姉弟の何気ない日常
のんの〜〜 のんの〜〜
のんびり ゴロゴロ 熟睡
贅沢三昧 贅沢三昧
私の天国はここにある〜〜
「姉ちゃん。変な歌を歌わないでくれる?」
「えっ?素敵な歌じゃない」
こんなに耳残る歌はそうそうないと思うのだけど、ルシルはそう思わないみたいで睨み付けてくる。
ルシルは私の弟で、The王子様みたいな見た目をしてるの。金髪碧眼でキラキラとしてて、肌は女性のように真っ白いのよ。
ただ、背が同世代と比べても小柄で童顔だからよく可愛がられてるの。
本人はそれが嫌なのか、男らしくしようと色々と努力してるみたいだけどそれが実を結んでいるとは思えないのよね。
「マジで言ってる?」
「そうだけど?ルシルには分からないみたいね」
「分かるわけないじゃん」
そこまで言う?全くお姉ちゃんに優しくない弟ね。
「はぁ……可愛げがないわ」
もっと素直で可愛い弟だったら良かったのに。どうして私の弟は素直じゃないのかしら。
「可愛げが無くて良いんだよ」
「それ、フィアンセの前でも言える?」
あっ、目を逸らした。
「可愛げが無くて良いとか言っても、好きな人の前では可愛い所を見せたいのね」
思わずニヤついてしまうわ。
「……そんなんじゃない」
「そうかしら?社交界では全く笑わない事で有名なあなたが、フィアンセの前では可愛らしい笑みを見せるって噂なのよ」
「はあ!?」
「知らなかったみたいね。興味が無い事にはとことん興味を示さないからそんな噂が広がってるのよ」
「マジかよ!!くそっ!なんで早く教えてくれなかったんだよ!」
教える義理は無いのだけど、敢えて理由を挙げるなら、
「楽しむ為かしら?」
「はあ!?」
「『何言ってんだこいつ』と言いたげね」
「……そうだよ。何で分かったんだよ」
私に言い当てられて不服そうな表情も可愛けど、言ったら絶対に怒るわね。
「分かりやすいのよ、ルシルは。もっとポーカーフェイスを鍛えなくちゃ」
「姉ちゃんにだけは言われたくない!!」
「むっ!何よそれ!私がポーカーフェイスできてないと言うの!?」
「そうだよ!そう言ってんじゃん!!姉ちゃんが考えてる事なんて表情見たら誰だって分かるぐらいバレバレだからな!?」
「嘘よ!!レィルからは完璧だってお墨付きをもらってるのよ!?」
私の婚約者のレィルは大人顔負け、それどころか誰も出来ない!ってぐらい喜怒哀楽の使い分けが上手いの!!
そのレィルが完璧だって言うんだから完璧なのよ!!
「はぁ……姉ちゃんって、好きな人の前になるとバカになるよね」
「なんですって?」
私がいつ、バカになったというの?
「これ言っても無駄だから気になるんだったら婚約者に聞いてみなよ。俺は疲れたから部屋に戻る」
「待って!ちゃんと答えてから戻りなさい!!」
答えを聞かないまま帰す訳には行かない!!
私は逃げようとするルシルを追い掛けるのだった。