女3人寄れば姦しい。なら9人なら?
ウルトが朝立先輩のトラックを魔改造するのでは無いかと一抹の不安を抱えながらも当初の目的であるイリアーナを連れて転移で城へと戻って来た。
「屋上?」
「正面門から行くよりこっちからの方が近いだろ?」
「なるほど画期的」
画期的なのか?
まぁイリアーナのよく分からない言葉遊びはいつもの事、適当に流しながら分娩室に使っている部屋へと歩みを進める。
部屋の前では相変わらずアンナと勇者娘たちが部屋の中を覗き込むようにして待機していた。
「イリアーナ連れてきたから通して」
「レオにぃおかえり! イリアーナさんも」
「ただいま兎斗」
「ん」
「ん」ってなんだよ「ん」って。
ちゃんと挨拶しなさいよ。
「ねぇレオくん、うちちゃんと順番守ったよ? 偉い?」
「あー、うん。偉い偉い」
グイグイ来るな。褒めてほしそうな佳奈の頭をポンと撫でて部屋に入る。
あれ、アンナと瞳は静かだったな……
「ん、戻った」
「レオ様、イリアーナさん、おかえりなさい」
サーシャたちに迎えられて俺とイリアーナはソフィアとフィリアの下へ、どうやら初乳を飲ませ終えたらしくフィリアはスヤスヤと寝息を立てている。
「……可愛い」
「イリアーナ殿、私とレオ殿の娘フィリアです」
「触ってもいい?」
「どうぞ」
イリアーナは手を伸ばしてフィリアのほっぺたをぷにぷにとつつく。
「柔らかい」
普段結構無表情であるイリアーナだが、フィリアの可愛さにメロメロのようだ。
「レオ様、あたしもはやく欲しい」
「分かったから……」
クリード家本陣で空気を凍らせたことを忘れたのだろうか?
まぁここでは空気が固まることもないから別にいいんだけどね。
「堪能した。アンナを呼ぶ」
俺が子作りに同意したと見てイリアーナはアンナを呼びに部屋の入り口まで歩いていく。本当にマイペースだよなぁ……
「レオさん、ソフィア、おめでとうッス」
フィリアが眠っていることを聞いたのだろう、アンナはいつもよりかなり声を押えて祝いの言葉を述べる。
「アンナ、ありがとうノございます」
「ソフィアがママッスか、人生分からないもんッスね」
嬉しそうに表情を崩してフィリアを覗き込む。
イリアーナとは違い、アンナは触ろうとはしない。
「アルス様も可愛かったけどフィリアも可愛いッス」
ニコニコとフィリアを眺めながら感慨深そうに呟く。
そう言えば、ソフィアとアンナって幼なじみみたいな関係だったよな、そりゃ喜びもひとしおか。
しばらくフィリアを眺めてからアンナは勇者娘に向き直り入室を促す。
勇者娘は待ってましたと言わんばかりに早足で部屋へと入ってくる。
「レオにぃ、ソフィアさんおめでとう」
「羨ましいわね。2人ともおめでとう」
「僕も早く欲しいな、それまでは僕たちでみんなを守るよ」
それぞれに祝いの言葉を述べてソフィアとフィリアを囲む3人、当然声は抑えている。
「ふぁ……可愛い……」
「レオくんとソフィアさんの子供……将来絶対綺麗になるわね」
「アルスきゅんも可愛かったけど……フィリアたんはぁはぁ……」
瞳は出入り禁止にしようかな……アルスとフィリアの教育に悪そうだ。
「レオにぃ、イリアーナさんとアンナさんの次は……」
「兎斗さん、いけませんわよ。イリアーナさんとアンナさんの次はわたくしです」
「ベラちゃんはまだ未成年でしょ?」
「関係ありません」
あるよ。
「まぁ順番としてはベラが優先ではあるな……授かりものだし、俺としては拘りは無いんだけど」
「では避妊は終わりということで」
「いや……まだ14だろ?」
「貴族なら14歳で妊娠、出産する娘も少なくありません」
そうなの?
ならいいのか?
「レオにぃ、ベラちゃんもこう言ってるし……はやく孕ませちゃいなよ?」
「女の子が孕ませるとか言っちゃいけません」
「いいじゃん。レオにぃ貴族でしょ? はやく色に溺れようよ?」
「兎斗……」
「うちも兎斗に賛成、何時になったら抱いて貰えるの?」
「今は戦時だからね?」
子供が産まれたばかりだと言うのになんて話してるんだよ……
するにしても、ここじゃなくて別の部屋でするものじゃないのか?
「レオ様……」
「はい」
ここで今まで黙っていたサーシャが口を挟んでくる。
兎斗たちも正妻の登場に口を噤んで次の言葉を待っている。
「私も……その……2人目欲しい、です」
「あ……うん。よろしくお願いします」
顔を赤くしてオネダリしてくるサーシャにドキッとする。
これは先輩の【欲操作】は俺には必要無いかもしれない。
「まぁ……ソフィアも産後すぐで大変だろう。みんな一旦リビングに戻ろうか」
『かしこまりました』
いつの間にやら俺のポケットから抜け出してベビーベッドモードになりアルスを乗せていたウルトが返事をする。
こいつやけに子育てに協力的だよな、もしかしてアルスは俺の【トラック運転手】を引き継ぐのだろうか?
もしそうならその方がいいな、俺が死んだあともクリード侯爵領の開発は終わらない。
俺が居なくなったあともアルスがウルトを使って開発を進められるのならその方がいい。
そんなことを思いながら俺たちはリビングへと移動した。




