好敵手
『よう、軍師総帥。おかえり』
ハグムの王宮の自室には、椅子に座ったままのヤンが机の上に広がった菓子をつまみながら、立ったままの王宮の従者と女官と楽しそうに話していたが、ハグムの顔をみるやいなや従者と女官は慌ててすぐ立ち去っていった。
彼らは、ハグムが机の上に溢した茶をどうにかしてもらおうと、ヤンが近くで呼んできた人間たちであった。
『あれ、なんだ。つれない奴らだな』
ヤンは菓子を口の中に詰め込み、美味しそうに食べている。
『わりいな。居心地が良くてつい長居しちまった。サイナムはさっき部屋に戻ったばかりだ』
『いいですよ。好きなだけ居てくださって』
ハグムは真顔でそう答えると、自分の机の椅子に座った。
『あんた、女官や従者たちからえらい人気らしいが、顔がそんなだから近寄りがたいってよ、改善したら?』
ヤンが茶化すように言ったのを、ハグムはため息まじりでそうですか、とだけ短く答えた。
『俺はてっきり感動の再会を果たしたかと思ったが……違ったか?』
ヤンはハグムの冴えない顔を見て、面白おかしく問うた。
『……ヤン殿は、ハクタカとはどういった知り合いで?』
ハグムの質問に、なんだ、本人に聞かなかったのかとヤンが問うと、まだ仕事を残してきたので自分はすぐ戻ってきたとハグムは答えた。
『にしても暗い顔だな。何かあったのか?あんたらのことは大体シバ将軍から聞いたが』
ヤンがまじまじとハグムの顔を見た。
ハクタカの居場所を教えてくれたヤンに、ハグムはさっきの家での出来事と、今までの自身の正直な気持ちを簡潔に彼に伝えた。
『あっっははははははは!!!!』
ヤンは腹を抱えて笑った。
『笑い事ではありません』
ハグムが咳払いをした。
『それはあいつには使えねえ戦術だよ、軍師総帥』
『ですから、私はもう軍師ではないと言っているではないですか』
ハグムは苦虫を潰したような顔でヤンをちらりと見遣り、残した仕事の書類の整理を始めた。
『悪い悪い』
腹が痛いと言いながらも、依然ヤンは笑っている。
『私は真っ当に彼女に伝えたはずなのですが』
ハグムは淡々と仕事をこなしながら、呟いた。
『だめだめ、そんなんじゃあ、伝わらないね、あいつには』
笑い声でヤンが言う。
『あなたに何がわかるのですか』
少し苛立ちを抱えながら、ハグムが問う。
『分かるさ。あんたと同じだからな』
ヤンの言葉に、ハグムは仕事をする手を止めた。
ヤンがこちらを見てにやりと不敵に笑っている。
『……もしかして』
そのハグムの言葉に重なるように、ヤンは続けた。
『あいつが今までどう育ってきたのかは知らないが……、あいつは愛情深いくせに、自分が愛されることを知らない。ましてや男に愛されるなどと、男として長い間生きてきた分、夢にも思ってないだろうぜ』
ハグムは眉根を寄せた。
なぜこのひとはーー
これほどまで彼女のことを知っている。
ハグムは手に持っていた巻物を、机の上に置いた。
それと同時に、
『解せない』
ヤンは人差し指をハグムに向け、そう言い、続けて言った。
『今、あんたが思っていること。当たってるか?』
『……そのとおりです』
ハグムがそう答えると、ヤンは嬉しそうに顎を手でさすった。
『教えてやる。そうだな、まずはあいつと俺が出会った話からだな』
ヤンはハグムに語り始めた。
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