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桜と向日葵 (上海 冒険旅)  作者: いずたく
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焼尻島

6.焼尻島


 次の日の夕方、達也はようやく目覚めた。

 達也は痛いお腹を押さえながらベットから立ち上がりヨロヨロと歩いた。

 哲夫がその様子に気が付き達也の元に近づいて行った。

 「達也、お前まだお腹が塞がっていないぞ。ベットに速く戻れよ。」と哲夫が優しい声で言った。

 「桜は?」と達也が元気の無い声で言い周りを見渡し桜を探し始めた。

 哲夫は達也の肩を叩き首を振った。

 達也は、その場で崩れ泣いた。

 そして、1週間が過ぎた。

 達也まだ抜糸は終わっていないが、傷口が塞ぎ普通の生活が出来るようになったので家に戻っていた。

 キャンピングカーの中に入って、桜との思い出を思い浮かべていた。

 その日の夕方、哲夫が心配になり達也の元にやって来た。

 「達也、居るのか。」と哲夫は心配そうに言いながらキャンピングカーの中に入って来た。

 達也は暗い部屋の中で静かにスマホの画面を見ていた。

 哲夫は心配になり達也に近づいた時、達也は急に立ち上がり叫んだ。

 「哲夫、これ見てくれ。」と達也は言い、哲夫にスマホの画面を見せた。

 「これが何。」と哲夫が答えた。

 スマホには鳥の像と羊の牧場が映っていた。

 「焼尻島だよ。」と達也は言った。

 「焼尻島、あっ。昔、羽幌からフェリーで行った島、大した島じゃあなかったよな。」と哲夫が無愛想に言った。

 「前に見たんだ。桜が持っていた写真に、この鳥の像と海と羊の牧場が写っていたんだ。桜が日本に住んでいた時の場所だよ。もしかしたら桜についての手掛かりが有るかも知れない。」と達也が興奮しながら言った。

 「分かった。分かった。行って見ようぜ。その場所に何か分かるかもしれない。」と哲夫が答えた。

 その後の二人の行動は早かった。

 次の朝、薄暗い内に達也と哲夫は焼尻島を目指して車を走らせた。

 達也はまだ、抜糸もしてない安静中の体であったが、居てもたってもいられなかった。

 車の中で、運転しながら哲夫が達也に言った。

 「達也、佐藤先輩に怒られるな。絶対安静にしていろ、と言われているのに。」と哲夫が笑いながら言った。

 「そうだな、仕方ないな。」と達也は助手席に座り笑いながら缶コーヒーを飲んで言った。

 二人は羽幌港に着き、朝一のフェリーに乗り焼尻島を目指した。

 焼尻島は小さな島であり、観光客もまばらであった。

 フェリーは穏やかでありカモメが飛んでいたが、哲夫は船酔いで船内で寝ていた。

 達也は桜との手掛かりを得たいと思い船の甲板で遠くに見える焼尻島を眺めていた。

 焼尻島にはフェリーで35分程で着いた。

 車を走らせ直ぐに写真の場所に着いた。

 島内一周12キロ程の小さい島なのですぐに写真の場所に辿り着いた。

 鳥の像もあった。

 しかし、辺りには人も居ないし手掛かりもない。

 とりあえず、人の居る場所を目指し二人は港に戻った。

 港の近くに食堂があり、二人は車を止め食堂に入った。

 名物のウニ丼を注文して、食堂のおばさんに15年以上前に中国からの家族が、この島に来ていないか訪ねた。

 今でこそ、外国人は珍しくないが、当時はまだ珍しく居れば覚えているはずである。

 「あ、そういえば居たような。確か、隣の天売島だったじゃあないかね。天売島の民宿を経営している人に、そんな中国の奥さん家族と仲が良かった人が居たような。」と、おばさんが言った。

