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プラごみはホムンクルスの餌ですわ! 最強錬金術師、朱美が青森県の小都市で始める『ファンタジー知識無双』  作者: フーラー
第2章 最強錬金術師はいじめも怖くありません

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2-4 相手を怒鳴って黙らせる展開なんて大嫌いだ

その夜、私は北斗さんの家にお邪魔した。



「そういえば、北斗さんの家に来たことってなかったですわね?」

「うん……。その、母さんはさ。僕が女の子の友達を連れてくると怒るんだ。それが朱美さんでもね」



まあ、それは当然だと思った。

私のような絶世の美少女が彼の周りにいるとなれば、当然母親としては気が気ではないはずだ。



そう考えながら私は家に上がった。




部屋の中は、まるで生活感を感じさせないような美しさがあった。

機能美を重視させるために、あえて『散らかっているように見せている』私の部屋とはまるで対極にある。



「……凄い綺麗な部屋ですわね……」

「母さんがいつも掃除しているからね……」



なるほど、自分が完璧主義だからこそそれを北斗さんにも求めるのか。

そのように考えると、彼のお母さまがどれだけ、北斗さんのために心を割いているのかはよくわかる。


……だが問題になるのは、そもそも家庭というものは『家族が心から安らげる場所』でなければならないということだ。


北斗さんがこのピカピカの家ではなく『この美しい私との会話の時間』を唯一のよりどころとしているのであれば、それは少し悲しくなる。



「ただいま……北斗、帰っていたか」


そう考えていると、くたびれた男性の声が聞こえてきた。



「あれ、珍しいね父さん。おかえり」

「ああ。ご飯は食べたか?」

「ううん、これからだよ」



彼は確か、普段は単身赴任をしている父親だったか。

北斗さんのお父様は、北斗さんによく似た、※凡庸な容姿をしている。

(朱美がそう思っているだけで、彼もまた超美形な相貌です)



「お客さんか、珍しいな……」

「ええ。日野本朱美と申します。はじめまして」

「ああ、君が噂の天才少女か……凄いな、北斗と友達なんだな」

「勿論ですわ? 北斗さんにはいつも良くしていただいてますもの!」



こうやって、私は目下のものである北斗さんを立てることも忘れない。

10歳にして、こういう大人のたしなみが出来るのは、さすが人生2週目である私だからこそだ!



「今日はお母さまにお話があって来たのですわ。……いつ頃お帰りになりますか?」

「え? ……確かあと10分ほどで帰ってくるはずだな」

「であれば、もう少し待たせていただきますわね?」

「分かった。……そうだ、折角だから夕食を食べてきなさい」



そういうと、北斗さんのお父様は料理をはじめた。



……そして10分後。

ドアの鍵がガチャンと開く音が聞こえた。



「おかえり、母さん」

「宿題は終わった、北斗?」



挨拶もなく、いきなりそのことを聞くのか。

普通ならそれに対して怒りを持つのだろうが、慈悲深い私は彼女が『それだけ、息子の教育のことを心配している』と解釈して差し上げた。



「あれ、あなたは……朱美さん?」

「ええ、お久しぶりです、お母さま」



私はそうやって頭を可愛らしく下げた。

彼女とは何度か会ったことがあることを覚えている。


だが、当然というべきか私を歓迎はしていないようだ。




「……ふうん、そういえば最近、天才って評判ね、あなた。……それで、今日はどうしたの?」

「いえ……。お母さまと少しお話をしたくて……」

「お話?」

「ええ。北斗さんの勉強のことについてですけど……」



それを聞くなり、突然お母さまは嫌そうな顔をした。



「なに? 人の家庭のことに口出しをしてほしくないんだけど? それとも自慢でもしにきたの?」



自慢、とは面白いことをいう。

私のような天才が、北斗さんたち愚かで哀れなものに勝つことなど、蝸牛と徒競走で勝利したことを自慢するようなものだ。



「いえ、お母さまの教育方針に口出しはしませんわ?」

「じゃあなに? そもそもあんたが、北斗にちょっかいかけてるから最近、北斗の成績が落ちているんじゃないの? あんたのせいで、うちの子の推薦枠がなくなったらどう責任とるの?」



やはり、私に対する印象は良くないのか。

その理由として、うちの学校から中学への推薦枠を気にしていたことも、彼女の発言で理解出来た。



そんな風に言ってくる母親に、私は尋ねた。



「お母さまは……。北斗さんの成績……というより、点数ばかり気にされてますわね? 北斗さんが一番でないと行けないと思っているのですか?」

「…………」

「息子のありのままを愛することは……難しいのですか?」



そういうと、お母さまはますます嫌そうな表情を見せて、怒鳴るようにまくしたててきた。



「……うっさいな。そうだったらどうするの? 子どもが優秀で会ってほしいっていうのは親としては当然でしょ? それに、息子が将来これで就職に影響を与えたらどうすんの? 落伍したら、あんたが責任取ってくれるっていうの? そんな風になってほしくないから、北斗にはとにかく一番でいてほしいの、分からないの? まあ、分かんないでしょうね。あんたみたいに誰も失ったことがない子はさ!」



それは違う、それはあなたのエゴだ。

兄を失った心痛を北斗さんにぶつけているだけだ。



……だが、私はそんなことを指摘するために来たのではない。


私は天才で慈悲深い『美しき殉教者』だ。……哀れな民衆のため、私はこの身を捧げなくてはならない。……そして、それは彼女も例外であってはならない。




「……分かりましたわ? なら北斗さんが一位になれば、またお母さまは北斗さんを愛してくださるのですわね?」

「え?」

「……ならその願い、叶えて差し上げますわ?」



そういうと私は、北斗さんのお父様が置いていた財布を手に取り、



「あ、何するんだ!?」

「朱美さん、どうしたの!?」



それを持って全速力で外に向けて駆け出した。

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