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第1話 ヤマダと号を与えられた俺

 フルダイブ形式のオンラインゲーム。VRMMORPGが人気を博して早40年。その裏側では思いもよらぬ日常が進んでいた。


 フルダイブ形式のオンラインゲーム。その本体の形式は今や多種多様な種類が存在していた。家庭で簡単にできるゴーグルから脳の電気信号を操作して、ゲーム内に実際にいる感覚を味わえるもの、専用の施設で大型装置の中に入って長時間楽しめるものなど、多様性が出てきたのだ。


 さて、俺はそのVRMMORPGを楽しむための大型施設の社員として5年目となった。社員といっても、ゲームを楽しむ為にこの施設を利用しているお客様が使用しているカプセルが問題なく稼働しているかどうか確認しているだけだ。


 なぜ、その様な施設が必要となったのか。それはもちろん人間というものは、睡眠、食事、排泄というものが必要不可欠な生き物だからだ。だから、家庭用の接続機では2時間ごとに強制的にログアウトさせられてしまう。ゲームをしながら失禁だなんて恥ずかしすぎるだろう?


 だが、大型施設のカプセルに入ると、その様なことを気にせずにゲームに没頭できるのだ。ゲーム専用の水着のようなモノを着なければならないが、排泄用の管と栄養点滴の管が装着可能なもののため、お客様が望むだけ、24時間365日ゲームを楽しめる仕様だ。

 この施設ができた事により、ゲーム内で生活をする人々が爆発的に増えた。それはそうだろう。現実よりもゲームで生活する方が断然ましというものだ。


 空はうす汚い雲に覆われ、最低限の生活の保証はされているものの、労働階級というものは奴隷のように働かされ、一部の上級階級だけが、甘い蜜をすすれるようなこの世界はなんて……いや、このようなことを口にしようものなら俺は……


 まぁ、あれだ。ゲームの世界の方が、断然いいという話だ。



 この施設で働くまではそう思っていた。



「ヤマダ。今日は28910番だ」


「わかりました」


 ヤマダというのは俺の呼び名だ。というか、仮の名だ。この施設に働くときに、IDではなく号が振られ『ヤマダ』という号が俺を示す呼び名となった。


 俺は、先程言われた28910というカプセルに急いで行く。そこには3人の同僚が既にいる状態だった。


「お! ヤマダ。来たか」

「28910番は今日で366日目だ」

「28910番はマルチでいくそうだ」


 マルチか。今日の午前中は、この作業にかかりきりになりそうだ。


 この施設は24時間365日フル稼働を、謳い文句にしている。そう、365日。お客様が自らログアウトせずに365日を超えると強制的に退去させられる。これは利用契約書に書かれているので、違法ではない。


「停止をするぞ」


 同僚の一人がカプセルの外側につけられている電源コードを持って言う。その電源コードを勢いよく引っこぬいた。すると、今までしていた機械音が『シュゥゥゥ』という音を出しながら止まっていく。


 強制停止だ。


 それも脳に干渉しながら緊急停止をしたとなると、利用しているお客様がどういう状況におちいるかといえば


 【ログアウト】ができない。


 という状況になる。精神と肉体の分離だ。使用者は何もわからずにゲームの世界に居続け、ある時にふと気がつくのだ『ログアウトができない』と。


「臓器はご予約どおりにY様に提供することになる」


 同僚の一人が空中に浮遊している半透明のパネルを見ながら、今回の仕事の内容のチェックをしている。マルチ対応ということなので、内臓、皮膚など利用できるものは上級階級の方々に使用されるのだ。


「頭部は『アマタ』行きだ」

「アマタ? 最近何かとそっちに送っていないか?」

「初期ロットが駄目になってきているらしい」


アマタ(数多)』それは過去の時代にスーパーコンピュータと言われたものの後を引き継いだ演算機器だ。いくら電子機器を使用しようが、所詮人の脳には勝てなかったということだ。人の脳を繋げ演算させる。それが結局のところ一番ヒトにとっては理想的だったようだ。

 しかし、人の脳も年月が経つごとに劣化していく。だから定期的に交換が必要となってくるのだ。


「さて、仕事を始めるぞ」


 同僚の掛け声と共に、各自がパネルを見ながら作業をしていくのだった。



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