第1話 デアイモノガタリ
あれは確か俺が高2だった頃の夏休み前。
俺は高校時代友達なんてものいたものがなかった。
だからその日も俺は1人で朝、学校に向かってた。
当時の俺の家、今では実家である場所から俺が通ってた高校との間には長くて傾斜が急な坂道があったんだけどね、春になると桜が落ちて、その桜が街灯の光に反射して少し光るんだ。
その光景を見たどこかのロマンチストはその坂道を
『天の坂』って呼んだんだ。
話を戻すけど、そんな天の坂を1人で歩いて下りながら登校してたら向こう側から同じ制服を着た女子生徒が上がって来たんだ。
リボンの色が青だったからきっと3年生だったはずだ。
何か忘れ物でもしてそれを取りに行こうとしてんだろうな、なんて俺は思ってたんだけどその人はなぜか泣いてたんだ。だから俺は堪らず声をかけたんだよ。
「あの、大丈夫ですか?」ってね。
そしたらその人は驚いたような瞳をして
俺を見たんだ。
その瞬間、俺は恋に落ちたんだ。
あんな思いしたのは初めてだった。
一気に鼓動が激しくなって、緊張してなんだか息をしづらくなったのを今でも覚えてるよ。
そして、「あぁ。これが恋なのか。」なんて思ったんだ。
でも次の瞬間その人がとった行動のせいで、
俺の鼓動はもっと激しくなったんだ。
何されたと思う?
急に抱きついて着て声をあげながら泣き始めたんだよ。それはもう小さい子のようにね。
あの頃の普通の状態の僕だったら
「うざい、気持ち悪い」
とかいって冷たく突き放してだろうけど、
その時俺がとった行動はその人の頭を撫でる、って
ことだった。
それからしばらくしてその人が泣き止んだ後に名前を聞いたんだ。
宮野有紗。彼女の名前は宮野有紗ということがわかった。
聞いたことがあった。
うちの学校のアイドルのような存在。
それが彼女だったんだ。
え?
なぜ名前を聞くまでわかんなかったのか、だって?
そんなの俺が今まで興味なかったからな決まってるじゃないか。
ああ。また話がずれそうになってしまったね。
君と話してるとなんだか調子が狂うなぁ。
まぁいいか。
その後俺はその宮野先輩を家まで送ってからうちに帰った。
でも俺はその日の日付が変わる前にまた宮野先輩と会うことになったんだよ。
それはね…
この話の続きは喫茶店にでも入ってからしようか。
どうも天気が怪しくなってきた。