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準備

 領地へと飛んだ俺は、庁舎代わりに使われている石造りの大きな建物へと足を踏み入れた。


 ここはウルトが【無限積載】の権能をフルに活用して作った建物で、完成した時には意味がわからなさすぎて混乱したものだ。

 なんで【無限積載】で家建てれるんだよ……


 まぁ橋も架けられる能力なのだ、今更言うまい。


 ちなみに領主屋敷だが、まだ建設も始まっていない。

 俺はウルトや転移で移動出来るので先に入植した移民たちの家を優先させている。


 ある程度それが落ち着いたら立派な屋敷を建てる計画である。


「御館様! お疲れ様です!」

「お疲れ。マークとダニエルは居るかい?」

「はい、お2人とも現在執務中です」


 庁舎の前を警備している警備隊員に断り中へ、2人の執務室へと向かう。


「やぁ。お疲れ様、調子はどう?」

「御館様! 来られるなら言って下されば……」


 いいよ。出迎えとか堅苦しいもの。


「それより今日は2人に話があってさ」

「話ですか?」

「大事で面倒臭い話だよ。ウルトは?」


 またどこかで工事でもしてるのかね?


「ウルト様は近くの村の予定地の開墾作業に行っております」

「あいつもよく働くね……呼び出しても大丈夫かな?」

「特に急ぎの仕事ではありませんので、大丈夫かと」


 ウルトの行方をダニエルに尋ねると、スラスラと答えてくれた。

 中断させても問題無いようなので【思念共有】で召喚する旨を伝えて【トラック召喚】ですぐに喚び出した。

 ちゃんと室内で召喚すると伝えていた為に小さくなっている。


『お待たせ致しましたマスター』

「全然。じゃあ揃ったことだし話を始めようか」


 俺は2人と1台に王国からの要求と、教国の答えを伝える。

 2人は俺の話を聞いて苦々しい表情を浮かべていた。ウルトは黙っている。


「酷い言いがかりですね」

「王国は何を考えているのでしょうか?」


 そもそも王国は俺が力を失っていることなんて知らないはずなのに何を考えてるんだろうね?

 もしかして、力を失う前の俺にも対抗出来る切り札でもあるのかな?


「まぁそういうことだから、兵を100人ほど見繕って欲しいんだよね」

「お任せ下さい。よりすぐりのクリード家諸侯軍を編成してみせましょう」

「よろしく頼むよ」


 マークは力強く頷いた。任せても大丈夫だろう。

 確かまだ19か20なはずなのに有能な男である。


『マスター、提案があります』


 ヤバい、またこいつ何かやらかすつもりだ……聞くのが怖い。


「一応聞こうか」

『はい。マスターのお考えでは私は後方にて奥様たちの護衛とのことですが……戦場の状況次第では私の力が必要となる場合があるかもしれません』

「まぁそれは……」


 否定は出来ない。


 王国の勇み足なら問題無いが、何かしらの切り札を用意していた場合はこちらも対策が必要となる。

 その対策はウルトになるのも間違いない。


『そうなると奥様たちのことが不安になるかと思われます。ですので、例え1万の兵に攻められたとしても大丈夫なようにしておくべきです』

「お前が護衛する以外にそんな都合のいい方法があるのか?」


 1万の兵に攻められる……俺とジェイド、フィリップの3人でもかなりキツいというか無理だと思う。

 さすがに多勢に無勢が過ぎる。


『あります。この世界で最も堅牢な要塞をここの領地にご用意します。領地に残る警備隊で籠城すれば1万の兵に攻められてもビクともしない要塞です』


 へぇ、そんな要塞を用意出来るのか……

 一晩でこの庁舎も作り上げたウルトにならそれも可能なのかね?

 これだけウルトが自信満々なんだ、任せてもいいだろう。


「分かった、任せる。何日ほどかかる見込みだ?」

『2日ほど頂ければ……マスターに御協力頂けるのであれば1日で可能です』

「協力? 嫁たちの安全のためなら協力は惜しまないけど」


 よめーずのためならなんでもするよ?


『それでしたら準備が整いましたら呼びかけますので【トラック召喚】の使用をお願いします』

「【トラック召喚】? どこかに行くのか?」

『はい』


 ふむ……まぁいいか。


「分かった」

『ありがとうございます。それでは行って参ります』


 ウルトは【飛翔走】を使い窓から飛び出して行った。

 どこまで行くのかしらね?


「さて……じゃあ諸侯軍の編成と後のことは任せるよ」

「お任せ下さい。御館様はこれからどうされるので?」

「とりあえず屋敷に戻るよ。あ、そうだ!」


 大事なことを伝えるのを忘れていた。


「ダニエル」

「はい!」


 呼びかけると元気よく返事をする。


「リンが妊娠した。おめでとう、これでキミも叔父さんだ」

「姉上が!? 御館様、おめでとうございます!」

「おめでとうございます!」


 2人は畏まって祝いの言葉を述べる。

 家臣でもあるけど、義理の家族でもあるんだからそこまで畏まらなくてもいいのに……


「しかし御館様……」

「ん?」


 ダニエルはなんだか言いづらそうにこちらを見ている。


「兄上にも子供はおりますので……私は既に叔父さんです」

「確かに……!」


 そういえばそうだった。

 ねだられて勇者と魔王との戦いの話したわ……


「申し訳ございません!」

「なにが?」


 どうやら家臣が当主に意見するというのは中々にハードルの高いことのようだ。

 今のは別に意見でもなんでもないでしょうに。


「まぁ気にするな。なにかあったら気軽に言ってくれて構わない。2人は家臣でもあるけど家族でもあるからさ」

「御館様……」

「勿体ないお言葉です……」


 2人は俯いて咽び泣く。大袈裟だなぁ……


「じ、じゃあ戻るから……後のことは任せる」

「「はっ!」」


 なんだか居心地がよろしくないので急いで憩いの場である聖都の屋敷へと転移した。

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