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隻腕のハクタカ  作者: チョヴィスキー
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行方不明

「……ハクタカが、来ていない……?」


王宮の自室でハグムは青ざめていた。


ハグムの目の前には僧侶の格好をした体格の良い壮年の男がいた。

彼は北のハンナイという村の寺にいる住職がハグムに遣わした男であった。

ハグムがハクタカを住職のもとに送って以来、一ヶ月経ってもハクタカが姿を見せることはなく、もともとハグムからハクタカが来ることを知らされていた住職が心配し、この男を寺から送ったのであった。

道すがら各村や町の警察をあたりつつ、しかし何も情報を得られないままここまでやってきた、とその男はハグムに語った。


「何か犯罪や事故に巻き込まれたかと心配しましたが、そのような様子もなく……。ハグム殿も知らないというのであれば、どこに行かれたのでしょうか」


男は心配そうにハグムの顔を伺った。


「……こちらも調べてみます。遠いところ、わざわざお越しくださってありがとうございます。部屋を用意しますので、今日はゆっくり体をお休めください」


「お心遣い、かたじけない」


男はハグムに深い一礼をした。






ハグムはすぐシバに相談した。

話を聞いたシバは治安警察部の兵を動員し、全力でハクタカの捜索にあたったが、ハグムの家から近い北の村や町に捜索隊を送っても、ハクタカを見つけることはできなかった。

一ヶ月経ち、二ヶ月経っても、北の地域でハクタカを見つけることは出来ず、捜索は難航していた。


「どこに行ったんだろうな、あいつ……」


夜中のハグムの家の座敷で、シバはハグムに捜索の結果を報告していた。


「……」


ハグムは無言だった。


(どこに……)


ハグムのまぶたに、ハクタカの笑顔が浮かんだ。


(……生きているのかどうかも…分からないとは…)


「私のせいだ」


ハグムはぼそりと言った。


「あ?」


シバがハグムの方を向く。


「互いに未練を残すまいと……あの時、私はハクタカにひどいことを言った」


シバは顔を曇らせてハグムを見つめた。


「……それはあいつを想って、おまえが仕方なくやったことじゃあ、ねえのか」


「……」


ハグムは無言で俯いた。


「シバ」


しばらくして、ハグムは口を開けた。


「ん?」


シバが答える。


「もう、ハクタカを探すのは……やめよう」


「……っ!なんでだ。まだ南の方は探していない村や町だって……」


ハグムの提案に、シバが立ちあがろうとした。


「……いいんだ」


ハグムは苦笑した。


「……?」


シバは顔を顰める。


「……たとえ見つかったとしても、私は……ハクタカに合わせる顔がない。使用人を解雇した雇用人に……、私に、ハクタカに会う権利はないよ」


「なに言って……」


シバが目を見張る。


「今まで散々付き合ってもらってすまなかった」


礼を向けるハグムに、シバは拳をハグムの顔面に勢いつけてピタリと押し当てた。


「また俺に殴られてぇか?」


ハグムは顔をあげ、驚きの顔を見せた。


「使用人だあ?雇用人だあ?なに言ってる。おまえらはそんな薄っぺらい関係だったか?」


ハグムの瞳が揺れる。


「俺にはそう見えなかったがな。役所では常に仏頂面のおまえが、あいつがいるこの家で、何度笑った?」


シバの言葉に、ハグムはぐっと唇を引き締めた。


「俺は諦めないぜ。ユノも国じゅうに散らばる商人たちに協力を要請している。諦めるな、おまえが。そして、あいつに会ったら言ってやれ。おまえがいつも言われていた、おかえりって言葉をな」


シバは拳をハグムの頬から離した。

ハグムはがっくりと肩を下ろし、俯いていた。


「……けっ。大の大人が、意地張るんじゃねえよ」


シバは俯くハグムの目に、光るものを見て、呟いた。


「……すまない」


力無くハグムは答えた。



ハグムは会いたかった。

どうしようもなく、ハクタカに会いたかった。

傷つけてしまった自分をどんなに責めてくれてもいい。

それでも、ハクタカの顔を、あの笑顔を、見ずにはいられなかった。


「……引き続き、捜索を頼む。シバ」


ハグムは顔を上げてシバに向き直った。


「言われなくとも」


シバはハグムの目を見遣り、にっと笑った。


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