また同じ話を
夜の空を見上げて、声に出さない約束ごとを一つずつ並べる。
あの日まで当たり前だった会話のリズムを、いま自分だけが繰り返している。
くだらない夢の話を笑い合った時間も、ふとした朝の小さな幸福も、やがては影のように薄れていく。
それでも忘れられないのは、君が笑っていた輪郭と、そこで交わした言葉の温度だ。
誰かに向けて投げた言葉は空に吸い込まれて戻ってこないと、理屈ではわかっている。
それでも空に向かって言葉を投げるたび、無意味だと知りながらも自分を納得させようとする。
君がここにいなくなってから、時間はただ均一に過ぎていくだけで、僕の中の針は止まったままだった。
変わりたいと願う瞬間が何度も訪れるけれど、体はいつのまにか同じ場所に居続ける。
もしそのまま変わらずにいられたら、いつかまた君に会えたときに昔のように笑い合えるような気もする。
しかし同じままでいることは、時に自分自身を傷つけることでもあって、僕はその矛盾に押し潰されそうになる。
君はどう思うだろう、そんな僕を見て。
「バカだな」
と笑って肩を叩くだろうか。
それとも、遠くからただ見守っていてくれるだけだろうか。
たぶん君は、こちら側に来てほしいとは望んでいない。
ただ自然な流れの中で僕と再会することを、静かに願っているのだろう。
だから僕は自分の手で終わりを選べない。
終わりを選ぶことで君に会えるのだとしたら、そんな結論に飛びつくことはできない。
会いたい。
まだ会えない。
また胸が締め付けられる。
この感情のうねりがいつか別の形に変わる日は来るのだろうか。
来ると信じたい自分と、来ないまま時間だけが過ぎるのを恐れる自分が交互に顔を出す。
それでも、君がそこにいたという事実だけは消えない。
それを抱えて生きることが、僕に残された仕事のように思える夜がある。