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隻腕のハクタカ  作者: チョヴィスキー
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到着

狼が出て以降は、順調な旅路であった。

商隊の一行は南の宿場町を発って五日後の昼に、目的地の街に着いた。

お別れの時、アレクやその兄はハクタカとヤンに命を救われたと何度も感謝の意を示し、アレクの娘のリンはハクタカから離れるのが恋しくて泣いていた。

アレクは提示した給金以上の金を最後にハクタカとヤンに支払おうとした。

ハクタカは一度は断ったが、どうしてもとアレクから言われ、ヤンからも受け取っとけよ、と背中を押され、ありがたく受け取ることにした。


彼らと別れると、ヤンはハクタカに言った。


「おい、ハクタカ。これからどうするんだ?」


「うん。実は先生の家に行きたくて。今から行ってくる」


「?あの軍師なら王宮にいると思うぜ」


「うん、今仕事で家にいないのは知ってる。だから行くんだ」


「は?」


ヤンは何を言っているのか分からない、と言った顔でハクタカを見た。


「会わずに、渡したいものがあるだけだから」


ハクタカは自身の荷物をとんとん、と叩いて示した。


「なぜ会わない。会いたいんじゃねえのか」


「……追い出された身だ。私が会いたくても、向こうは会いたくないよ、きっと」


ハクタカは俯き、苦しげな様子を見せた。

ヤンはその顔を見て、何日か前に見たあの軍師と同じ顔だと感じとった。


じゃあ、ヤン、またねと言ってチボと歩き出した後ろ姿に、ヤンは叫んだ。


「ハクタカ!俺はまだしばらく王宮にいるからな!遊びに来いよ!」


ハクタカは振り返って少し困った笑みを浮かべながら、手を振って去っていった。






ヤンはハクタカを見送ると、ふう、と息をついた。


『おい、サイナム』


ヤンがそう言うと、サイナムはヤンの後ろの小道の角から、そろりと姿を現し、ヤンの後ろでお辞儀をした。


『殿下、ご無事でなにより』


サイナムは微笑を浮かべている。

ヤンは振り返った。


『おまえって悪趣味だよな』


ヤンはサイナムを見て、不機嫌そうに睨んで続けて言った。


『俺がハクタカに振られてそんなに嬉しいか』


『は、なんのことでございましょう』


相変わらずサイナムは微笑を浮かべたままである。

ヤンは隙のないサイナムを見て、話題を変えた。


『とぼけるなよ。狼が出た時、おまえ、あの場に居たろう?なぜあの時ハクタカを助けなかった』


ヤンの言葉に、サイナムは間を置かずに答えた。


『殿下。私は殿下を助けるためにこの旅についてきたのであって、あの娘を助けるためについてきたのではありません』


『……おまえ…見上げた根性してんなあ……』


ヤンはサイナムを気味悪そうにまじまじ見た。


『これまで殿下に仕えてきた賜物でございます』


サイナムはにっこり笑った。

ふん、とヤンは鼻を鳴らした。


(しかしまあ、ハクタカといい、あの軍師といい、何がなんやら。こじれてやがるなあ……)


ヤンは苦笑した。


『似たもの同士にもほどがあるな』


ヤンはハクタカが去っていった方向を見て、人混みの中しばらく立っていた。


【チョヴィスキーからのお願い】

小説を読んでいただいて本当にありがとうございます

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