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妖精が関西弁使ってた件

人里離れ誰も近寄らない森の奥にそれはあった。伝説の泉。わき出る水を飲んだものに大いなる力を与える。飲んだ者は、歴史の中にその力で偉業を残したと言い伝えられている。

 薄暗くじめっとしている森の中にも関わらず泉の周辺だけ淡い光を放ち、神秘的な雰囲気を醸し出している。

 ついにやったんだ。これで俺も英雄の仲間入りだ。


 急いで駆け寄ると、そこには小さな存在が浮かんでいた。手に乗ってしまうほどの身躯、人形ような顔つき、背中に生えた透き通る羽。間違いない、噂に聞く泉を守るという妖精だ。


「お願いです。泉の水を飲ませてください。力が欲しいんです」

「おお、兄ちゃんようきたな。まぁ何もない所やけどゆっくりしていき」


 ん?んんん?聞き間違いだろうか?妖精とは、泉を守る神聖な生き物で、子供のように無邪気でピュアな存在だと聞いている。まさかこてこての方言をしゃべっているなんてことはないだろう。


「どないしたんや?ポカンとして。わかった。泉の凄さに圧倒されとるんやろ?驚きすぎて気絶したらアカンで。ハッハッハ。    おもろないか?」


 間違いない。こてこての方言を使っておられる。しかも勘違いでなければ、大分絡みづらいタイプだ。


「すみません。圧倒されてて言葉がでませんでした」

「そうやろ。兄ちゃん力が欲しんやって?ホントやったらな、そんなホイホイあげたらアカンのやけどな。兄ちゃんは特別やで」


 特別?まさか俺にも英雄達のような不思議な力があって、ここに導かれたというのだろうか?


「どうして俺は特別なんですか?」

「それはな。ここに来る奴があんまりおらんくて、ワシが暇やったからや」


 お前の事情かい。普通こういうのは、実は俺が選ばれた血筋で特別許されましたとかじゃないの?そういう事情は雰囲気崩れるから黙っといて欲しかった。

 とういうか本当にこれは伝説の泉であっているのだろうか?妖精は胡散臭いし、話してる内容に深みというか、重みを感じない。騙されているという方がしっくりくる。


「ほな泉を飲もうか」

「ええ!もう飲むんですか?なんか飲む前の手順とか儀式とかってないですか?」

「そんなんないよ。物語の読みすぎちゃう。手で掬って飲んでしまいよ」


 またそういう風情がないこという。だが、直ぐに飲めるのはこっちにとっても好都合だ。

 いざ飲むとなると、緊張してきた。俺が生まれ変わる時がきたんだ。

 泉へ一歩一歩足を踏みしめながら近づく。さらに地面へと屈み手が届く所まできた。手を伸ばし、手でお椀を作るようにして、水を掬う。肌触りは普通の水と変わらない。だがその輝きがただの水とは違うと告げている。掬った水、一滴すらこぼさない。そんなつもりで一気に水を喉の奥へと追いやった。


 ん!?これは?何も変化がない?


「あの何も起きないんですけど?」

「なに自分1回飲んだら超人的な力得られると思っとったの?そんなわけないやん。特別な力やで。3年は飲み続けけんと」

「3年!?そんな長いんですか?それ普通に修行するのと変わらないじゃないですか」

「当たり前やん。結果ばっかり求めとったらアカン。若いうちは我慢してなんぼや。エエこというたで」


3年 妖精にとっては短くても、俺にとってはあまりにも長い。その間ずっとこの妖精のもとへ通い続けなければいけないかと思うとぞっとする。


「ほな、また明日またきぃや。少し戻って左に曲がったら小屋があるからそれ使ったらええで」


 こうして俺と妖精との奇妙な3年間が始まった。


 


関西弁ってこれであってるんだろうか?

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