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隻腕のハクタカ  作者: チョヴィスキー
13/82

前を歩く長い白髪の男の背中は丸く、痩せて見えた。

王宮の議会場<王の側近たちと役所の高官が政について意見する場>から役所に帰る内政部長官の後ろに付き従い、ハグムは歩いていた。

ハグムは目を伏せたまま、無言だった。

王宮の回廊から役所への通路を渡り切ったところで、長官がふと立ち止まり、ため息をついた。


「すまんね、ハグム君」


白眉の、皺が深く刻まれた顔が振り向かれた。


「…いえ。長官殿のせいでは」


ハグムは沈着冷静に答えた。

議会場で答弁されることは表面的なもので、毎度、権力のある一部側近達の腹の探り合いでしかなかった。

彼らは、即位して間もない王や王妃、側室、彼女達の後ろ盾の高官の普段の様子や行動の情報をその場で得ながら、誰のもとにつけば自分の将来が安泰か、笑顔の裏で謀を巡らしていた。

民の政について論じることもあったが、自分達の出世にしか興味のない側近達が提案するものなど、机上の空論であった。


ハグムの目の前にいる初老の男は、二十年以上内政部長官を務めていた。

役所の代表として議会場に出向くものの、気が小さく控えめな彼は側近達に言われるがまま政務を執り行っていた。

三年前、エナン国との休戦が結ばれてからしばらくして、第十五代ヨナ国王は亡くなった。

と同時にハグムが内政部副官に任命され、側近達が混乱に陥っているのに乗じて、ハグムはさまざまな政治改革を行っていった。

側近達は気がそぞろで、民の政治どころではなかったのだ。


この三年で国の情勢は安定していた。

ハグムの多方面の政策のおかげであった。

今までと変わらない姿勢で新たな政策をもたらそうとするハグムに、自身の居場所に根を張り始めた側近達の中の一部には、ハグムの政策について難癖をつけ始める者もいた。

実際今日も、側近達に提案した政策を左大臣に却下されたところであった。


「あの左大臣殿には私も到底頭が上がらん…」


長官はこの三年でハグムに絶大の信頼を置くようになった。

側近達にかけあい、ハグムを議会場に連れてくるのが日課となっていたが、ハグムが新たに作ってきた政策を左大臣に却下される度に、長官は心を痛めるのであった。

いかに有用な政策だと長官が説明しても、左大臣の叱咤で終わるだけであった。


(…長官殿も、苦しいお立場だ)


ハグムは内心、目の前の男に同情していた。

内政部で細々と仕事をしていた自己主張の少ないもの静かな男を長官として任命したのは、他でもない左大臣であった。


「私は、操りやすい人間なのだろう。現に、私は彼に何も言えない」


長官は苦い顔を見せ、言葉を紡いだ。


「……私など、とっくに引退して君に長官になってもらいたいんだがな」


「長官殿……何をおっしゃいます」


ハグムの言葉に、長官はかぶりを振った。


「千里の道も一歩から…。君の政策がすべては通らなくとも、役所でできることもいくらかある。私が協力しよう」


皺くちゃの顔がわずかに微笑んだ。

ハグムも微笑を浮かべ、役所の自室に戻る長官の背に、深く長く、一礼をした。


【チョヴィスキーからのお願い】

小説を読んでいただいてありがとうございます

この小説を読んでいただいて


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「続きどうなるの?」

「応援してるよ!」


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みなさんの応援が、チョヴィスキーが執筆を頑張るための何よりのモチベーションです!

どうぞよろしくお願いします!

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