中国 9日目 内モンゴル
25.中国 9日目 内モンゴル
翌日、三人は上海からに内モンゴルに移動した。
向日葵は日本人パスポートで無事に飛行機に乗れた。
向日葵は何度か内モンゴルに行ったことがあるので土地感があり、言葉も通じた。
三人はモンゴル伝統の大きなテントに一泊した。
夜空は綺麗で星は手に取るように近く三人は手を伸ばした。
「北海道の夜の空も同じくらい星が手に取れるように近く感じるほど綺麗だなぁ。」と哲夫が言った。
「そうだな、中国は大気が悪く星なんか見えなかったものな。」と達也が言った。
「で、俺たちこれからどうするんだ。」と哲夫が言い向日葵の方を見たが、向日葵は旅の疲れかれか直ぐに眠りについていた。
達也だけは、これから起きる事を思い出すと寝てられなかった。
達也は外に出て流れ星を見て、北海道の地元を思い出していた。
まだ、一週間しか経っていないのに、物凄い長い旅をしているようであった。
その時、哲夫が達也の横に座った。
「達也、寝れないのか。」と哲夫は優しい口調で言った。
「なんか、色々あって疲れているのだけど、寝れない。」と達也が空を眺めながら言った。
「向日葵が一番、度胸が座っているな。明日、どうなるかわからないけど、俺達また皆んなで北海道に帰りたいな。」と哲夫が言い、達也のを軽く叩いた。
「その時は、桜と向日葵を含めた四人でなあ。」と達也が言った。
向日葵は寝たふりをしながら二人の様子見ていた。
「伝説は本当かな、異国の地より青きオオカミを連れた勇者が現れる。か。」と向日葵が呟いた。
心地よい風が吹く、夜のモンゴルは二人だけの時間が静かに過ぎた。
朝方また夜明け前、辺りには紫色の霧が発生していた。
その時、後ろから達也と哲夫はいきなり殴られ痛さで埋まった時、テントから向日葵が飛び出して来た。
「二人共伏せて。」と向日葵は言い拳銃を取り出した。
黒い鳥が二人の上空にいた。
その黒い鳥が二人の背後から攻撃したものであった。
「なんだあの鳥は鷹か。」と哲夫は頭を押さえながら言った。
「鳥は鳥目だぞ。夜見えるものか。」と達也も頭を抱えながら言った。
「で、向日葵はなんで銃なんか持っているんだ。」と哲夫が言った。
黒い鳥が上空から勢いよく急降下して来た。
二人はその場から慌てて逃げた。
達也はある事に気づいて哲夫に言った。
「哲夫、月が紫色の霧で覆われる。」
「また、紫の霧かよ。」と哲夫が言った。
「早く、こちらに来て。」と向日葵が二人に合図をした。
二人は言われるままに向日葵の方に走って行った。
黒い鳥は二人を追いかけて来た。
そして二人に襲いかかった。
その時、風が吹いた。
紫色の霧が晴れて月の明かりが黒い鳥を照らした事により、黒い鳥は霧のように弾けて居なくなった。
向日葵が、遠くを指差した。
林の中に数名の男達の姿が見えたが暗闇に居なくなった。
「アイツらは何者なんだ。」と哲夫が言った。
「奴は王の墓を守る者よ。そして、その場所は、ここから近いわ。ここからは競争ね。奴らよりも早くその場所に行くわよ。」と向日葵は言いながら馬を携えて来た。
「桜は、アイツらと一緒なのかよ。」と達也は言いながら馬に乗った。
「違うわよ。桜は王家の者に連れ行かれたわ。」と向日葵が言った。
「意味が分からない。」と哲夫が馬に跨って言った。
「その場所に行く間に全てを話すわ。」と向日葵が言った。
「桜が居る場所は分かっているの。」と達也が言った。
「大丈夫よ。もう、行き場所は分かっているわ。私達が生まれ育った場所だもの。もうここまで来れば目を閉じてたって行けるわ。」と向日葵が言った。
「行こ、その場所に。」と達也が言った。
「もう引き戻せないわよ。それでも行く。」と向日葵が言った。
「行くさ、ここまで来たら、桜を取り戻す。俺達仲間じゃあないか。」と哲夫が言った。
「分かった。明るくなる前に今すぐ行きましょう。」と向日葵が言った。
月と星の明かりを頼りに山の奥へと進んで行った。
朝方、霧が濃くなり辺りが見えなくなっても向日葵は馬を走らせて行き、達也と哲夫は後をおった。
霧が晴れて来ると山と林の中に小さな丘が見えた。
「ここからは、ゆっくりと音を立てずに行きましょう。」と向日葵が言った。
三人はゆっくりと音を立てずに奥へと進んで行った。
「本当にここに桜はいるの。」と達也が聞いてきた。
「ここは庭見たい物よ。私達が育った村はここに会ったのよ。」と向日葵が言った。
草だらけで古びた民家があったが、今は人が住めるような状態ではなかった。
人影もなかった。
「昔、小さい頃、私達はここに住んでいた。アイツらさえ来なければ。」と向日葵が悲しそうに言った。
「元気だしなよ。」と哲夫が言った。
「桜の事を話すわ。」と向日葵が言った。
「もう何がなんだか。分からない。」と哲夫が言った。
三人は馬に乗り山の中を目指していた。
車ではいけない細く道の悪い道を進みながら向日葵は話し始めた。
