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幕間   冒険者は邪悪なものに襲われる

 ――《冒険者》。

 それは特別な加護を貰い、超常の力を宿した人々のことだ。

 通常、人は炎も氷も生み出せない。身体能力も低く、魔物にも敵わない。しかしギルドで《クラス》を得て修練することで、飛躍的に強くなれる。


 肉体を鋼より頑強にし、武技も卓越している――《戦士》、《剣士》、《拳闘士》。

 各魔術に秀で、多用な術で相手を圧倒する――《魔術師》、《召喚師》、《治療師》

 そして《魔獣使い》や《踊り娘》、《吟遊詩人》――など特殊な冒険者。


 その数は多様。幾多の人々が魔物を打ち倒すためその身に力を宿す。

 冒険者たちは徒党パーティを組み、多くの情報を集め、日々を戦いに費やす。


 アステルが勘違いで衛兵と店員に感謝の品を貰った三日後。

 その日も、《赤鐘の閃団》と呼ばれる冒険者パーティが、とある平原を冒険していた。


「最近、魔物の数が増えてきたよなぁ」

「そうそう。東のキーレル山脈では《幹部》が出たって言うし、南のサンリエド街道には要塞が建てられたらしいな」

「西には《獣王ゲーリッヒ》なんていう大物も出たって噂だ。ほんと、物騒な世の中になったよな」


 見渡す限りの草原で、それでも辺りを警戒しつつ語っていく。


「物騒と言えばさ……聞いたか? ドミール渓谷の話」

「ああ、知ってる。五十人の大パーティが一瞬で壊滅したって噂だろ?」

「情報屋によれば、やったのは魔族の幹部で、『捻じくれた黒角』に、『四枚ある黒い翼』持つ大悪魔らしい」

「マジかよ。五十人を一瞬で壊滅とか冗談だろ? 話盛ったんじゃないか?」

「それが……そうでもないらしいんだよ。複数の情報屋でささやかれていて……」


 ムードメーカーの青年が笑った。


「はは、それが本当なら、俺たちも気をつけなくちゃならないな」


 参謀役の壮年が軽い声音で語る。


「そうだな……だが無視しても問題あるまい。件のドミール渓谷からここまでは三〇〇〇キロはある。数日でそこまでたどり着くのは不可能だ」

「違えねえ、違えねえ!」


 パーティの面々は思い思いの顔で笑って受け流す。

 冒険者とは過酷な職業だ。けれどあまり気を張りすぎてもいけない。


 彼らはやがて一刻ほど歩いた。

 しかし――しばらく草原を歩いているうち――。


「……なあ、さっきから全然虫も鳥も姿を見せないんだけど」

「そうだな、この辺りは鷺や紋白蝶で有名なはずだよな?」

「風もやけに重いって言うか、ねっとりしてるし……なあ、一度探索した方が良くないか?」

「判った。《感知》の魔術で敵反応があるか調べてみる――え?」


 魔物の感知には特別な道具が必要――けれど瞬間、斥候シーフの少年は目を疑った。

 手に持った索敵用の魔術具を見て、青ざめた様子で凍りつく。


「おい、どうした。そんな真っ青な顔して」

「――う、うし、後ろ……っ!」


 シーフの少年は焦燥を浮かべた顔で呟く。仲間の目が、恐る恐る背後へと向けられる。

 そこには――。


 捻じくれた鋭い黒角。

 黒く突起に覆われた巨体。

 その肉体の至る所に紅い紋様。

 雄々しい尻尾に四枚翼を生やした――禍々しい『何者か』が居た。


「ま、まさか……っ!?」

「魔力量が膨大過ぎる! いつからここに……!?」

「待て! 捻じくれた黒角に四枚の黒翼、それにこの魔力――まさか!?」


 リーダーの青年は呆然と呟いた。


「その紅い紋様……文献で見たことがある。魔族の中で最上位の者に表れる、こいつは」


 仲間の長剣使いが、槍使いが、拳闘士が、一斉に踊りかかった直後。


「ま、間違いない! 黒い角に紅い紋様――ま、《魔お――」


 瞬間、猛烈な爆発が彼らを襲った。大地に盛大な炸裂音が響き、巨大なクレーターが出来上がる。


 その日、一つのパーティが壊滅的な被害に遭った。

 その襲撃者の行方は、誰も把握出来なかった。



お読み頂き、ありがとうございます。

内容としては後々の話へ繋がる『伏線』の回となります。


本編に入れようか大分迷いましたが、話の都合上どうしても要ると思い、入れました。

次回は再びコメディとなります。


更新は今日、20時くらいを予定しています。

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