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隻腕のハクタカ  作者: チョヴィスキー
51/82

農民兵

「チボ、大変だ。兵たちに追いつかれそうだ」


ハクタカはひたすら南の戦場に向かっていたが、サイシ村を出て半日経った頃、途中背後から蹄の音がしたと思うと、ヨナ国の兵の行列がすぐ背後に広がっていた。

ハクタカは慌てて近くの林の中に隠れた。


(結構早く歩いてきたのに、すぐ追いつかれてしまったな)


声を殺して木の後ろで身を隠していると、先頭のヨナ国兵がずらずらとハクタカの横を立ち去っていった。


(どうしよう、最後の兵が通り過ぎるまで待って……その後を追いかけるか?)


ハクタカはしばらく迷っていると、大将軍サイが率いる兵たちが現れ、高々と掲げられたヨナ国の国旗に囲まれ一際大きい馬に跨ったサイが過ぎ去っていった。


(戦が……始まるんだ)


ハクタカは兵の多さと、サイの表情から改めて大きな戦争が起きることを感じ取り、胸の中に不安が蠢いた。

サイの兵たちが過ぎ去ると、一際大きな声がする兵団が現れた。


「おい、なんでおまえが俺の部下の騎馬に乗ってるんだよ」


「別にいいだろ、大量の医療道具運ぶのにあんたたちの馬が一番馬力がありそうだったからさ」


(シバ!カナさん!)


シバとカナの二人が言い合っている姿を見てハクタカは懐かしさを感じ、嬉しく思った瞬間、どくん、と心臓が鳴った。

ハグムがその後ろで、真顔で騎馬に乗っており、シバたちに続いていた。


(先生……)


ハクタカはハグムの顔を見て、嬉しくもあり、苦しくも感じた。

あの日、自分に去れと言った、あの顔だった。

ハグムは眉ひとつ動かさず、鋭い目の光を宿しながら、ただただ前を見据えていた。


その時、隣でワン!と鳴いた声に、ハクタカはひどく驚いた。

ハグムに駆け寄ろうとしたチボの尻尾をすぐに引っ張り、ハクタカはチボの頭を伏せると同時に自分がチボに乗るかたちで地面に伏せた。


(……犬の声?)


林の方に振り向いたハグムだったが、ほんの少し視線を泳がせると、すぐまた正面に顔を向けた。


(よ、よかった……)


時間が経って顔を上げると、ハクタカはハグムたちがはるか前に行ったことを確認した。

ちょうどその時、農民たちの歩兵軍が側を通り過ぎた。

農民達は武器を所持していたが、騎馬に乗る兵士たちより軽装だった。


(あ!)


ハクタカは荷物を持ちチボを誘導して、その歩兵軍に紛れるように後ろから最後尾の端の兵の脇に並んだ。横の農民はその隣の農民との話に夢中で、ハクタカには気づいていない様子だった。


(よし、このまま先生達が向かう城まで一緒に行こう)


ハクタカは何食わぬ顔で、兵士たちとともに行軍した。




『おい、サイナム』


『は、なんでしょう殿下』


『ヨナ国の兵士には何歳からなれるんだ?』


『たしか…、成人と認められ、徴兵されるのは十八歳からですが』


『障害者も戦に参加するのか?』


『本人の意思に基づくものと聞いておりますが。ただ、多くの障害者は自ら参加することは少ないでしょう』


『……だよな』


ヨナ国の農民歩兵のすぐ後には、シモン国兵士たちが続いていた。

ふと自分の右後ろの視界から出てきた青年が、農民兵に混じっている。


(あんな奴いたか?)


シモン国兵の先頭を切っていたヤンは、突然現れたハクタカに、いささか疑念を生じた。


『それがどうかされましたか、殿下』


隣に控えるサイナムはヤンの横顔を伺った。


『いや、別に』


ヤンは短く答えた。


(あのチビ、どうみても十八の男には見えんぞ。それにあの片腕……あんなやつが戦に行くのか?)


ヤンは馬上から、農民達と一緒に歩くハクタカの後ろ姿をじっと眺めるのであった。


【チョヴィスキーからのお願い】

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