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桜と向日葵 (上海 冒険旅)  作者: いずたく
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桜と達也、そして哲夫

4.桜と達也、そして哲夫


その後、二人はスマホを使って会話を楽しんだ。

そして、その会話の中で達也は彼女の事が少しずつ分かってきた。

 桜子の父親は日本人であり3歳まで日本にいた事と父親を探しに日本に来た事を教えてくれた。

 だが、追って来た男達については話してくれなかった。

 達也は桜子の事を「桜。」と呼んだ。

 桜はシャワーを浴びたいと言いキャンピングカーに備え付いているシャワー室に行った。

 達也はどうしていいか分からず戸惑いキャンピングカーの外に出て周りをウロウロと回ていた。

 桜は達也がキャンピングカーに居ないのを確認すると替えの服がないか、達也の服を勝手にあさり履けそう服を見繕っていた。

 達也は桜がシャワーを浴びている水の音が気になり誘惑く負け静かに近づき覗こうとした時、背後から声がした。

 「何やっているんだ。お前。」と哲夫が達也の背後から言った。

 達也は慌てて声を上げようとしたが、手で口を抑え哲夫の近くに行き小さな声で話し始めた。

 「いや、何。ちょっと、なんだべ。中国からの知り合いが来ているんだよ。だから今日は忙しいので帰ってくれないべか。」と達也は冷静を装って哲夫に言った。

 「中国て、お前そんな知り合い。いたっけ。」と不思議そうに哲夫が言った。

 「いや、親戚の親父が中国人と結婚してその子供なんだよ。いとこだよ。」と達也は慌てながら言った。

 「中国人て言ったら、なんか町の中に中国人がうろついていたなあ。道の駅にも居たなあ。」と哲夫が不思議そうに言った。

 その時、桜が達也の大きいシャツとブカブカの短パンを履いてキャンピングカーから出て来た。

 二人は、その姿を見て目が点になり動きが止まった。

 「ニイハオ。」と桜は笑いながら明るく言った。

 当然、哲夫は驚き達也を腕を掴み桜の見えない森の中まで強引に連れて行った。

 「お前、なんだよ、あの子は。」と、哲夫が興奮し怒りながら言った。

 達也は慌てて今日の朝の事を哲夫に正直に話した。

 「で、達也やあの子をどうするんだ。怪しい中国人が町の中嗅ぎ回っているぞ。彼女を探しているんじゃあないのか。」と哲夫が心配そうに言った。

 「哲夫、その前に、お前、姉さんが居たよな。服と下着貸してくれないか。」と達也は真剣な顔をして言った。

 哲夫は、まだ話したい事はあったが渋々自分の車に乗り家に引き換えして行った。

 数時間後、哲夫の車が戻って来た。

 哲夫は何も言わずに紙袋を達也に渡した。

 袋の中は女性物の服と下着が入っていたが、哲夫の左頬は腫れていた。

 「達也、何も聞かないでくれ。俺はしばらく家には戻れないよ。」と哲夫は疲れ切った声で言った。

 「済まん。哲夫。」と達也が哲夫の肩を叩いて申し訳なさそうに言った。

 「いいよ。それより、やっぱり、中国人の男達が町の至るところにいるな。それと、例の事故現場工事中になっていたぞ。で、彼女は。」と哲夫が辺りを見回しながら言った。

 「あっ。キャンピングカーの中で俺のスマホ使って何か調べているぞ。」と達也が言った。

 「それとジンギスカンも買って来たぞ。今日は町に下りない方が良い。で、なんだべ。彼女は何者なんだ。何故狙われているんだ。」も哲夫が不思議そうに思い言った。

 「俺も分からない。その事については聞いても何も答えないんだ。」と達也が言った。

 「でも、彼女、かわいいよな。」と哲夫は嬉しそうに言った。

 桜がキャンピングカーから出て来たので、達也は紙袋を手渡した。

 その後、達也と哲夫はジンギスカンの準備を行っていた。

 北海道ではBBQ=ジンギスカンであった。

 桜はキャンピングカーに戻り貰った服に着替えていた。

 その夜は楽しいジンギスカンとなった。

 そして、三人の奇妙な共同生活が始まった。

 桜と達也の会話は最初はスマホのアプリを返して行なっていたが、その内、桜はメキメキと日本語が上達して行った。

 達也が仕事の時、桜はキャンピングカーで日本語の勉強をしていた。

 彼女は中国の内モンゴル出身である。

 モンゴル人横綱の朝青龍や白鵬などはモンゴル国であり、一方の桜はモンゴル自治区、中華人民共和国の一部の国の出身である。

 ウルグアイ自治区ほどではないが、中国と小競り合いは多少あるらしい。

 桜はモンゴル人であり、野ウサギを仕留めて持って来た時は、さすがに達也も驚いた。

 活発な女性であるが性格は純粋で優しい。

 しかし、時々、無警戒で達也の周りを下着で歩く時がある。

 三人は日曜日には北海道第二の都市、旭川に遊びに行きショッピングや食事などを楽しんだ。

 行き、帰り道は、地元の人も知らない舗装されていない裏道を四駆で走らせていた。

 その日の夜、桜は達也に昔日本にいた時の写真を見せてくれた。

 写真は少し色あせたいたが、長閑な風景で羊の群れが見える牧場で後ろには海が見え遠くの方には鳥の像が見えた。

 達也は昔何処で見た事のある風景だと思ったが、その場所が思い出せなかった。

 哲夫は毎日,町の周りを車で回り中国人が居ないか見て回った。

 中国人は多少、少なくなったが、まだ依然と町の周りをうろついていた。

 こんな田舎町にも時折、中国人観光客が訪れるが今町に居るのはどう見ても観光客ではなく、少しガラの悪男達であった。

 しかし、達也達は少し気が緩んで来ており時折、桜と一緒に町に降りる事があった。

 町の人たちに桜と一緒に居る所を見られて少しずつ噂が広がっていってしまった。

 哲夫は知り合いの人からエゾシカ肉を手に入れたので達也の所まで車を走らせたが、途中の草むらの影から人の姿が見えた。

 「不味い、見つかったか。」と哲夫は思い、車に備え付けているスマホからワイヤレス通話で車を運転しながら達也に電話した。

 その頃、達也は桜と一緒に居て中国語と日本語で話しをしていた。

 二人はキャンピングカーの中で苦楽を共にしたが、奥手の達也は桜に対し何もしなく紳士的に対応していた。

 桜は、そんな達也に好意を抱くようになって来ていた。

 達也はいつもように桜に優しく話しかけてきた時、桜は達也の隣に座って肩に寄り掛かって達也のスマホを覗き込んだ。

 二人は見詰め合い顔を近づいて来た時、タイミング悪く哲夫からの発信によりスマホの電話が鳴った。

 達也は慌ててスマホの電話に出た。

 「達也、やばい。桜が居る事バレているぞ。人影が山道を登って行くのが見えた。早くそこから逃げろ。」と哲夫が怒鳴った。


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