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TwitterSS集⑥
『唯一の絶対条件』
ギュルトナ―元帥夫妻の邸宅に訪問するには1つの必須条件があった。
「つかぬことを尋ねるが、君は猫が好きか嫌いか、どちらかね??」
もしも「嫌い、苦手」と答えた場合、玄関より先に進むことは許されない。
なぜなら、二匹の子猫が四六時中屋敷内で大運動会を繰り広げているし、運動音痴な先住猫がいつ何時高い場所から頭上に落ちてくるのか、皆目見当がつかないからだ。
かくいうリヒャルト自身、何度廊下を走り回るマリ―とシュテファニ―を踏みそうになったり、本棚の上から落ちてきたルドルフに顔面にしがみつかれたことか。
「なぜ暗殺者の襲撃は躱せるのに、猫達の行動は予測できないのですか」
「それが分かるなら苦労はしないよ」
だから、彼は今日も尋ねる。
「君は猫が好きか嫌いか、どちらかね」と。
(終)




