エピローグ
どこまでも続く、見たこともないような花畑が広がっている。
私はひとり泣いている。なにか、大切になものを失ってしまった。悲しみに打ちひしがれていた。
暖かな日差しはそんなこともお構いなしに私を優しく照らす。風は私の頬撫でる。
しかし、私の涙はとどまることを知らず、服の袖で何度も拭う。自分でもなんで泣いているのかわからなくなるほどに、私は長い、長い間泣いていたように感じる。
すると、白い小鳥が一羽、軽やかな歌を歌いながら私のもとに近づいてくる。口にはハンカチを加えており、私はそれを受け取って涙を拭く。どこか安心する匂いが、顔を包む。ようやく落ち着いてきた。泣き止んだ私を見ると、小鳥は私の額をそっとつついて、空へ飛び立っていった。
―――
ピピピピピ、とありふれたアラームの音が私の体を叩き起こす。枕が濡れている。夢、だっただろうか。幻想的だが、どこか寂しさを抱えるその場所が、目に焼き付いていた。
鏡を見ると目が腫れていた。ちょっと学校に行く気をそがれながらも、朝支度を済ませる。
目を母親に見られ、どうしたのかと言われるがなんでもない、といい、トーストにかぶり付く。天気予報のお姉さんは、温かな春の気温をいつも通り優しい笑顔で伝える。
いってきまーす、と間延びした声を響かせながら家を出る。朝はまだ、すこし寒さが身に染みる。しかし、春は着実に近づいており、学校の花壇は綺麗な花を広げている。
眠気と倦怠感を抱えながら、とぼとぼと一人通学路を歩く。ふと空を見上げると、白い雲はゆっくりと空を泳ぎ、鳥たちの影が黒く映っている。首が痛くなってきたので、前を見る。すると突然、眼の前を白い小鳥が通り過ぎる。歌を歌いながら、空へと舞い上がっていく。思わず目を奪われていると、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと友達がいて、挨拶をし、再び通学路を歩みだす。もう一度、空を見上げたが、すでに小鳥の姿はなかった。
そうして、学校についた。私たちは一礼して、学校の門をくぐる。
今日も、長い、長い一日が始まる。
「さよならに、ありがとうを」 完
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
人生初の小説ということで、拙い文章ではありますが、少しでもなにか皆様の心に響かせることができれば幸いです。