第33話 検知
「三雲くん」
充太が目を覚ますと、目の前には裕則が心配そうな表情を浮かべて彼の前に跪いていた。
「安食さん……」
「大丈夫かい?」
「はい……。なんか、急に意識が飛んで……」
充太は知里と翔一も倒れていることに気づき、声を失った。
「驚いたろう?」
「はい……」
ひとまず、充太にこれまであった出来事を説明した。勇に過去の翔一が、いわば生霊のような形で憑依していること。翔一が過去に今回の事件同様、クラスメイトによって彼女を殺害されていたこと。その翔一がクラスメイトを次々と殺害したこと。そして、翔一の彼女の遺体が、まだ見つかっていないこと。
「それじゃあ……」
「糸井さん……いや、福井さんの彼女の遺体を発見できれば、何らかの形で事件が大きく解決する可能性は高い」
しかし、充太も裕則もよくわかっていた。闇雲に探したところで何も見つからないことを。
「待てよ……」
充太が呟いた。
「俺たち……さっきまで、ついさっきまで次元の異なる学校にいたんです」
「次元の異なる?」
裕則が首を傾げる。
「このパソコン……」
充太はパソコンのエンターキーを叩いた。すると、とても充太には理解できなさそうな複雑な画面が出てきた。
「もしかして……魚住たちも、パソコンの中に……?」
「そんなことってあるのか?」
信じられないという様子で裕則がパソコンを覗き込む。
「もう俺は何があっても驚かないですよ、安食さん」
充太は真剣な表情でパソコンの画面を引き続き凝視する。
「何か……ヒントになるようなことがあるはず」
すると、知里が目を覚ました。
「ん……。あれ? 私……」
「おう。目ぇ、覚ましたか?」
キョトンとしている知里。
「ちょっといいか? 目ぇ覚ましていきなりで悪いけど……。お前、パソコン強かったよな?」
「まぁ、それなりに……」
「それじゃあ、このあたりでインターネット接続してるパソコンを検知したりってのは、できそうか?」
「えー? ちょっと待ってよ……? 確かこのソフトを使って……。あ、その前にこれを使わないとね」
知里は軽やかな指の動きでパソコンをカタカタと操作し始めた。その手際の良さには裕則も充太も目が点になる。
しばらくすると知里が笑顔になり、嬉しそうに声を上げた。
「あった!」
「本当か!?」
「でもこれ……は、ほとんどパソコンルームのものね」
「なぁんだ」
充太たちが脱力する。
「ん?」
しかし、裕則が妙なことに気づいた。
「ちょっと待ってくれ。ここは?」
パソコンルームからははるか離れた場所に、赤い点が表示されている。
「ここは……」
二人の顔が青くなる。
「俺たちの教室のある部屋の……真下だ」
「……。」
3人とも黙ってしまう。
「ま、まぁよく考えようよ」
知里の声が震える。
「ねぇ、充太。私たちの部屋の教室の真下は……ほら、パソコン使うような部屋じゃなかった?」
「そんなわけねぇだろ」
充太が即座に否定する。
「あの部屋の真下は……男性職員の、更衣室だ。そんなところでパソコンなんて、使うか?」
「……。」
2人は黙ってしまった。
「行こう」
充太が歩き始めた。
「行かないと、何も進まない」
「……。」
裕則が後を追う。知里も追おうとしたが、充太に止められるのではないかと思い進むことができなかった。しかし。
「お前も来いよ」
充太はハッキリとそう言った。
「え?」
「来ないと……一人じゃあ、何があるかわかったもんじゃないだろ?」
「……うん」
知里は頬を少し赤くしながら、足早に歩く充太の後を追って行った。