君と夜、
ドアを開ける。
深夜0時、部屋は少し冷えているようだ。
僕はコーンスープをのせたトレイを掲げ、するりと君の部屋へ入る。
静かに、君は眠っている。
昼間受けた傷は癒えたのだろうか?
君の寝顔からはわからない。
肩まで布団をかけなおす。
すると
君は小さく声をあげ、ゆっくり目を開けた。
起こしてしまったようだ。
僕は両手を合わせて、”ごめん”の仕草をする。
君は首を振って小さく笑った。
「…あ、スープ。」
作ったんだけど、と口にしかけて、
今起きたばっかりの人に言うことかそれ?
と自分に疑問符。
でも、君はくすくす笑ってる。
多分感情の動きが、ダイレクトに顔に出ているんだろう。
束の間の、密やかな優しい笑い声の後。
「あ!」
君は急にはね起きて
「宿題忘れてたよ!」
そう言っておでこに手を当てた。
セーフ。
小さく野球の審判のまねをする僕を笑いながら、
君はリュックから教科書と筆記用具を取りだした。
「ほんとにセーフだ」
君はくすくす笑い続ける。
「私の得意な漢字の書き取りだし。」
うん。
「今からだったら、まだ少し余裕あるし。」
そうだね。
君はシャープペンを持って――
「誰かさんの作ってくれたスープもあるし?」
頷く僕を見る。
「ありがとね」
俯く。
恥ずかしいなあ。
たった一言に対して、
何も言えないなんて…ね。
「おや?聞こえていますか?
応答せよ~」
知ってて絡む君。
僕は苦笑。
君がノートに書きつける音。
時々手を止めてスープをすする音。
小さな小さな声で、片手間に口ずさむ歌。
夜を満たす。
空気を震わせて、君がいるって確かな手ごたえ。
ふるわせ続けてほしいな。
これからも。
無力な僕の代わりに。
僕は
それを集めて。
いつか。
秘めた思いで
見つめる背中。
どれほど傷つこうとも、
強い、優しいその背中へ。
初投稿です。
お目汚しすみません。
今後も書き続けたいので、評価を頂けると
大変うれしいです。