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コスプレカフェを始めたら学園の三大美女が性癖を曝け出してやって来たんだけども  作者: すずと


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第29話 色葉、出ます

 体育祭も終わり、少し浮ついた日常はすっかり元の日常に戻っていた。


 いや、元に戻ったというと少し語弊があるのかもしれない。


「……?」


 カフェふりーでの仕事中、『きのう雇用したメイドがやばい』、『あなたは冥土様ですね』の勝手にダブルコスプレとなってしまっている雪村佳純と目が合ってしまう。


 咄嗟に目を逸らしてしまうと、少し拗ねたような、それでいて少し怒った様子でこちらに駆け寄って来るメイドさん。


 そのまま俺の耳元に顔を近づけてくる。


「今日は名前を呼んでくれないの?」


「──!?」


 彼女の澄んだ声が耳に。一生懸命働いている匂いが鼻へ。それらが一気に脳に響いてくる。つうか、この子が俺の匂い嗅ぎまくるから、俺も匂いに敏感になっちまってんだけども。なんか最近距離近いんだよな、この子。


「ふふ。顔、真っ赤だよ。お猿さんみたい。うききー」


 なんで魔王みたいな変態なのに、今回は小悪魔みたいに可愛いんだよ、ちくしょう。でも、からかわれて少し嬉しい俺もいる……。いやいや、ドMは月影さんの専売特許。つうか、こんな美少女がメイド服着て良い匂い放ちながら来たら嬉しいだろうが。だから俺は決してMじゃない。これは正常なんだ。


『すみませーん』


 そんな葛藤の最中、お客さんから呼ばれる。基本的に今回のイベントはメイドが中心だから、彼女の手が空いているのなら彼女が行くようになっている。


「はーい、すぐにお伺いいたしまーす。ご主人様☆」


「セリフだけ聞くとコスプレというよりメイドになってるな、佳純」


 つい思ったことを口に出してしまうと、ピクッと彼女の耳が動いた気がした。そのまま振り返った顔は先程とは打って変わって嬉しそうである。


「だったら自由くん専属のメイドになってあげようか?」


 覗き込むように上目遣いで言われて頷きなりそうになるのをなんとか耐えた。


「冗談でもやめてくれ。佳純みたいな子が俺の専属メイドになろうもんなら、学園の男子達から一生睨まれる」


「冗談じゃないのに」


 そんな言葉に揺らぎそうになるが、なんとか自我を保って返してやる。


「どうせ、『専属メイドの特権で匂いを嗅がせてー』とかぬかすんだろ?」


「だから、そんなものなくても自由くんの匂いは嗅ぎ放題だよ?」


「嗅ぎ放題じゃないから!!」


「くんくん──♡ はぁぁん♡♡ やる気出りゅゅ♡♡ 自由くんの汗だくおいにー……控えめにいってさいこー♡♡」


「さっさと注文に行けっ!!」


「りょーかい♡」


 とろけた顔して調子良く敬礼一つしてから接客に行った。仕事中に匂い嗅ぐとかやばいな、あいつ。でも、そんなことをされて悪くないとか思ってる自分がいるのもやばいよな。



「三人共お疲れ様。ちょっと良いかな」


 本日のカフェふりーの営業も終了。クローズ作業をしていた俺達従業員を、店長である親父が作業の手を止めるように指示し、4人テーブル席に座るように促す。


 指示に従い、テーブル席に腰を下ろした俺達。親父の視線は佳純に向いていた。


「まずは、雪村さん」


「はい」


 いきなり名前を呼ばれて、ビクッと反射的に背筋を伸ばす佳純は、真面目な顔をして次の親父の言葉を待つ。


「今回のイベントである、『きのう雇用したメイドがやばい』、『あなたは冥土様ですね』のコスプレをしてくれてありがとう。新人なのに即戦力になってくれて本当に助かったよ」


