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和平交渉開始

 停戦から数日、事実確認等が終わったようで王国側から会談の申し入れがあった。


 その頃には教国側から提示する降伏条件案も完成していたので、数名の貴族や閣僚たちが会談へと赴いた。


 降伏条件の内容については、俺はよく分かっていない。

 だって貴族特有の難しくてめんどくさい言い回しが多かったんだもの……


 先輩はキチンと理解して、その上で案を出したりもしていた。

 俺とは根本的に頭の出来が違うようだ。


 和平交渉も始まったので、本格的にやることが無くなった。

 もちろん、交渉が決裂して王国軍が決死の総攻撃を仕掛けてくる可能性がある以上交渉が成立するまで油断は出来ない。

 なので招集されている教国軍の大半もこの場で待機となっている。


 そんな状況での俺たちはというと……


「暇」

「だよね。俺は領都に戻って仕事を覚えた方がいい気がするんだけど。レオっちは残らないとダメだろうけどね」

「俺こそ転移で移動出来るんですから帰ってもいいと思うんすよね」

「なら聞いてみたら?」

「誰に?」

「ゲルトさん」

「なんでだよ」


 なんで部下に聞くんだよ。

 ゲルトに帰っていいか聞いても「私には判断できかねますので……」としか言われないだろ。


「俺が戻れるようになるまで先輩は強制で道連れですわ」

「なにゆえ?」

「なんか先輩領都に送ったら俺の奥さんに色目使いそうだもん」

「使わないよ!?」


 ひたすら先輩と駄弁っていた。


 もちろん、先輩だけではなくゲルト以下諸侯軍兵士たちとも喋ったり一緒に飯を食ったりしている。


 他にもアンドレイさんやヒメカワ伯爵、ゴルベフ辺境伯など関係のある貴族と親交を深めたり、グスタフ辺境伯を始めとする今まで関係の無かった貴族と顔を合わせたりもしていた。


 ほぼ初めましての貴族の顔と名前なんて覚えられる気がしない、その辺は隣に控えている先輩が覚えてくれていることだろう。

 いやぁ、試用期間中とはいえ家臣が優秀で助かるよ。


 先輩は先輩で、試用期間中ということもあるのだろう、仕事を覚えるために色々と動いている。

 内政担当であるマークとダニエルは領都に居るので話が聞けない。ならば身近に居る軍事担当であるゲルトから話を聞いて軍事関係の知識を蓄えているようだ。


 先程言ったように、俺がほかの貴族と会う時には必ず同席して相手貴族の顔と名前、会話内容を全て記憶している。


 さらにその貴族の主だった家臣と関係を結んでおり、その貴族の領地の特産品などの情報も仕入れてきていた。


 これはもうそのまま外務担当でいいのではなかろうか?


「ところで先輩、先輩はスマホとかタブレットとかこっちに持ち込めてます?」


 ある日の夕食時、先輩と飯を食いながら気になっていたことを聞いてみた。


「あるよ。それがどうしたの?」

「充電とかは?」

「それはトラックに積んでる充電器で……ってはやく俺の朝立丸返してよ!」


 そういえば預かったままだった。忘れてた。


「今出してもいいですけど……邪魔じゃないっすか?」

「確かに使い道無いかも……領都に戻ってからでいいや。それでスマホとタブレットがどうしたの?」

「その中にダウンロードしてる動画とかって……」


 そう言うと、先輩はいやらしい笑みを浮かべた。


「くりちゃんも好きだね……綺麗な奥さんがあんなに居るのにいいのかい?」

「え?」

「それでどのジャンルが観たいのかな?」

「アニメがいいっす。ありますか?」

「アニメかぁ……くりちゃんも中々業が深い」


 業が深い?

 確かに異世界転移を実際に体験しておいてそれ系のアニメが観たいと言うのは業が深いことなのかな?


「アニメも色々あるよ。どんなのがいい? 鬼畜系? 触手系? それともハーレム侯だしやっぱりハーレム系?」

「ん?」

「あ、心配しなくてもタブレットは貸してあげるよ? 時間は……1時間くらいでいいかな? 俺はその間外でゲルトさんと話してるから安心していいよ?」


 こいつ何言って……ああ、なるほど。


「先輩……いや変態、18禁じゃないやつは?」

「そんなの無いよ?」


 無いのか。


「普通のアニメが観たかったんす。健全な異世界ファンタジー物が観たかったんす」

「なうじゃん」

「なうだからこそっす。それに俺は領地に戻ったら干からびるまで搾り取られるんですから今はそういうのはちょっと……」

「なにそれ自慢?」

「はい」


 俺が頷くと、先輩は立ち上がり数度地団駄を踏んでから席に座り直して食事を再開した。

 俺の提供したミノタウロスサーロインステーキを洗練されたマナーで食べながら「この恨みはらさでおくべきか」と呟いている。

 やっぱりこの人面白いわ。


「でも先輩もうちの家臣になるのなら少なくとも2人か3人は妻を娶らないといけませんね」

「御館様ぁ ! あっし、一生御館様について行きまさぁ!」

「あ、でも先輩おっさんですよね? 頑張れるんですか?」

「ふっ……くりちゃんよ。俺様の能力を忘れたのかい?」

「ああ、【欲操作】」


 でもあくまで欲を増減させる能力だよね?

 いくら欲が増しても体はついていけるのかな?


「先輩、それ欲は増しても体力は続くもんなんですか?」

「わかんない。試したことないし。国王や宰相も結果報告してくれなかったしね……でも満足そうな顔はしてたから大丈夫なんじゃない?」

「なら希望はありますね」

「うん。それよりくりちゃんは【欲操作】持ってないみたいだけど、どうやって対応してるの?」

「【絶倫(極)】というスキルがありまして……」

「なにそれこわい」


 先輩はナイフとフォークを置いて自分の尻を抑えた。

 ぶん殴ってやろうかな……


 そんなバカげた会話を楽しんでいると、脳内にウルトの声が響いてきた。


『マスター、緊急事態です』

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