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隻腕のハクタカ  作者: チョヴィスキー
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確執

早朝、自分の部屋から座敷に入ってきたハクタカは、そこにハグムがいないことを確認した。

ハグムの寝室の扉を何回か叩いたが、返事がない。

寝室の扉を開いても、そこにハグムの姿はなかった。

書斎はがらん、と静かだ。

ハグムが仕事で帰ってこない日々が続いていたが、それでもハクタカはどこかにハグムがいないかと毎朝家の中を探すのであった。


(今日も、行こう)


ハグムの体調のことが心配になり、ハクタカは少しでも元気がでれば、と最近はハグムの役所に弁当を届けていた。

調理場に行き、弁当になるべく多くの野菜と精の出る肉を詰め込んだ。


庭の廊下の戸口を開けると、庭の木の葉が揺れている。

久しぶりに空気が暖かかった。

清々しい空を見上げていると、チボがハクタカに気づき、鳴いた。


「チボ、おはよう」


チボの冬毛が抜け落ち、毛がまだらに見えた。

座敷に戻り、弁当とハグムの着替えを風呂敷に包むと、ハクタカは役所に向かった。






役所の前では、衛兵の若い二人の男が立ち話をしながら互いに笑いあっていた。


「おら、ドム。ちゃんと仕事をしているのか?!」


「はっ!す、すみません!!…って、ハクタカか」


ハクタカがシバの声色を真似て、衛兵の一人に向かって叫んだのだった。


「驚かすなよ、おまえ」


ドムの隣にいる衛兵、シドも唸った。


「ごめん」


ひひ、と白い歯を出してハクタカは笑った。


「また来たのか?」


ドムはハクタカに聞いた。


「うん、これ。お願いできるかな」


「ああ、分かった」


ハクタカは、ドムに風呂敷包みを渡した。


「ありがとう、ドム」


「いいってことよ、気をつけて帰れよ」


ハクタカは、いつぞやシバが役所の門前に立つ衛兵、ドムとシドをからかっていたのを見つけて話しかけると、シバがこの二人のことを紹介してくれた。

何回かハグムに弁当を届けるうちに、顔馴染みになり、ハクタカは二人と仲良くなったのであった。


「うまそうな匂いだな」


ドムがそう呟くと、シドも風呂敷包みの匂いをうんと嗅いで、そうだな、と答えた。





門前から外へ走り去っていくハクタカを役所の中で見ていた男が、ドムとシドに近づいて来た。


「君、それはなんだね?」


男は、よく響く低い声で、ハクタカが持ってきた風呂敷包みを指差した。


「これは!左大臣オンギョル殿!!」


ドムは畏まって一礼した。

まっすぐ櫛でとかれたように整った白と黒の混じる髪と顎髭を持ち、鷲のような鼻と目つきをした男。

左大臣オンギョルはじろりと風呂敷包みを睨んだ。


「今、内政部副官のハグム殿の家から使用人が参りまして、これをハグム殿に渡してくれと」


ドムは風呂敷包みを前に持って見せた。


「使用人?それは確かなのか?知らない人間で危険な荷物であったらどうするのだ」


オンギョルは眉を顰めドムの顔色を伺いながら問うた。


「大丈夫ですよ。ハグム殿と親しいシバ殿も、あの使用人のことは知っておられます。この荷物もただの弁当で、激務で帰れないハグム殿を心配して持ってきているだけです」


ドムはすかさず付け足した。


「しかも、あの使用人はハグム殿のお気に入りで。私がこれを持ってあの使用人の話をすると、あのハグム殿が微笑むのです」


ドムは珍しいものでも見るかのように話した。

ドムが言い終わると、シドは陰でドムの脇腹を小突いた。


「なんだよ」


ドムがシドに小声で不平を言った時、


「ほお…、そうかそうか」


オンギョルは手で顎髭を撫でながら風呂敷包みを見やり微笑んだ。


「いや、手間をかけた。早くそれを持っていってやりなさい」


「は!お疲れ様でございます!」


ドムとシドは役所の奥に消えていくオンギョルに敬礼した。


「なんだよ、シド。さっきのは。痛かったじゃねえか」


ドムは脇腹をさすりながらシドに抗議した。


「…オンギョル殿の前でハグム殿の話をするんじゃねえよ」


「なんでだ」


ドムはきょとん、とした。


「あの二人、すげえ仲悪いの、知らねえのか?」


「そうなのか?オンギョル殿はさっき、そのようには見えなかったぞ」


「表向きの顔さ。ハグム殿の提案した政策も、集会場でいちいち些細な間違いや足りない箇所を探しては重箱の隅をつつくらしいぜ。まあ、最近では多くの側近達がハグム殿の政策に同意してことなきを得ているとも聞くが。ハグム殿は全く気にしておられないお顔をしてるが、最近じゃあオンギョル殿がハグム殿を内政部から追い出そうとあの手この手らしい。ハグム殿と仲良くなった高官を辞めさせたとかいう怖い噂もあるほどだ。俺だったら腹わた煮えくりかえってることも、きっとハグム殿は我慢してるだろうぜ」


「へえ。お偉いさん達には裏に色々確執っていうものがあるんだな」


「ああ、関わらない方がいいってもんだ」


ドムとシドは、左大臣が立ち去っていった北の奥に聳え立つ王宮を眺めていた。


【チョヴィスキーからのお願い】

小説を読んでいただいて本当にありがとうございます

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