懐妊
「ただいま」
「おかえりなさい」
自宅のリビングへと戻ると、リンを除くよめーずが揃ってお茶を飲んでいた。
「レオ様、おめでとうございます」
「ん? いきなりどうしたの?」
王宮での話を切り出そうとしたが、先にサーシャに祝いの言葉を投げかけられた。
「リンさんですが、赤ちゃんが出来ています」
「マジで!?」
ということは体調不良は初期症状だったのか……
ちなみにサーシャとソフィアはそういうのは全然無くて、月のものが来ないからと言う理由で発覚していた。
「羨ましいですわ。わたくしは早くて来年ですか……」
ベラは残念そうにお腹の辺りを撫でている。
まだ未成年だからね……せめて成人として認められる15歳までは待ってね。
「レオ様、あたしも早く欲しい」
イリアーナとは子作りを始めてまだ間もない、そのうち出来ると思うよ。
「自分はソフィアが産んでからお願いするッス」
アンナは責任感が強いからな。
別に護衛はフィリップやジェイドも居るのから気にしなくてもいいのに。
それぞれに返事を返して俺もソファに腰をおちつける。
すぐにサーシャがお茶を淹れてくれたのでお礼を言って受け取り一口飲む。心が安らぐ……
「それで、お城では何があったのですか?」
そうだった、まったりしている場合ではなかった。
「どうにもきな臭いね。王国から布告があったみたい」
会議室で聞いた王国からの布告の内容を話すと、よめーずは難しい顔をする。
「レオ様を引き渡せ、ですか……」
「まぁ引き渡さないって決めてくれたからね。そうなると……」
「戦争ですか……」
教国と王国の戦争、その話になった途端にベラの纏う空気が重苦しいものへと変わった。
「みなさま……その……申し訳ありません」
ベラは俺やよめーずに対して頭を下げる。
そんなことする必要無いのに。
「頭を上げてください。ベラさんが謝る必要はありませんよ」
「しかし……」
「今回の王国からの布告は明らかに言いがかりです。ベラ殿が責任を感じる必要はありません」
言いがかりというよりイチャモンだよね。
「そうッスよ、自分たちの旦那さんがなんとかしてくれるッスからベラさんは心配しなくていいッスよ!」
こういう時、アンナの明るさはありがたい。
言ってる内容は全部俺に丸投げなんだけどね。
「ベラは、仲間」
「みなさん……」
ベラはみんなから優しい言葉をかけられて嬉しそうだ。
俺は何も言っていないが同意を示すためにうんうんと頷いておく。
「まぁ話を戻して……それでクリード家としても軍を出さないといけないんだよな」
「それは私たちではなくマークやダニエルさんに相談しなければなりませんね」
今クリード家の実権を握っているのはその2人だからな。
俺も領主権限は持ってるけど使うこと無いし。
「とりあえず……俺も出陣するからジェイドとフィリップは連れて行こうと思ってる。あとは警備隊から100人程度かな? 開発にあまり影響の無いように最小限で構わないって言われてるからそれくらい出せば十分でしょ?」
「そうですね。リンさんが同行出来れば良かったのですが……」
確かにリンが居てくれたら心強いけど、絶対に無理はさせられないからな。
嫁が妊娠中なんだ、旦那の俺が頑張らないでどうするよ。
「自分も行けるッスよ?」
「あたしも」
「わたくしは……王国相手ですので大人しくしておきますわ……」
うーん……
アンナも連れて行こうかと思ったのだが、ジェイドとフィリップを連れて行くならこの家の守りが薄くなるし、それならアンナには残ってもらった方がいいのかな?
正直教国より嫁が大切だし……ウルトを呼び戻して護衛に当てるか?
戦争自体は俺とジェイド、フィリップが居れば戦力としては十分だろうし。
そういえばこの前聞いたんだけど、ジェイドは83レベルの竜騎士でフィリップは55レベルの剣闘士らしい。
ジェイドはもちろん、下手をすれば今の俺よりフィリップの方が強いんじゃないかな?
俺今レベル47だし。
まぁ魔力と魔攻がAになったから、広範囲殲滅は任せて貰って構わない。
ジェイドとフィリップは俺の護衛だな。
いや……ウルトを家の護衛に残すのならアンナも連れて行ってジェイドは特攻させた方がいいか?
その辺は作戦次第かな。
極論すれば俺とウルトだけで参戦して他は全員自宅警備、戦場でウルトを走らせれば全てが終わるのだがさすがにそれはなぁ……
「とにかく、マークとダニエルにも話をしてくるよ」
「分かりました。行ってらっしゃいませ」
残っていたお茶を一息で飲み干して【傲慢なる者の瞳】を使い領都を確認、クリード侯爵領へと転移する。




