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新婚旅行ベラ編2

 なんかこう……背徳感がね、すごいと言うかね……


 スイートルームでの楽しい夜を過ごして朝、宿で朝食を食べてチェックアウトする。

 今日はベラの実家に向けて出発する予定だ。


 乗合馬車も考えたのだが、せっかくの新婚旅行、どうせなら貸切馬車にして移動しようと思う。


 移動ならウルトでもいいのだが、ウルトに乗って移動するとよめーずに情報共有されるおそれがあると言いますか……ウルトには情報流出の疑いがある。


 なのでこういう時はウルトに乗らず、2人だけの思い出を作りたいと思う俺はおかしいのだろうか? いや、おかしくない。


「行こうか」

「はい」


 せっかくリバークに来たので、ギルドマスターガレットに顔でも見せてやろうかと思ったが、今回は見送った。

 何故新婚旅行でむさ苦しいゴリマッチョに会わなければならないのか……

 今回の旅行はベラの可愛いところをいっぱい見るんだ、汚いものを見るつもりは無い。


 昨日のうちに予約していた馬車を見つけ、御者の男に声をかける。


「あの……本当に護衛は要らないんですかい?」

「必要無いよ」

「しかし今王国内はかなり治安が悪く……野盗も増えてますぜ」


 ふむ、治安が悪いのか……

 まぁ敗戦して間もないし、仕方の無いことかもしれない。

 戦争のキッカケでもあり、王国敗戦の一番の原因である俺が言うのもなんだけどね!


「問題無い。アンタも馬車も守ってやるから心配するな」

「そうですかい?」

「不安か?」

「そりゃあ……」


 この御者は戦えそうもないしな。そりゃ不安で当然か。


「絶対に他の人に漏らさないと約束出来るか?」

「一応守秘義務がありますんで、お客さんの情報を他に流したりはしませんぜ」


 守秘義務があるのか。

 しかしこういう仕事で守秘義務があると、悪い客の情報も回せないのではなかろうか?


 まぁ釘をさしているだけで別に情報漏らされても問題はあまり無いと思うんだけどね。


「ほら」


 冒険者証を取り出して御者の男に見せる。


「これ……は!?」


 男は最初、俺の冒険者証を怪訝そうな目で見ていたが、材質がオリハルコンだということに気付いて驚愕する。


「な? これで安心だろ?」

「へい!」


 どうやら安心して貰えたようだ。


「じゃあ出発だ。よろしく頼む」

「かしこまりやした!」


 一悶着あったが、なんとかリバークの街を出発することが出来た。


「旦那様、よろしかったのですか?」

「なにが?」


 ガタゴトと馬車に揺られながらのんびり進む。


 俺たちの声は御者には聞こえない、御者の声は俺たちに聞こえるという大変に都合のいい音魔法を使っているので話は漏れない。


「冒険者証です。旦那様は他国の貴族、お忍びです」

「まぁ大丈夫でしょ。別に悪さしに来てる訳でもないし……」


 確かに御者を安心させるためとはいえ身分の開示はやりすぎたかもしれない。

 しかしそうでもしないと護衛が居ないと行きません! となりそうだったので仕方ない。


「ひぃ! 盗賊!」


 ベラから身分を明かしたことを怒られていると、御者台から悲鳴が聞こえてきた。


「ちょっと行ってくる」

「お気を付けて」


【無限積載】から強欲の剣を取り出しながら馬車から降りる。


「動くなよ。下手に動かなければ安全だ」


 御者の男が逃げ出さないよう釘を刺してから盗賊たちに向き直る。


 数は15、手には鍬や鋤を持っている。

 剣や槍を持つもの、ちゃんとした鎧を着ているものは居ない。

 これは盗賊と言うより食い詰め農民かね?


「動いたやつから斬る」


 強欲の剣を見せつけるように構えながら【解析鑑定】を発動、脅威となるようなスキルを持つ者はいないようだ。


「い、行くぞ! 俺たちには他に道がねぇ!」


 一際体の大きい男が前に出てくる。リーダーかな?


「し、食料と金目のものをありったけ置いて行け! そうすれば命だけは……ひぇぇ……」


 なにか喋りだしたので軽く殺気をぶつけてみると、男はあっさりと腰を抜かしてしまいその場にへたり混んだ。


 うちの警備隊連中ならビクッとするかしないかくらいの殺気だったのに腰を抜かすとは……さては戦闘経験が無いな?


「お前たちは農民だろう? 何故こんなことをしている?」

「あ……アンタには関係ないだろ!」


 あるだろ。絡まれてるんだから。


「そうか……じゃあ盗賊として討伐してやる。覚悟は出来てるか?」


 よくよく考えれば別に俺がこいつらの事情を考慮してやる必要は皆無だしな、盗賊として討伐、野晒でいいだろう。


 逃げられるのも面倒なので、今度は盗賊団全員に向けてちょっと強めに殺気と魔力を放ち威圧する。


「ひぃ……」

「だ、だめだ……」

「かーちゃん……」


 案の定逃げ出すものは無く、全員その場にへたり混んでカタカタと震え出した。


「さて……」


 これで狙いやすくなった。

【飛翔閃】で一思いに真っ二つにしてやろうと剣を構えると、リーダー格の男が土下座で詫び始めた。


「ま、待ってくれ! コイツらは俺に唆されただけなんだ! だから……だからコイツらの命だけは!」

「なんで?」


 どんな理由があれ盗賊行為に加担したことに変わりはないだろ?


「なんでって……」

「コイツらは盗賊だろう? 盗賊は討伐するものだ」

「いや、だからコイツらは盗賊じゃなくて……」

「盗賊でないのならなんでこんなところで武装してるんだ?」

「それは……」


 全く……何を言ってるんだか……

 命乞いならもっと上手くやって欲しい。


「た……たしゅけ……」

「俺は……なにも……俺はなにも……」


 まだ、だろ?


「旦那様、その方たちの言葉に嘘はありません」

「ベラ、危ないよ?」

「この世界に旦那様の隣ほど安全な場所は無いと思います」

「俺の隣よりウルトの中の方が安全だと思う」

「旦那様、お話を伺ってみては?」

「ベラが俺の話を伺えよ」


 無視するなよ。


 こうして俺は盗賊たちのお話を伺うことにした。

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