 達也と哲夫は、その民宿の名前を聞き店を出た。

 その様子を一人の女性が見ていた。

 達也と哲夫は港に行きフェリーに乗って隣島の天売島へと向かった。

 天売島に上陸する二人を先程の女性が見ていた。

 女性はサングラスと帽子をかぶっており、二人は見られているのにまったく気がつかなかった。

 その女性は天売島には降りずフェリーに乗ったまま羽幌港に戻って行った。

 達也と哲夫は焼尻島の食堂のおばさんに教えてもらった民宿に行った。

 民宿に行き呼び鈴を鳴らすと優しそうな老夫婦が現れて、二人は15年以上前に中国人奥さんを連れた家族の事を聞いた。

 するとその老夫婦は、当時の事を思い出し、その家族とは仲が良く二人の小さな娘が居た事、昔はよく一緒に釣りをして楽しんだ事とかを話したが、今は繋がりがないと言われた。

 手詰まりであった。

 二人はトボトボと歩きフェリー乗り場に戻って羽幌港に戻った。

 二人は、どっと疲れて羽幌のホテルで一泊することを決めて、近くの居酒屋に行った。

 達也はビールを一口飲んだ。

 久しぶりのアルコールは体に染み渡りやたらと傷口に染みた。

 居酒屋の女将さんが二人に話しかけてきた。

 「お二人は、何処から来たんだべ。」

 「富良野の山の中から来たんだ。」と哲夫が笑いながら答えた。

 「羽幌には何をしに来たんだべ。」と女将さんは刺身の盛り合わせ持って来て言った。

 「こいつの中国人彼女の手がかりを探しに焼尻島、天売島に行って来たんだあ。」と元気のない達也の代わりに哲夫が答えた。

 「中国人、昔も焼尻島に中国人の家族が居たわね。」と女将さんが言った。

 二人は飲んでいたビールを拭いて立ち上がり女将さんに聞いて来た。

 「女将さん。その家族知っているの。今、どうしているの。」と達也が興奮しながら聞いて来た。

女将さんは、少し驚いたが、訳ありと思い話し始めた。

 「確か、橘さんて名前だったかね。焼尻島に行ったのは訳ありだったのかね。たまに羽幌に来て買い物して居たわね。仕事は確か小学校の教師、校長、教頭だったのかね。中国の奥さんと子供を連れて居たわ。でも、突撃、奥さんが子供を連れて中国に帰ったらしいく、それきり元気が無くなって、暫くは羽幌に居たけど、その後はどうなったか。」と女将さんが言った。

 二人が女将さんと橘さんとその娘の話をしていると一人の女性が、片言の日本語で話しかけてきた。

 「お前、橘の知り合いかい。」

 達也と哲夫は話しかけられて驚いた。

 その年配の女性はサングラスと帽子をかぶっていたが話し始めるとサングラスと帽子を取った。

 どちらかと言うと日本人と言うか中国人に近い顔立ちをしていた。

 「もしかして、桜のお母さん。」と哲夫が言った。

 「違う。私、橘の知り合いの台湾人。」とその女性は少し怒りながら言った。

 「橘さんが、何処にいるか知りたいのです。彼の娘と知り合いなんです。」と達也が言った。

 その女性は、顔を強張らせながら叫んだ。

 「橘、あいつは。中国に妻と娘がいると私から五百万円借りて何処かにいなくなったのよ。私、札幌からたまにここに来て帰ってないか見張っているのよ。」

 二人は何故か怒られ、その後その女性の愚痴を1時間以上聞かされていた。

 分かった事は、橘さんは昔、天売島の小学校の校長を務めていて今は行くえが分からない。

  達也と哲夫は富良野の山奥に帰って、佐藤獣医にも頼んで、メールやLINE、ツイッター、Facebookなどで知り合いに情報を集めてた。

 そして、昔、天売島の学校で教員をやっていた人が今、旭川の大学病院に入院しているのが分かった。

 その男の名前は橘 学。

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