第11話 二刀流だよ、おれ
「降井くん」
おいおい。勘弁してくれよ。
学園の三大美女が一人、司会者系美少女、ギャル担当との話し合いが終わったと思って教室に戻ったら、クールビューティー担当が俺の席に座って待機してやがったんだが。
長い脚を組んでまさに仕事ができるキャリアウーマンみたいに座ってやがりますよ。
「そこ、俺の席なんだけど」
「有紗となに話してた?」
「なにって……そりゃ……」
彼女の問いに意味深に顔を背けてしまう。
水瀬さんがばぶみたっぷりしょたコンってのは喋ってはならない。特に、仲の良い月影さんには知られたくないだろう。
「色々、だ」
苦しい言い訳に月影さんは脚を組み替え、目を細めた。
「怪しい……」
「べ、別に、水瀬さんがクラスメイトの男子と喋るなんて不思議なこっちゃねぇだろ。ほら」
教室内では、先に戻っていた水瀬さんが陽キャ一軍男子と談笑しているのが伺えた。
「有紗は男の子とも普段喋る。でも、降井くんとはあまり喋っているところを目撃していない。つまり、ここ最近で二人の仲でなにかあったとしか考えられない」
「相変わらずの名探偵だな」
「ふっ……それほどでもある」
この子、名探偵って言われるの好きだな、おい。
「以上のことを踏まえて、降井くんが私の秘密を喋った可能性がある。よって処す」
「は?」
「処刑方法は様々。色々な処刑法がある。好きなものを選んでね」
「待て待て待て。今の流れから処刑になる意味がわからない」
「疑わしきは罰せよ。これ名言」
「待てっての」
「処刑方法は以下の通り。まず──」
相変わらず話を聞かないな、このクールビューティー担当様は。
仕方ない。周りをチラッと見てたから、こちらに注目されていないのを確認して、コソッと彼女の耳に顔を近付ける。
「これ以上俺の話を聞かないのならお仕置きしてやるぞ、あやめ(ロロック風味のボイス)」
「……!?」
どうやらロロックボイスは月影さんに効果抜群みたいだ。彼女は淡々と口に出していた言葉をすぐに引っ込める。
黙らすことには成功したが、顔がクールビューティーではなくなってきている。しかし、普通に話しても聞いてくれないだろうから、そのままロロックボイスを継続してやる。
「俺がなにも言っていないと言えば言っていない。違うか?」
「ぶ、ひぃ♡ しょ、しょうれふ♡ ロロック様がそう言うならその通りれふ♡」
おいおい。思ってるより効果抜群だな。
「お前は黙って俺を信じていろ。わかったな」
「は、はいぃ♡ ロロック様を信じまふー♡ 少しでも疑ったあやめに罰をくだひゃいい♡♡」
「黙れ、この雌豚めっ」
「ひゃん♡♡♡」
「罰は俺が決める。お前は黙ってろ」
「ああん♡♡ さいこーれふ♡♡」
学校で雌豚発動させてるけど、大丈夫なのか、この子。
「彩芽」
目の前でクールビューティー担当が悶えていると、ふと、耳に心地良い声で月影さんを呼ぶ声が聞こえてくる。
「どうしたの? 降井くんの席なんて陣取って」
天使でも現れたかのように、可憐で、清楚な美少女が俺の隣に立つ。なんだか、もの凄く良い匂いがその場に香る。
ストレートで肩下くらいの長さの清潔感のある髪をした美少女、雪村佳純。物腰柔らかい態度で話の流れをまとめるファシリテーター系美少女。清楚担当だ。
「べ、別に」
いつの間にか雌豚モードからクールビューティーモードに切り替わっていた月影彩芽。いや、脚がピクピクしてるからかろうじて正気を保っているだけか。少し囁けば雌豚に逆戻りになる綱渡り状態ってか。
「降井くんが自分の席に座れなくて困っているからどいてあげなさい。ね、降井くん」
「あ、ああ」
「……わかった」
雪村佳純の言葉を素直に受け止めると、月影は俺の席から立ち上がる。
「ごめんなさい、降井くん。友人として謝るわね」
「いやいや。雪村さんは悪くないんだから、謝る必要はないよ」
「それでもごめんなさい。今後はこのようなことがないようにするわね」
「あ、ああ」
「ほら、彩芽も謝って」
雪村さんに言われて、月影さんも素直に、「ごめんなさい」と謝ってくる。いや、素直にというか、喜んで謝って見えるのは気のせいか?
「それじゃ、席に戻るわよ、彩芽」
コクリと頷いて月影さんと雪村さんは席に戻って行った。
ドMの雌豚と、ばぶみのしょたコンの後に見る清楚担当は、やたらと可憐に感じるな、おい。バグっている二人をまとめるのが雪村さんってわけかな。
そんなことを思いながらにあいた自分の席に座ると、月影さんの尻の温もりを感じてムッツリスケベが発動したのはここだけの話。おかしいな、俺は水瀬さんにおっぱい星人に改造されたはずなのに……尻もイケる口か。二刀流だな、おい。
「た、大変だね」
前の席に座っていた色葉が後ろを向いてくる。
「どわっ!! 今のは、ちがっ!!」
変なことを考えていたから、色葉に変な言い訳をしそうになる。
「なにが?」
「あ、ああ、いや、なんでもない」
「……自由くん、月影さんに続いて、水瀬さんに弱みを握られて疲れているんだね」
今のやり取りを見ていなかった色葉は、相変わらず俺が弱みを握られている側だと思っているみたいだ。それはそれで学園の三大美女の威厳と俺のムッツリを守れるから良いんだが……。
「水瀬さんには自由くんが魔女っ子のコスプレしているのも見られているもんね」
「誰のせいだよ」
「大丈夫。次の策も考えているから、安心して」
「なにを安心すれば良いんだよ」
「色葉にお任せっ☆」
「ほんと、俺の周りにいる女子、全員話を聞かないのなんなんだよ」




