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「煮える女2」の②
私の「猫千里耳」をもってすれば、如何なる些細な囁きも聞き逃すことはない。
「また泣かされたらしいよ、」
此処は中国、話しているのは西太后の侍女のようだ。私の聴力は現在から過去の声も捕らえる事が出来る。
「可哀そうに、あそこまで追い詰めなくてもイイのに、」
西太后は侍女の落度が許せない、いつもの煮える女が出たようだ。
「だってね、お気に入りの茶器で御茶をさしあげたら、持ち方が悪いって、それから始まったらしい、」(年長の侍女1)
「何も泣くまで責めなくても良いのに、」(若い侍女)
「あの人、有名な茶人に茶事を習って、師範だって威張っていたもの、」(年長の侍女2)
「昨日、西太后様が侍女部屋に突然現れて、びっくりよ、皆んなの空気が凍りついた、」(若い侍女)
「そう、何を言われるか分かったものじゃない、」(年長の侍女1)
「触らぬ神に祟りなし、くわばらくわばら」(年長の侍女2)