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1_貴族には触れてはならない

初投稿です。お見苦しいところもあるかとおもいますが、生暖かい目で見ていただけるとありがたいです。

王都から馬車で2日程かかる辺境の地、グレイフォレスト領。

他の領地と違うところは3つ。


・ほんのちょっぴり田舎なこと

・めったにいないはずの聖獣が住んでいること

・とてもかわいい自慢の娘がいること


「だからどうだい?執事研修校を卒業したことだし、君に僕の領地に来て仕事をして欲しいのだけれど?」

のどかだし、オススメな職場だよ?そう言うと人のよさそうな笑顔で3本指を立てながら、にっこり自領をアピールしてきたグレイフォレスト領主にアルフォンスは驚いた。


やっと苦難の連続だった3年間の研修を終え、めでたく卒業を迎えた日に突然目の前に現れた辺境伯。

貴族名鑑は執事研修時にガッツリ覚えさせられたが、グレイフォレスト領主は名鑑を見なくても狩猟禁止である聖獣の皮で作られたマントを羽織っているので平民貴族にかかわらず見れば誰しもがわかるのだ。

土地神に等しい聖獣が跋扈(ばっこ)する特殊な地、グレイフォレスト

そんな特殊な土地の領主が一体いつどこで自分を知ったのか、今まで接点などまるでないのに・・・。


アルフォンスは慎重に相手を伺いながら、人違いもあるかもしれないので念のため名乗りを上げることにした。


「はじめまして、領主様。僕の名前は――」

「知ってるよー。アルフォンス・リー君。並み居る貴族を抑えての主席卒業おめでとう!」


なぜかにこやかに笑って気さくに声をかけてくる。

どうやら人違いではなさそうだ。


「領地にとのことですが、私は平民です。それでも良いのですか?」


そうこの世には生まれながらあるのだ、ランクというものが。

通常どんな仕事でも平民は平民、貴族は貴族間で人事が動くのが通例である。

貴族の前では平民は塵に等しい。

それほど貴族と平民の壁は厚い。

この壁がどんなに分厚く高くそびえているかは3年間、身体ともに叩き込まれ否が応でも学んだことだ。

なにが逆鱗に触れるかわからないのだ。

いつ爆発するかわからない爆弾と同じ、君子危うきに近寄らず、貴族との無用な接点は避けたい。


「もちろん、問題ない。僕の大事なお姫様(むすめ)の執事にと思ったから、君の生い立ちから今に至るまで全て調べつくした。君、貴族が一番嫌いだろ?」

「いと高き世界にお住まいの方々に対しそんな恐れ多い思いは抱いておりません」


そんな小難しい事言わずに正直になっていいのに・・・と領主はポソリと(つぶや)くと顔から笑みを消し


「直感ではあるけども、僕は君がいいと思った。もちろん強制はしない。お姫様に会って決めてもらってもいい」

「お嬢様が私を嫌だと言ったらどうするのですか?」

「うーん、ないとは思うけどねぇ。僕の直感はこれでも外れたことが今までないんだ。

でも、もしもの時は僕が責任もって他の職場をさがしてあげるよ!」


と、とんでもないことをサラリと言い出した。

 

直感というあやふやな話ではあるが、溺愛している娘の執事にと自分をなぜこんなに高く評価してくれているんだろう。

確かに主席卒業ではあるがあくまでも『執事見習い』

『執事』という資格が手にはいるには早くても後5年程はかかるのだ。


「あの、差し出がましいとは存じますが手っ取り早く執事を雇ったほうがいいのではないですか?それに私はすでに卒業後の職場は決まっているのですが・・・」


そう自分は王都の豪商に執事見習いとして入ることがすでに決まっている。

もともと貴族に雇われる事を考えてはいなかったし、卒業が決まっているのにこれから職探しなんてことはない。


ほうほう、職場が・・・それは困ったねーと領主は言いつつ、まったく困ってなさそうに近くに居る男性を呼ぶと


「ねぇ、執事長。この件はどうなっている?」


首を傾げてにっこり笑って初老の男性に質問しているが、その視線は氷のように冷たい。


「もちろんその情報は手に入れておりましたので、内定は取り消しになるよう手配させていただきました。豪商の方には私の師弟をアルフォンス様の代わりに配属させました」

「よろしい、さすがは僕の執事だ」


ね、仕事が早いだろう?とこれ見よがしに言ってきた。


知らぬ間に自分は職を失っていたらしい。

軽くショックを受けつつ相手は貴族とわかっていながら少し恨みがましく言ってしまう。


「・・・さきほど強制はしないとおっしゃってたじゃありませんか」

「んー僕はワガママだからさ。君が領地に来ることに首を振らない限りは引かないよ。大丈夫ダメだったらさっきも言ったとおりちゃんと良い職場みつけてあげるから」


たぶん自力で別の職場を見つけてきても先回りで潰されるであろうことはわかった。

であれば素直に領地に行ってお嬢様に会おう。ここでうだうだ言っても先に進めないのでは仕方がない。

いままで不確定なことがないように先々の予定をしっかり立てつつ生きてきたのになぜこうなったか。

叩いて渡るはずの橋の先が見えないのは不安でしかないがここは潔く諦めよう。たぶん逃げられない。


「わかりました。グレイフォレストに向かいます」

「歓迎するよ。アルフォンス君」


とても上機嫌に笑う領主様を見て『だから貴族はキライなんだ』と改めて思ったアルフォンスだった。


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