「まず、中国では色んな部族が桜を狙って居たわ。中国政府は極秘で桜を守っていた。それは桜にとっては監禁に近かった。で、彼女は父親に会いに日本に逃げたのよ。そして、あなた達に会ったわ。しかし、王の墓を守る者に見つかり捕まったわ。」
「あの時は大変だった。達也が銃で撃たれ死んでしまうかと思った。」と哲夫が言った。
「あの時はやばかった。」と達也は思い出しながら言った。
「奴らは元々は私たちと同じ部族だったんだけど、洞窟の中にいる死者に操れる様になった人達よ。」と向日葵が苦しそうに言った。
「えっ。死者。」と哲夫は驚きながら言った。
「そう。洞窟の中には沢山の死者が寝ているは。そいつらから別の組織が桜を助け出した。そして、その後、達也と哲夫は中国に来た。その時、桜は香港からマカオに移動した。何故、香港からマカオに移動したか分かる。」と向日葵が言った。
二人は分からない、と言う顔をした。
「そうよね。分からないわよね。まず、中国政府から離れたかった。それと桜を狙っている者達がここ内モンゴルにいたから。」と向日葵は言った。
「紫色の霧の奴らか。奴らは何者なんだ、人間なのかよ。」と哲夫が言った。
「まだ人間よ。奴は王家の墓を守る者、その昔、フビライハンの侵略から守る為に自らの手で魔王となり守った。しかし、フビライハンにより地中深く洞窟に閉じた。そして、その洞窟を守る者達よ。マカオに現れたのも彼らよ。」と向日葵が言った。
「じゃあ。桜をマカオに連れて行ったのは誰なんだ。」と達也が言った。
「香港を拠点とする別の組織、彼らは、この紫色の霧を利用し一発当てようとしている人達。」と向日葵が言った。
三人の乗った馬は山の奥まで来て、向日葵は止まり馬から降りた。
古びた廃墟の村があった。
向日葵は、一軒の古びた家の中に入って行った。
「ここから、あの場所に行ける近道があるわ。行きましょう。」と向日葵は言い、古びた家の床にある隠し扉を開け達也と哲夫を呼んだ。
三人は隠し扉の奥へと進んでいった。
そして、暗い洞窟の中を二時間近く歩いて行くと明るい出口が見えて来た。
向日葵は二人に止まるように命じた。
三人は動くのをやめ静かに辺りを見回して聞き耳を立てたが、人の声も人の気配すら感じなかったので三人は、ゆっくりと出口の方に近づいて行った。
そして出口に出ると辺りは静まり返っていて遠くから鳥の鳴き声や動物の鳴き声が聞こえて来た。
太陽が昇り日が差してきた。
周りには人が歩いて形跡はあったが人影がなかった。
向日葵を先頭に三人は森の奥へと入って行った。
すると、小さな丘の下にある人一人入れる洞穴が見えて来た。
中から人が一人慌てて出てきた。
三人は身を隠して洞窟から出て来た男の様子を見ていた。
その男は顔色が悪くフラフラしており、何歩か歩くと倒れた。
顔はどんどんと紫色になり体全体が紫色になってしまった。
「あれは、何。」と哲夫がむせながら言った。
「これが、あの中に潜んでいるウィルスよ。」と向日葵もむせながら言った。
「大丈夫か二人共。」と達也が言った。
「大丈夫よ。このウィルスは太陽の光に弱く外なら害はないわ。」と向日葵が言った。
「あの中には入れないな。」と哲夫が言った。
「あの洞窟の中に入れるのはウィルスの免疫力があるのは巫女の血を引く桜だけよ。」と向日葵が言った。
「なぜ、彼は免疫力がないのに中に入ったんだ。」と達也が言った。
達也は入口に近づいて行った。
中に人が倒れているように見えた。
達也は周りを見てガスマスクがあるのに気がつき、それを付けて中に入って行った。
「何故達也は洞窟に近づいて行けるの、私達は息苦しくてとても近づいて行けないのに、達也にも免疫があるの。」と向日葵が不思議そうに言った。
「あ。」と哲夫が思い出したよう言った。
「達也、銃で撃たれた時、桜から血を貰っている。だから、免疫力がついたのではないか。」と哲夫が言った。
「達也、頑張れ。加油。」と向日葵が遠くから応援した。
達也は恐れ無く洞窟の中に入って行った。
洞窟の中は暗くて最初は周りが見えなかったが、だんだんと目が慣れ来て辺りが見えてくると数名の男達が倒れていた。
彼は先程の男と一緒で顔色が紫色になっていた。
皆んなガスマスクをしていなく、誰かに外されたようにガスマスクが辺りに散乱していた。
達也は桜を探しながら奥に進んで行った。
達也は気がついていなかったが、倒れた男達の指が少しずつ動いていた事を。
一方、哲夫と向日葵は遠くで洞窟の様子を見ていた。
「向日葵、あの中に何があるのかな、皆んな何を探しいるんだ。そんなに大変な物が、こんな毒の蔓延している洞窟に存在しているのかね。」と哲夫は不思議そうに言った。
「分からないわ。初めは中のウィルスを狙っており、桜の免疫が必要だと思っていたんだけど、何か変んな感じ、この中に何か恐ろし者たちがいるような気がする。」と向日葵が怯えながら言った。
「俺も何か恐ろしさを感じる。」と哲夫も言った。




