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腹を満たし、心をほどく日

翌日、俺は家を出た。


ヒバナの家で行われた作戦会議は、四時間にも及ぶ長丁場だった。

ため息が落ち、笑い声が上がり、時には口論にもなる。

それでも誰一人、途中で席を立たなかった。


一日経った今も、食料の雨は降り続いている。

昨日より混乱は落ち着いたが、それでも街には空腹を抱えた者が多い。


「よっ、エリィ。昨日は順調だったか」


合流すると、エリィはヒマワリみたいな笑顔で、右手に小さな丸を作った。


「ゲストも参加予定だよ。さ、言われた場所に行こ」


ヒバナに指定された場所へ向かい、俺は思わず声を漏らした。


「……すげえ」


街の広場は、まるで別世界だった。

等間隔に吊るされた提灯が夜を照らし、赤と白の縞模様が景色を鮮やかに彩っている。

中央には大きな舞台が組まれ、周囲には屋台がずらりと並んでいた。


肉を焼く音。

甘い匂い。

綿菓子の雲が、くるくると夜空に溶けていく。


見覚えのある顔ばかりだ。

俺たちが運んだ食料を、調理してくれていた職人たちだ。


「驚いたか」


振り向くと、ヒバナが腕を組んで立っていた。


「派手にやるって言っただろ。町中の職人に声を掛けた。一夜仕込みだ。

獣人たちも最初は警戒するだろうが、そのうち慣れるさ」


エリィの肩を軽く叩く。


「楽しんで来い」


「本当にすごい……心がピカーって明るくなる感じ!」


そう言い残して、エリィは人混みに消えていった。


「お前はこっちだ。ついて来い」


舞台裏へ向かう途中、ヒバナがぽつりと言った。


「……飢餓の始祖を倒したら、俺たちが消えるんじゃないかって思ってたんだろ」


やはり、そうか。


能力者は呪いと共に現れ、鏡に映らない異質な存在。

飢餓の始祖が消えれば、俺たちも――。


「国のためでもあるし、友を失いたくなかった」


ガハハと笑うヒバナ。

呑気な男だと思っていたが、誰よりも先を見ていた。


「結果オーライだな」

「まだだ。獣人の警戒を解く」


舞台裏には、ヒーローの八割が集まっていた。

緊張、不安、嫌悪。

それでも、もう引き返せない。


ヒバナが舞台へ出る。


「聞いてくれ!

これは祭りだ。

そして――派手な祭りという名の葬儀だ!」


空に花火が咲き誇る。


次の瞬間、俺たちは舞台に立っていた。

上半身裸、腰にタオル一枚。


「屈辱だ……」


ジータの顔は真っ赤だ。


「楽しもうぜ!」

ランはやけにノリがいい。


音楽が鳴る。

踊る。

ひたすら踊る。


盆踊りという、平和そのものの踊りを。


最初は困惑していた獣人たちが、やがて笑い出す。

一人、また一人と。


気づけば、手拍子が広場を包んでいた。


「……一体感か」


追い求めていた景色が、そこにあった。

人間も、獣人も、同じ空の下で笑っている。


三十分後、汗だくでエリィたちと合流する。


「滑稽だったぞ、ジータ」

「……っく」


皆、笑っている。


「ありがとう、ノアス。エリィ。

私たちの目指す世界を、見せてくれて」


その時、再び舞台に現れたのは――

国王と、獣人の長老だった。

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