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新婚旅行サーシャ編最終話

 皇帝一家との会食を終えて翌日、丁寧にお礼と別れの挨拶をして皇城を後にした。


 人目につかない場所へと移動していつもの様に【傲慢なる者の瞳】を発動、目的地点に誰も居ないことを確認して転移で移動する。


 自分の屋敷の敷地内に転移すると、巡回していた警備兵とバッチリ目が合った。


「御館様、お帰りなさいませ」

「ただいま。変わりないか?」

「はい」


 うちの屋敷に務める使用人や警備兵たちは最初急に現れる俺に慌てたりしていたが、いつの間にやら慣れてくれたようだ。

 いちいち騒がれなくて助かる。


 サーシャからアルスを受け取って屋敷の中に入る。

 すれ違う使用人たちにお菓子を配りながらリビングに入ると、中にはよめーずが勢揃いしていた。


「ただいま」

「あらおかえりなさい。早かったのね」


 正妻であるサーシャは俺の後ろに居るので、よめーずを代表してリンが返事をする。


 こういう返事にも序列があるというのだから驚きだ。未だに慣れることは出来ていない。


「お土産あるよ」


【無限積載】を開いて帝国で色々と買い漁ったお土産をそれぞれに手渡す。

 主に服やお菓子なのだが、俺はそういったセンスに欠けている自覚があるので選んだのはサーシャである。


「私からもあるんですよ」


 サーシャも俺の隣に来てアイテムボックスを開く。


 もしかしなくても……アレだよね?


「サーシャちゃん、これは?」

「これは赤ちゃんが出来やすくなるお薬だそうです」


 リンはサーシャがテーブルに並べた小瓶を手に取り、光に透かして中身を見ている。


「赤ちゃんッスか?」

「ええ。帝国にある勇者の子孫のお店で買いました!」


 これで2人目3人目が出来るとサーシャは胸を張るが、リンは中身に気が付いたようでニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。


「サーシャちゃんは飲んでみたの?」

「いいえ、購入した日は帝城に招かれていましたので、まだ試してないですよ」

「そうなのね……」


 サーシャとリンのやり取りを見ていた勇者娘は中身に気が付いたのか、3人で集まって何やら話し合いが行われている。

 嫌な予感しかしない。


「サーシャちゃん、今夜にでも試してみたら?」

「私は旅行から戻ったばかりですし、他の方に……」

「いいのよ。サーシャちゃんは正妻なんだから、こういうのは一番最初に試してみて早く2人目を作らないと」


 得体の知れない薬を試すんだからむしろ正妻が一番じゃ不味いんじゃないの?

 まぁサーシャはレベルも高いし、何かあっても自分で魔法で治療も出来るから問題無いのかもしれないけど……


「そうですか? ではお言葉に甘えて……」


 つまりそういうことをするわけで……恥ずかしいのかサーシャは少し俯きながらも了承した。


「レオ様、サーシャ様、旅行のお話を聞かせてください」

「そうだね。でもソフィアが喜びそうな面白いことは何も無かったよ?」


 今回の旅行はノーバイオレンスだったからね。

 主に帝国ホテルでまったりした話や大聖堂の話になるので、ソフィアはあまり興味が無いだろう。

 むしろ勇者娘たちのほうが喜びそうだ。


 のんびりと皆でお茶を飲みながら旅行の話を聞かせる。

 次に俺と旅行するのは誰になるのかなどで盛り上がったりもしながら時間は過ぎ、夕食、風呂を済ませてしばらく子供たちを眺めた後サーシャと一緒に寝室へと移動した。


「本当に飲むの?」

「はい、2人目も欲しいですし」

「旅行中に出来ちゃってる気もしなくもないけどね」

「念には念を入れて……です」


 サーシャは小瓶を取り出し、蓋を開けて一気に煽る。


「あまり美味しくないです……」

「だろうね」


 そういうお薬が美味しいとは聞いたことがないし。


「なんだか……体がポカポカしてきました」


 ベッドの縁に腰掛けて旅行の思い出話に花を咲かせていると、だんだんとサーシャの顔が赤くなり、呼吸も荒くなってきた。

 薬が聞いてきたのだろう。


「レオ様、もう……」

「サーシャ……」


 ゆっくりと抱き寄せ、そのままベッドに倒れ込む。

 俺たちの戦いはこれからだ!





 ◇◆




 それからの日々は慌ただしく、あっという間に過ぎていく。まさに光陰矢の如しとはこのことだろう。

 凡そ半年に一度、5日間の有給を取ってよめーずの誰かと旅行に行くサイクルが出来上がり、旅行から戻ると誰かが妊娠したりと忙しない。


 気が付くと子供の数も増え、その度に名付けに頭を悩ませる。

 たまにやる書類仕事なんかよりこちらの方が余程大変である。


 ウルトも次々に産まれてくる子供の面倒をよく見てくれたので、大変に有難かった。

 子供にばかり構っていて俺の相手をしてくれなくなったのは何時からだったかな……?

 少し寂しい。


 変態もいつの間にか結婚しており、会う度に奥さんとの惚気話を聞かされるので余計にめんどくさい存在へと成り下がっている。

 有能なんだけど、会うとめんどくさいので会いたくない。


 ちなみにハーレムを作るとか言っていたのだが、心変わりしたのか奥さん一筋で他の女性に手を出す様子は見えない。

 実際に作るのと妄想の世界で作るのではやはり違うのだろう。


 変態の家庭にも子供が産まれたので、うちの子と一緒にウルトという名前のベビーベッドに寝ている姿を見ていると微笑ましい。

 この子もしばらくすると変態になるのかな……なるのはいいけど、うちの子に悪い影響は与えて欲しくないな。


 しかしこの優秀な変態の息子なのだ、きっと優秀な人材に育ってくれることを切に願っている。





 ◇◆




「こんな感じでワイワイガヤガヤやってるよ。この侯爵領も発展してきて仕事も増えたけど、なんだかんだで悪くない」


 屋敷の裏、ウルトがどこからか持ってきた小さな山のような岩の上で俺は一人で喋っていた。

 周りに人の影は無い。完全に俺一人だ。


「楽しいし、充実してるよ。だけど、ケイトが居てくれたらもっと楽しかったと思うんだ」


 目の前の墓に水とお菓子をお供えして手を合わせる。


「これからも色々あるだろうけど、見守っていて欲しい」


 いつか出会えるその日まで……


 もう一度目を閉じて手を合わせてから屋敷へと戻る。


「御館様! 勝手に消えられては困ります!」

「ちょっとじゃん。細かいことは言いっこなしだって」

「そうはいきません! どちらに行かれていたのですか?」

「ちょっとそこまで」


 窓から見える大岩へと視線をやると、マークも理解してくれたようだ。


「全く……仕方ありませんね。今度行く時には一声かけてくださいね?」

「はいはい」

「はいは一度でお願いします。御子様たちの教育によろしくありません」

「はい!」


 さて、よめーずや子供たち、領民のためにひと働きしますかね……

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