 頭を下げて礼を言う親父に、パタパタと手を振る佳純。


「いえいえ、そんなそんな。私はただ楽しく働いていただけで、お礼を言われるようなことは何一つありません」


 彼女の返答に親父は顔をあげて、中年とは思えない爽やかな笑顔を見した。


「だったらWin-Winだね。最高の結果だ」


 そう言ったあとに、少しだけ申し訳なさそうな顔をする。


「ただ、ウチの方針としてはずっと同じコスプレをしないことにしているんだよ。だから、そろそろ今回のイベントを終わらせて次のコスプレに進もうと思うんだ。今回のが気に入ってたらごめんね」


「いつまでも同じだったらお客さんも飽きるだろうし、次のコスプレというのは理に適っていると思います」


 話のわかるド変態は、メイド服を軽く摘んで苦笑いを浮かべる。


「このメイド服が着れないのは少し悲しい気持ちになりますけどね」


「いやいや。定期的に過去にやったのもやろうと思ってるから大丈夫だよ」


「そうなんですね」


 手を合わせて少し嬉しそうな顔をする佳純は、俺の耳元でコソっと言ってくる。


「まだ専属メイドのチャンスはあるってさ♡」


「ちょ!?」


 働いた後の彼女の吐息混じりの声は俺の全身をこそばゆい感覚に包んでくる。


「ふふ、ビクッってなった。ビクッて」


 この子、めっちゃからかってくるやん。


「さ、さぁて!! 次回のコスプレは!!」


 唐突に色葉が大きな声を出すもんだから、三人揃って色葉の方を見た。


 普段なら6つの目に見られたらきょどる色葉だが、今日に限ってはその限りではなかった。


「色葉です。最近幼馴染がマゾになって困惑しとるとです。そんなわけで幼馴染をサドに戻そう思うとです」


 なんで日曜日6時半なアニメの次回予告風な喋り方をしているのだろうか。いや、そんなもんどうでもいいわ。俺、幼馴染様からマゾ宣告されてんだけども!? つうか、そもそもサドでもないわっ!! ロロックのせいでそう思われてるだけだからっ!!


「というわけで、次回のコスプレは、『俺の同級生が妹なわけがない』でお送りします」


「同級生? 妹?」


 佳純が首を捻って?マークを出している。俺も詳しいわけじゃないから、いつも通りに色葉に尋ねる。


「流行ってたアニメだから名前だけは知ってるが、どういうアニメなんだ?」


 色葉がわざとらしく、コホンなんて咳払いをしながら毎度お馴染みの概要を語ってくれる。


「平凡な高校生の高崎幸助たかさきこうすけとリア充爆発で学園生活を過ごしている同級生の髙木莉乃たかきりのが両親の再婚で兄妹になる。莉乃はリア充爆発生活を過ごしているんだけど、エロゲーが超大好きという秘密があった。それを受け止めた幸助に心を開いていって、人生相談として親密になっていくラブコメ」


「エロゲーって……」


 ちらりと佳純の方を見ると、親指を突き立ててグッジョブとしていた。


「大丈夫。『ふぁいと』も元々はどちゃくそエロゲーだったから、耐性あるよ」


 流石は変態のラスボス様。エロゲー如きでは揺るぎもしない。


「佳純に耐性があるなら、次回も佳純に任せて──」


「今回は色葉がヒロインをやります!!」


 立ち上がって宣伝する色葉からは強い意志を感じるが……。


「でも、その設定なら佳純の方が良いんじゃないか?」


「雪村さんにはとっておきを用意しているから」


「とっておき……なにそれ、超楽しみなんだけど」


 佳純はどうやらとっておきという言葉に興味津々な様子だ。まんまと色葉の手のひらで踊らされている感が否めないが、本人が良いなら良いとしよう。


「だったら今回は色葉直々のご登場ってわけだな」


「色葉、出ます」


 なんかロボットもののアニメのパイロットみたいなセリフだな。


「よし、まとまったね」


 ここでずっと黙っていた親父が、パンっと手を叩いた。


 親父が発言しないのはコスプレ案は俺達、特に色葉に一任してあるからだ。だが、あくまで決定権は親父にあるため、最後は親父がしめてくれる。


「次回は、『俺の同級生が妹なわけがない』のコスプレで決定だね」


 そんなわけで、次回のカフェふりーのコスプレ案が決定した。


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