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隻腕のハクタカ  作者: チョヴィスキー
23/82

一目惚れ

酒場は熱気で溢れていた。

中には座敷のある小部屋がいくつも並び、複数人の男と、店の女たちが楽しそうに話している。

男同士で談笑する円形の机には、酒瓶と色鮮やかな食べ物が所狭しと並び、温かい食事が湯気を立ち上らせていた。




あれから、ハグムはハクタカの前ではなるべくいつも通り振る舞った。

事実を知り、ハグムは正直困惑していた。

ハクタカが女だという事実はハグムにとって大事件であったが、それ以上に、ハクタカが自分を男として好いているという事実が天と地が覆るほどの驚愕のものであったからだ。

そして、ハクタカはこれからも男として生きる、と言った。


(言うつもりがないのなら、私も黙っていればいいのか?いや、それはしかし知ってしまった以上、このままというわけも…)


若き日から仕事に明け暮れ、色恋というものを知らないハグムは、いくら経っても解決しない問答に、頭を悩ますのであった。





出勤の時も役所にいる時も、ひたすらため息をつき、ぼうっとしているハグムを見かねたシバが、ハグムを夜の街の酒場に誘ったのだった。

行かない、と断ったハグムだったがシバに無理矢理連れて来られ、酒場の端で男二人、飲んでいた。


「なあ、見ろよ。色っぺえと思わねえ?」


シバは目の前で他の男の客に酒をつぎ、笑っている女を指差した。

首から肩まで艶やかで滑らかな肌が見え、豊満な胸が服から一部はみ出ている。


「よく見えぬ」


ハグムはその女を一瞥したが、視線を戻し、涼しい顔で酒を飲んだ。


「なあ、ハグムよ」


「ん?」


「おまえ、付いてるか?」


シバは目の前でハグムの股間を指して言った。

その意味を理解したハグムは少し頬を赤く染めて


「何言っているんだ、やめろ」


と、シバの指を叩いた。


「おまえもさあ、もう二十六だぜ?所帯を持てとは言わねぇが、女にもぅちっと、興味もてねぇもんかね」


「君に言われたくないね。所帯を持つ気もないくせに、ふらふらして」


「…ふん、女知らずしてじじいにはなりたくないからな、オムみたいによ」


「……」


黙ったハグムを見て、酔いまかせにオムの名を口走ってしまったことに気づいたシバは、慌てて話題をかえようとハグムに問いかけた。


「おまえ、なんか悩み事でもあんのか。また、ハクタカが〜とかなんとか言うつもりじゃねえだろうな」


「……言わないよ」


ハグムはシバの鋭い一言に一瞬たじろいだが、努めて涼しい顔で答えた。


「じゃあ聞くけどよ、今まで出会った女の中で、四六時中そいつしか考えられなくなったことは、あるか?」


ハグムはぶっ、と口に付けていた酒を吐いた。


まさに、今、ずっと考えている。


今まで出会った女…ハクタカのことを。


「お?おまえ、あるのか!?」


シバはハグムの背中をばん、ばん、と叩いた。


「……ないよ」


(これ以上、ハクタカを思い出させないでくれ)


ハグムは袖で口を拭きながら、シバを睨んだ。


「ちっ。違ったか。おまえが急に変な態度とるもんだから、どこかの女に一目惚れしたのかと」


「一目惚れ…?」


「強烈に、惹かれるってことさ」


ハグムはその言葉を聞いた瞬間、ハクタカにはじめて出会った時を思い出した。

―ある。

あの、漆黒の瞳を見た時。


「いや、まさか」


ハグムは思わず口に出した。


「は?…どういうこった、おまえ!やっぱり一目惚れか?おい、教えろよ、この!」


「……」


シバがあまりにもしつこく聞いてきたので、ハグムは睨みをきかせ、シバの腕を思い切り引っ張り、酒場を後にするのであった。


【チョヴィスキーからのお願い】

小説を読んでいただいて本当にありがとうございます

この小説を読み、少しでも応援していただけたら幸いです…!


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