオンハルト独自の能力だ。
第三節 兄にだけバレた秘密
『真理の探知』は、タナカとリナの連携の秘密を暴き始めた。
まず、タナカの身体。――『古い魔力核を宿した、人工的な人型』。
次に、リナの魔力。――『外部からの強力な魔力波と、侯爵家から遠く離れた別の魔力源からの調整で、強引に開花された才能』。
そして、その『別の魔力源』の情報を追跡した時、レオンハルトの脳裏に、一つの情報が流れ込んできた。
『アイリス・ライトの胸部に固定された、最高機密の魔導装備:絶対領域。魔力連動率98%。現在、微弱な調整信号をタナカの人型に向けて発信中』
レオンハルトの全身に、衝撃が走った。
(な、なんだと…!?タナカという男は、アイリスの…アイリスのブラジャーの、意識の化身だというのか!?)
タナカの正体が、アイリスの騎士としての生命線であるブラジャーの意識そのものだと知ったレオンハルトは、激しい衝撃と混乱に陥った。リナが「大切」にしている男が、実は妹の「下着」であり、それをアイリスは「高性能装備」だと信じ込んでいるという、あまりにも常識外れの真実に、レオンハルトは言葉を失った。
第四節 秘密の共有と兄の葛藤
レオンハルトは、感情的な怒りを抑え、タナカの真の目的を問い詰めるため、物陰から飛び出した。
「タナカ!貴様の正体はわかったぞ!アイリスの…絶対領域!貴様は、その装備の意識が人化した姿だろう!」
タナカは、レオンハルトが『絶対領域』の言葉を使ったことに驚愕した。「な…なぜそれを!」
リナも慌ててレオンハルトの前に立ちはだかった。「お兄様!何言っているの!?田中さんは私の先生で…!」
レオンハルトはリナに優しく言った。「リナ、下がっていなさい。私は、アイリスの命綱を脅かす存在を、放置できない」
タナカは、レオンハルトの探知能力が、自分とブラジャー本体の連携を捉えたのだと悟った。しかし、彼はアイリスへの忠誠心から、レオンハルトに嘘をつかなかった。
「その通りです。レオンハルト様。私は、アイリス様とリナ様の安全と才能の開花のため、人化しました。私は、ご主人様であるアイリス様には、決してこの秘密を漏らしません。彼女に嫌われたくないからです」
レオンハルトは、タナカの言葉に、私利私欲ではなく、純粋な忠誠心と溺愛を感じ取った。レオンハルトもまた、妹を溺愛する者として、タナカの動機を理解してしまったのだ。
「…貴様は、アイリスの安全のためだけに存在すると?」
「はい。そして、リナ様の才能の開花も、アイリス様への献身の一つです。リナ様が強くなれば、アイリス様の助けになれるからです」
レオンハルトは激しく葛藤した。最強の守護者が人化して妹たちを守っているという事実は、彼にとって最も安心できる情報だった。だが、同時に、この秘密をアイリスに知られれば、彼女の騎士としてのアイデンティティが崩壊し、タナカは嫌悪されるだろう。
レオンハルトは、その場で剣を下ろした。
「…分かった。タナカ。貴様の正体は、私だけの秘密としておこう。だが、もしアイリスやリナに少しでも危害を加えれば、その時は容赦なく切り捨てる。貴様は今日から、私とリナの、二重の監視下に置かれると心得ろ」
こうして、タナカの秘密は、最強の騎士団員であり、過保護な兄であるレオンハルトにも共有されることになったのだった。
読者の皆様、お読みいただき感謝します。レオンハルト・ライトです。
…私は、今、激しい混乱の中にいます。
私の妹リナの驚異的な成長の秘密を暴こうと、あの不審な男タナカを追及した結果、私はとんでもない真実を知ってしまいました。
あの男…タナカは、我が妹アイリスが最高の装備だと信じて疑わない、あのブラジャー型の魔導具の意識そのものが、人化した姿だということを。
私は、自身のユニークスキル『真理の探知』によって、その常軌を逸した真実を明確に把握してしまいました。アイリスは、自分の命綱である騎士団の装備が、毎日自分の近くにいる雑用係のタナカだとは、夢にも思っていないのです。
しかし、タナカは私に隠し事をせず、その行動の全てが、アイリスとリナへの純粋な忠誠と献身に基づいていることを認めました。私と同じ、妹たちを溺愛する感情が、彼を動かしているのだと。
この秘密をアイリスに伝えれば、彼女は混乱し、タナカを嫌悪し、騎士としてのアイデンティティが崩壊するでしょう。そして、この最強の守護者を失うことになる。
私は兄として、妹たちを守るため、タナカの秘密を胸に収めることにしました。
これから、私はリナと共に、タナカの秘密を守りながら、アイリスの騎士としての活躍をサポートしなければなりません。騎士団長やガウェインの目を欺き、妹の恋心(告白事件)にも気を配り、リナの受験もサポートする…。
タナカの正体を知ってしまった今、私の役割は、妹二人と、妹の下着という、三人分の秘密を守るという、最も困難なものになってしまいました。
次なる物語で、私がこの秘密をどう扱い、妹たちをどう守っていくのか、見守っていただければ幸いです。




