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名前あそび  作者: 一奏懸命
第3章 示します
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第23話 それぞれの動き


「やっぱり……名前あそびっていうタイトル自体、意味深だったわけね」

 知里は安堵のため息を漏らしながら言った。

「あぁ……。どこのどいつが考えてんのかは知らないけど、俺たちの偶然をうまく使った方法だな」

 充太も思わず安堵して、座り込んでしまった。

「知里……。1問目、どうして1,280円ってわかったんだ?」

「簡単よ。路線図見れば、一目瞭然」

「?」

 充太は路線図としばらくにらめっこをしたが、よくわからなかった。

「わかんねぇ~。なんなんだ?」

「池田駅はないけど。ほら、この辺りを見て」

 充太は指差されたJR福知山線という路線の駅を順に辿っていく。

()(たみ)、北伊丹……あっ!」

「そっ。この次の駅、川西(かわにし)(いけ)()駅っていうの。つまり、七海と利香の苗字ってことになるわよね」

「そうなると、同じ駅名扱いってことで、1,430円になるってわけか」

 充太はニヤッと笑った。

「じゃあ充太。逆に2問目と3問目はなんでわかったのか教えてよ」

「これこそ簡単だ。路線図見れば、すぐにわかる」

 まず、2問目の正解は充太本人が正解だった。

「これは簡単。吹田駅、岸辺駅、星田駅は大阪府にあるのに対し、俺の苗字でもある三雲駅は滋賀県にある。それだけの話さ」

「なんだ……。そう考えれば、簡単ね」

 知里はフゥッとため息を漏らした。

「続いても同じ要領で」

「でも、大久保駅、川西池田駅、土山駅、曽根駅は全部兵庫県にあるわよ?」

「残念。今度は県じゃない」

「えぇ~?」

 知里はジッと路線図を見つめる。

「あっ! それこそ、路線じゃないの?」

「そういうわけだ。大久保、土山、曽根は東海道・山陽本線の愛称・JR神戸線にあるけど、川西池田駅だけはJR宝塚線にあるってわけだ」

 すべての形式のクイズの解き方はおおよそ解明できてきていた。しかし、それ以外に二人はあることに気づいていた。

 利用料金である。

 この料金は、おそらく何らかの重要な何かを示していると二人は踏んでいた。そして、夏哉が命を賭してまで告白してくれた内容を考慮すると、おそらくこの『名前あそび』の原因を作っているのは、ひとつしか考えられなかった。

 充太はJRのホームページで運賃検索をしてみる。

「いくぞ」

 知里も息を飲みながら小さくうなずいた。

 充太は駅名をまず、出発駅から入力した。川西池田駅である。そして、その人物の苗字である駅名を入力した。

「えっ……?」

 しかし、出てきた料金は950円だった。

「ち、違う……? なんでだ?」

 充太の頭が真っ白になっていく。

「だって……こ、この人しか考えられないじゃないか」

 充太はオロオロして知里のほうを見た。

「あたしも、そう思うけど……実際、違うじゃない」

 知里はゴクリとつばを飲んだ。

「まさか……」

 二人は顔を見合わせた。

「誰か、別に……やってるヤツが、いるってことか?」

 シン……と静まり返る部屋。パソコンの画面、入力されている駅名は川西池田駅と三輪駅だった。

「だとしたら……誰が?」

「いま……生きてる中の、誰かってことか?」

 言葉にはしたくなかったが、既にクラスメイト9人が死亡し、1人が重傷を負っている。その中で、無事なクラスメイトの中に犯人が、今回の不可解な事件の首謀者がいると考えるのが当然の流れだった。

「待って……待ってよ。それじゃあ……もしかしたら……」

「池田が犯人っていう可能性も、あるってことだ」

「そんな……」

 充太はいま生き残っているクラスメイトの名前と顔を思い浮かべた。

 池田利香。魚住創佑。大久保健。曽根あずさ。高槻翔太。土山徹子。名塩圭一。星田龍輔。六地蔵素華。そして知里と充太。11人の中に、この事件の首謀者がいるとすれば、それは亡くなった心美とどのような関係があったのか。まず、それを知る必要があった。

「……みんなに、集まってもらおう」

 充太が呟いた。

「もう、隠し通せるような状況じゃないってのは、みんなわかってるハズだ」

「……うん」

 知里は小さくうなずいた。

「よし。まずは当たりやすい人から当たろう」

 充太は携帯電話を取り出した。そして、電話を掛け始めた。

「もしもし?」

『もしもし? ジュッタ? どした?』

 電話の相手は、圭一だった。

「大事な……話がある」

『……何?』

「できれば、翔太にも来てほしい」

『話の内容は?』

 珍しく、圭一の声が低かった。警戒しているようだ。しかし、充太は包み隠さず言った。

「三輪さんのことで、教えてほしいことがある」

『……。』

 充太は念じるように言った。

「頼む」

『……わかった』

 圭一は諦めたようにそう答えた。その答えに安堵する充太。しかし、充太も知里もまだ、大切なことが抜けていることにはまったく、気づいていないのだった。






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