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新婚旅行サーシャ編6

「いらっしゃいませ。こちらの商品に興味がおありですか?」


 サーシャが固まり、俺が若干の現実逃避をしていると、棚と棚の間から店員が現れて声をかけてきた。


 なんでそんな隙間に居たの?


「えっと……これは何なのでしょうか?」


 声をかけられたサーシャはバイ……ディル……棒から目を逸らしながら小瓶に入った液体を指さした。

 どうやら棒は何となくわかるらしい。


「そちらは夫婦仲を良くするお薬となっております」

「え?」

「え?」


 サーシャと声を揃えて疑問の声が漏れたが、少し考えて思い至る。

 なるほど、そういうことね。


「あの、夫婦仲が良くなるとは?」

「子供が出来やすくなったりもしますね」

「買います」


 即決だった。

 俺が言葉を挟む間もないくらい気持ちのいい即決であった。

 気持ちよくなるのは夜かもしれないけど。


 サーシャのことだから子供が出来やすくなる薬と勘違いしてるんだろうなぁ……


「あるだけ下さい」

「あるだけ……ですか?」

「はい。あるだけ全部」

「ありがとうございます!」


 サーシャは購入した小瓶を自分のアイテムボックスに丁寧にしまっていた。


 その後も目に付いたコスプ……服なども購入してからそのお店を後にした。


「いいお土産が買えました。帰ったら皆さんに配っておきますね」

「……はい」


 これは帰ったら搾り取られて干からびる。俺の背筋に冷たいものが流れた。


 大通りへと戻り適当に歩いたり、店を覗いたりしながら時間を潰してから皇帝の待つ城へと向かう。


 その途中で路地に入り、転移を使ってアルスを迎えに行く。

 屋敷でよめーずや使用人たちと軽く会話をしてからアルスを抱いて帝都に戻る。


 警戒していたが、今回はまだ購入したお薬は配らなかったようだ。


 アルスを抱いて帝都へと戻り、路地から出て城へと向かう。

 何も考えずに徒歩で来てしまったが、馬車で来れば良かったかもしれない。

 そういえば迎えがどうとかの話ってなかったよね?


「陛下がお待ちです」


 門番の兵士に声をかけると、すぐに奥へと案内された。


 すれ違う貴族や役人に笑顔で会釈されながら進むと、謁見の間を通り越し、以前お邪魔した皇帝の執務室も超えて皇族のプライベートエリアまで通された。


「レオ、久しいの。待っておったぞ」


 部屋に入ると、そこには皇帝その人、皇妃、さらに皇太子他ロイヤルファミリーが勢揃いしていた。


「お久しぶりにございます」

「よい、余とレオの仲だろう?」


 胸に手を当てて頭を下げようとすると手で制される。

 どうやらこういうのはお望みでは無いらしい。


「レオのおかげと言ってはおかしいかもしれんが、先の戦争で帝国は大きく領土を拡大できた。今宵はその礼である」


 そういうことらしい。

 俺は全く関係ないので気にしないで頂きたい。


「無礼講である」


 無礼講らしい。

 流石に皇族相手に羽目は外せないので適度に楽しませてもらおう。


「ふむ、クリード家の嫡男か、レオよ、抱かせて貰ってもよいか?」

「もちろんです」


 サーシャからアルスを受け取り、皇帝の腕の中に収める。

 安定感が半端ない。この皇帝、赤子を抱き慣れているな。


「利発そうな顔立ちだの。将来は立派な領主になりそうだの」

「ですよね。とくにこの眉毛がキリッとしているところなんて将来性しか感じませんよね? それからこのおめめ、既に知性の片鱗が……」

「う、うむ……」


 なんだろう、皇帝の話に乗っただけなのに「この親バカめ」みたいな顔で見ないで欲しい。


 しかしアルスは強い子だな。

 見知らぬ人たちに囲まれても、初めて見るおっさんに抱かれても泣くどころか大変にふてぶてしい顔をしておられる。

 これは将来大物になる気しかしない。


 アルスはその後、皇妃に抱かれ、皇太子に抱かれ、皇太子の息子に頬をつつかれてもまったく動じず無表情を貫いていた。


 既にメンタル面は父ちゃんより強いのかもしれない。



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