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隻腕のハクタカ  作者: チョヴィスキー
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剣の重み

黒ずくめの男は速かった。


塀から屋根へ登り、屋根から屋根へと、飛び移って行く。

周りは静かだった。

自分の急いた息づかいと屋根を走る音しか聞こえない。


ハクタカは、月明かりに照らされた前を行く男の走り方や顔を向ける方向のわずかな変化を見て、次にとる行動を感じ取っていた。

男が途中で屋根を飛び降りるのを察し、男が飛んで道に降り立つと、飛び降りざまにハクタカは剣を振るった。

黒ずくめの男も、応戦し、剣の突きの連撃をハクタカにくらわせた。

それをかわす途中、男の剣の切っ先がハクタカの頬を掠め、つ、と鋭く傷が走った。

連撃をかわし切れないと悟ったハクタカは、地面を蹴って後ろで宙を一回転し、剣をかわし切った。

片足を着地させると、思い切り前に踏み込んで、男の右の大腿に剣を切り込んだ。


「ぐ!」


男が一瞬ひるむと、その隙にハクタカは男の左の方にくるりと身を翻し、回り込んで男の背後をとった。

自分が突き立てた剣が男の背中の肉に食い込んでいく。


この感覚が、人を斬る、ということ。

さっきと同じ、人を殺す、ということ。


ハクタカははっとし、咄嗟に、自身の剣先を男の心臓の方を向かないよう、突き刺した。


男はぐったりと倒れた。


満月が、ハクタカの剣の血を鮮やかに照らしている。


「はあ。はあ。はあ。はあ…う、ぐ、うぅっ!」


急に吐き気を催した。

ぼたぼた、と透明な液体がハクタカの口から吐き出された。


自分が浅はかだった。

剣を持つことが、こんなに重いことだったなんて。

思い知った。

守る命があるのならば、そこに、殺さねばいけない命もあることを。

剣を学んだ気でいた自分が、まるで情けなかった。

覚悟が、足りなかった。


ハクタカは、声を出して、泣いた。





瀕死の黒ずくめの男を左手で背に負いながら、ハクタカはハグム達のもとに戻ってきた。

ハグムはハクタカの無事を確認しようとすぐ駆け寄ったが、顔を血で染め、無言で戻ってきたハクタカに、ハグムはその時、何一つ声をかけられなかった。


【チョヴィスキーからのお願い】

小説を読んでいただいて本当にありがとうございます

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