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勇者撃沈  作者: 丁太郎
9/10

09 勇者 vs 筋肉、勇者vs聖女Round4

今回は2本立て

 勇者一行は新たに『筋肉』を仲間にした。

 旅は順調に進み、赤の魔王、青の魔王、黄の魔王を打ち破った。




「残り2人の魔王を倒したらいよいよ大魔王との決戦に挑める」


「そのようだな」


 今、私は『筋肉』ことボマーと朝のトレーニングをしている。

 この男の指導の元、私の体は以前より引き締まり、パワーアップしていた。

 流石筋肉のスペシャリストというころか。

 それに筋肉スキル『マッスルアーマー』は、物理攻撃どころか魔法でもびくともしない。

 問題があるとすれば、発動に変なポージングが必要な事くらいか。

 ボマーがタンク役を引き受けてくれるようになり、パーティーの戦術の幅が広がった。

 アリシアへの危険がぐっと減ったのは実に嬉しい事だ。

 それにボマーには武器も防具も必要ない。

 筋肉こそが武器で有り、防具だからだ。


「聖女様に感謝すべきだな」


 ボマーも名前で呼ばない主義だった。

 お陰で行く先々で目立って仕方がない。


「ああ、アリシアのお陰だ」


 アリシアの提案が無かったらここまで順調にはいかなかっただろう。

 毎朝のコーチ付トレーニングにより、私は攻守共に格段に強くなった。

 最初は内心どうかと思ったが今は大賛成だ。


「さて」


 きた! トレーニングはいいのだが、これは未だに慣れない。


「では脱いでくれ」


「あ、ああ 今日もか?」


「当たり前だ!折角の筋肉が間違った方向に育ってしまうと矯正が大変だからな。勇者の場合はパワーと敏捷性、両方のバランスが重要なのだよ」


「そ、そうか、そうだな」


 仕方がなく服を脱ぎパンツ1枚になる。

 ボマーは私の前で仁王立ちし、じっと見つめてくる。

 1分程だろうか?その間、精神ダメージが蓄積されていく。


「ふむ、なるほど」


 そう呟き、ボマーは次に私の体を触りだした。

 私の精神ダメージはガンガン蓄積されて行く。

 この間、珍しく早起きしてきたマリーにこのシーンを見られ、誤解を解くのに大変苦労したのだ。


「よしよし、順調 順調」


「そうか、もういいだろうか」


 私は早くこの拷問から開放されたい一心だった。


「いや、今日は最後に私と同じポーズを取ってくれ」


「それは流石に」


「恥ずかしがるな!これは重要なことだ」


「いや、しかし…」


「ふむ、仕方ないな。無理にでも従って貰うぞ!スキル『筋肉共鳴』!」


「な!」


 ボマーのスキルの発動と同時に私の体が言うことを聞かなくなり、ボマーの体の動きを勝手に真似ていく。


「ふふふ、俺は相手の筋肉の波長に共鳴する波長を流し、俺の筋肉と同じ動きになる様操る事が出来るのだよ」


「なんて事を!」


「無駄だ!俺が解くまで解除は出来ん!」


 ボマーのポージングを真似て次々ポージングを取ってしまう私。


「ゆ、勇者様?」


「え? アリシア?」


 ポージングを取っている私は背後のアリシアの方を向くことができない。


「勇者!トレーニング中だ!集中しろ!」


「勇者様……勇者様がそっちの道に!」


「アリシア、待ってくれ!」


 アリシアが走って行ってしまう。

 私がボマーから開放されたのはそれから30分後の事だった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



Winner:筋肉


決まり手:セクハラ的指導法


勇者はその後聖女の誤解を解くのにかなり時間がかかったと言う。



===============



 勇者一行はその後ピンクの魔王、どどめ色の魔王を下し、更に魔王が封じていた勇者の剣を手に入れたのだった。



「わたし思うんです」


 ここはとある町の宿屋に併設された…以下略。

 アリシアが私達に提案するのはめったに無いことだ。

 一見突拍子のない提案をしてくるが、従ってみると上手く回っていく。

 これもスキル『聖女の啓示』の効果だろうか?


「どうしたアリシア?」


「もう私達はベストだと思っていたのですが、まだ私達に足りないものがあることに気づいてしまったのです」


「お姉ちゃんの言う足りないものって?」


「僕たちは流石に完成されていると思うけどね」


「うむ、これ以上の筋肉の高みを目指すには時間がかかるな」


「勇者様の持つ『勇者の剣』って伝説の武器ですよね」


「そのようだな、アリシアが贈ってくれた剣も素晴らしかったが

 この剣はそれ以上だ」


「『勇者の剣』があるなら『聖女の衣』とかあってもいいと思うんです」


「それなら『賢者の杖』とか『賢者の魔導書』とかあってもいいね」


「美しい僕にふさわしい『美しい剣聖の剣』もありそうだね」


「ふむ俺には武器は要らないが『伝説のダンベル』があってもいいな」


「だから皆の伝説の武器を探しませんか?」


「急がば回れ、か」


「はい!勇者様」


「情報が欲しいところだな。闇雲に動きたくは無い。こうしている間にも苦しめられている人々がいる」


「それはそうですけど……ダメですか?」


 子犬の様な目でこちらを見るアリシア。

 ああ、もうこの目で見られたらダメだ。

 元々反対では無い。

 効率良く行きたいだけなのだ。


「ダメじゃないさ!大魔王に挑むんだ。失敗は許されない。強化出来るなら是非したい」


「勇者様そうですよね!勇者様ならそう言うと思ってコレを買ったんです」


 アリシアはそう言って私達の前に一冊の本を置いた。


「お姉ちゃん、この本は日記みたいだけど?」


 手にとってパラパラめくるマリーも疑問のようだ。

 アリシアはにっこり微笑んでいる。


「これは先代聖女様の日記です。たまたま寄った古本屋で見つけたんです」


 そういうアリシアは凄く嬉しそうだ。

 怪しいなそれ、とは言い難い。

 皆も同じ思いのようだ。


「それでその日記は伝説の武器に関係あるのか?」


「はい!勇者様。前回の魔王と先代勇者様が相打ちになった後、いずれまた復活するだろう魔王に備えてメンバーの持つ神代の武器をある洞窟に封印したと書いてあります。その洞窟のある場所を示す地図までついているんですよ。凄いです!」


 興奮気味のアリシア。

 だが流石にそれを信じるのは難しい。

 何処かの神殿で秘蔵されていたなら兎も角、古本屋で売っていたというのがなんとも。


 さすがにそれを信じるのは厳しいと言おうとした時、凄い血相でルイがやって来た。

 まさか、このパターンは!?


「レオンさん。大変、また口座が凄い赤字に!」


 やっぱり!!


「あー、アリシアその日記いくらしたんだ?」


「これは本当は非売品だったんです。どうしても手に入れないとと思ったので、交渉して…」


 アリシアは突然私に近づき、耳元で金額を囁いた。

 耳元で囁かれる嬉しさも一瞬で消し飛ぶ金額だった。

 一気に青ざめた。


「大丈夫です。勇者様!ここの洞窟に行けば一気に元が取れますよ」


 と、アリシアはニッコリと微笑んだ。




ーーーーーーーーーーーーーーー



Winner:聖女


決まり手:聖女の暴走&聖女の肝っ玉


彼女の暴走は勇者では止められない!

次回最終回

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