第6話 勇者は幸せな夢を見るようです
――それは、過去の夢。
とある山奥の家。アステルはとある少女と二人暮らしをしていた過去を思い起こす。
『アステル、この問題、教えて』
『どれ、何が判らないんだ? 見せてみろ』
『これ、《子供の作り方》って部分がよく判らなくて』
『どうして俺がそんな過激なことを教えないとならないんだ! もっと常識的な質問をしろ!』
『お前は常識が欠けているから、日常用語を覚えろって言ったのはアステル』
『嘘つけよ! お前、いつも俺が言葉に困るやつばっか聞いてくるだろが!』
『だってそういう日常用語、なんにも判らなくて』
『嘘つきが、お前絶対判ってて俺に聞いてくるよな? 反応が楽しくて遊んでるよな!』
『何のことかわからなーい』
『目ぇ逸らすな、図星だろう貴様、ステラぁ!』
『おいステラ……これは一体なんだ?』
『泡風呂。アステルと一緒に入ろうと思った』
『どうして男用の風呂場に入ろうと思った。あと俺とお前は年頃だ、そんな破廉恥な真似したら逮捕される!』
『大丈夫、見張りは気絶させた。野生児の忍び足と気絶スキルはアサシン並み』
『やめろ、公共の場で物騒なことをするんじゃない』
『背中流すよ? マッサージで気持ちよくしてあげる。だからこっち来て、アステル』
『待てこら周りが見ているだろう、友達とか……っ』
『え、友達いないのに?』
『やかましいわ!』
――彼女との日常は、賑やかで、破茶滅茶で。
それでも、幸せな光景だった。
今はもう見れない景色だが、アステルはあの輝かしい日々を忘れない。
伏線の回です。
後に必要なシーンとなるため入れました。
次回、またコメディパートとなります。